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もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らが、日本食スコアと認知症、腸内細菌との関連を見出しました

2021年11月4日

国⽴研究開発法⼈国⽴⻑寿医療研究センター
国⽴⼤学法⼈東北⼤学
学校法⼈久留⽶⼤学
株式会社テクノスルガ・ラボ

 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典)で研究を進めてきた佐治直樹もの忘れセンター副センター長が、東北大学、久留米大学、株式会社テクノスルガ・ラボと協力して、日本食の食事パターンと腸内細菌・認知症との関連を発見しました。認知症のない人は認知症の人より日本食スコアが高く、魚介類・きのこ・大豆・コーヒーを多く摂取していました。また、これらの食品摂取が多いと腸内細菌の代謝産物濃度が低い傾向でした。

ポイント

 本研究は、国立長寿医療研究センター長寿医療研究開発費、日本学術振興会の科学研究費助成事業(科研費:課題番号20K07861)、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センターの「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業(異分野融合発展研究)、公益財団法人ダノン健康栄養財団、公益財団法人本庄国際奨学財団の支援のもと実施され、その研究成果は科学雑誌Nutritionに2021年10月29日にオンライン版で公開されました。

研究の概要

 研究チームは、国立長寿医療研究センター(以下、当センター)もの忘れ外来を受診した方を対象に認知機能検査や食品摂取アンケートなどを実施し、得られた臨床情報と検便サンプルをバイオバンクに収集しました(図1)。食品摂取アンケートから日本食スコア(Japanese diet index: JDI)を算出しました(JDI9:9品目の摂取状況[米、味噌、魚介類、緑黄色野菜、海藻類、漬物、緑茶、牛肉・豚肉、コーヒー]により算出した伝統的日本食スコア、JDI12:JDI9に3品目 [大豆・大豆製品、果物、きのこ]を追加した修正スコア等, 図2)。検便サンプルの解析では、T-RFLP法で腸内細菌叢のプロファイルを解析し、液体クロマトグラフィーなどで代謝産物の濃度を測定しました(株式会社テクノスルガ・ラボ)。代謝産物と認知機能、日本食スコアとの関連を統計学的に分析しました(久留米大学室谷健太教授、東北大学都築毅准教授)。

 結果、認知症でない人では、認知症の人より日本食スコアが高値でした(認知症あり vs. 認知症なし、JDI9: 5 vs. 7, P = 0.049; JDI12: 7 vs. 8, P = 0.017, 図3)。また、認知症の人と比較して、認知症のない人では、魚介類(65% vs. 39%, P = 0.048)、きのこ(61% vs. 30%, P = 0.015)、大豆・大豆製品(63% vs. 30%, P = 0.013)、コーヒー(71% vs.44%, P = 0.024)を多く摂取していました(図4)。また、これらの食品を多く摂取していると腸内細菌の代謝産物の濃度が低い傾向でした(表1)。多変量解析では、日本食スコア高値は認知症がないことと強く関連していました(高値群 vs. 低値群:認知症ありのオッズ比 0.10, 95%信頼区間 0.01-0.45, P = 0.002)(図5)。

研究の意義

 日本食が健康によいというデータはすでに報告されていますが、腸内細菌や認知症との関連を示したデータはありませんでした。日本食と腸内細菌・認知機能が関連する機序の解明は、認知症の新規予防法の糸口になるかもしれません。

今回の論文情報(10月29日公開)

図表

図1:腸内細菌研究の流れ

図2:日本食スコアの3区分

図3:日本食スコアの3区分と認知症の有病率比較

キノコ摂取 多い人(45人) 少ない人(40人) P
P-クレゾール中央値, μg/g 0.21 3.10 0.492
インドール中央値, μg/g 0.37 4.51 0.729
コーヒー摂取 多い人(60人) 少ない人(25人) P
P-クレゾール中央値, μg/g 0.23 5.28 0.292
インドール中央値, μg/g 0.52 7.34 0.321

表1:食品と腸内細菌の代謝産物濃度

P-クレゾール・インドール:腸内有害菌が作る発癌促進物質。腸内腐敗発酵産物の指標。
解析人数が多くなかったため統計学的な有意差がなかった可能性はあるが、上記品目を多く摂取している人は、代謝産物濃度が低い傾向であった(結果の一部を例示)。

図4:食品摂取と認知症の比較

図5:まとめと関連図

 

腸内細菌の研究に関する私達のこれまでの研究情報

国立長寿医療研究センターもの忘れセンターの研究紹介ページを参照ください。

URL:https://www.ncgg.go.jp/hospital/monowasure/research/このリンクは別ウィンドウで開きます

 

腸内フローラ研究の流れについてのイラスト引用

『医療と健康イラストカットCD-ROM』(マール社)媒体への掲載を許諾済み。

 

 

問い合わせ先

この研究に関すること

〒474-8511 愛知県大府市森岡町7丁目430番地

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 副センター長  佐治直樹

Tel: 0562-46-2311(内線7940) Fax: 0562-46-8394  Email: sajink@ncgg.go.jp

 

報道に関すること

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 総務係長 里村亮

Tel: 0562-46-2311(内線4623) Fax:  0562-48-2373  Email: r-satomura@ncgg.go.jp

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