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老年医学と認知症

病院レター第39号 2012年7月25日

内科総合診療部 部長
遠藤英俊

1.老年総合科とはどのような科か?

 国立長寿医療研究センター老年科は前身の国立療養所中部病院時の平成5年7月に内科のもとに開設されました。高齢患者を専門に総合的に診る科として、発展してきました。
 平成16年3月のナショナルセンター化に伴い、高齢総合科と標榜しましたが、基本は老年医学を実践しています。現在は7名がチームで外来と病棟の診療にあたっています。外来も初診、再診、物忘れ外来と多様化しています。主な疾患としては肺炎、心不全などの内科疾患の他、認知症診療や在宅医療の支援、高齢者の救急にも幅広く対応しています。超高齢社会の医療ニーズは高齢者医療とその救急にあり、その期待に当センターが応えていきたいと思います。

2.高齢者医療における車の両輪(総合評価とチーム医療)

 高齢者医療の特徴はCGAとチーム医療です(図1)。物忘れ外来ではほぼ全例がフルの高齢者総合評価を行っている他、病棟では入院時に総合評価を行い、高齢患者の課題の抽出を行っています。その結果をもとに治療計画を立案し、退院支援を行っています。また日々のナースとのカンファレンスの他、退院カンファレンスも積極的に行っています。高齢者医療はナースやリハビリスタッフ、栄養チームとの連携がなければ成立しません。また全国的には日本老年医学会が高齢者医療研修をたちあげたところ、この研修の終了が総合病院の総合評価加算取得の要件になっています。

図1.高齢者医療の柱

3.認知症医療

 老年医学と認知症の関係は切っても切れません。我々老年科医も日本認知症学会や老年精神医学会、日本認知症ケア学会にも参加しています。さらに我々は認知症サポート医研修の構築を行いました。そのサポート医もすでに2,000人を越えています。さらに認知症対応力向上研修を終了されたプライマリ医師は30,000人を越えています。
 高齢総合科でも物忘れ外来でも予約制で診療を行っています。現在では約2~3か月の待ちで診療をさせていただいています。認知症診療ではCTMRIなどの形態画像の他、脳SPECTPETなどの機能画像をふまえて認知症の診断をチームで行っています。物忘れカンファレンスは毎週水曜の午後5時半から行っています。これからも是非連携室へ予約をお願いします。毎日誰かが認知症を診る外来をしております。
 2011年にはアルツハイマーの治療薬が3種類認可され、計4種類の薬剤が利用できます。その選択アルゴリズムを(図2)に示します。当院は認知症疾患医療センターでもあり、認知症ご紹介をいただいた場合に認知症療養計画書を返信するようにしております。そうするとご紹介いただいた医療機関では認知症療養指導料の取得が可能となっています。

図2.病気別のアルツハイマー型認知症治療薬剤の選択アルゴリズム

4.在宅医療

 我々は、直接在宅医療は行っていませんが、在宅医療の支援を行っています。理念に賛同をいただいた先生と契約により、在宅患者がいつでも入院ができるシステムができています。現在では大府市・東浦町を中心に約100人の先生に参加をいただいています(図3)。これからも自宅で安心して看取りができる体制の構築が必要です。すなわち2012年は在宅医療元年ともいわれていますが、在宅医療支援拠点も構築され、全国的な研修が開始されます。当センターが果たす役割は大きいと思います。今後も地域の先生方と在宅医療の推進に努力したいと思います。

図3.在宅医療支援病棟入院状況

5.終末期医療

 高齢者を全人的に、シームレスに診るためには終末期医療を疎かにはできません。本人、家族と医療チームが十分に議論し、重要な判断を導き出すプロセスが重要です。最終的には本人の意思に基づく自然な看取りをめざしています。そのためには事前指定書の徹底と緩和ケアチーム(アドバンスケアプランニング)の支援が欠かせません。日本老年医学会では人工栄養のガイドラインを作成しました。胃ろうなどの経管栄養について、本人の意思を可能な限り確認し、造設は慎重に判断して、チームで十分に議論して造設するように勧めています。また造設した後に議論して栄養の中止もありうるという内容になっています。

図4.地域包括ケアシステムについて

6.終わりに

 我々のセンターでは日本一の老年医学の実践をめざしています。認知症の人であろうと、終末期であろうと、心の通った最善の医療をめざしていきたいと思います。終わりに今後の高齢者の増加に伴い、独居高齢者の増加、老老介護、認認介護、高齢者虐待等の課題が山積しています。これらに対して国は2025年までに地域包括ケアシステムの構築を目標にしています(図4)。
 これは医療と介護の連携がなければ成立しません。是非地域住民をはじめ、先生方の協力のもとに、この地域での進展を図りたいと思います。

参考文献

  1. 遠藤英俊著、高齢者総合診療ガイド、担当医必携Q&A,じほう,2008
  2. 遠藤英俊著、かかりつけ医のための 認知症診療ガイド, 医薬ジャーナル社,2011.8
  3. 遠藤英俊著、やさしい 患者と家族のための 認知症の生活ガイド,医薬ジャーナル,2012.5
  4. 遠藤英俊監修、地域回想法ハンドブック 河出書房新社,2007.1 など多数。

長寿医療研究センター病院レター第39号をお届けいたします。

長寿医療研究センター病院で「高齢総合科」は、一度かかった人は好評であるがどんな病気を診てくれるのか、どんな症状を診てくれるのかどんな特徴があって、他の科にかかるより良い点はなにかなど、外部からはわかりにくいといわれています。
今回のレターで、その疑問の一部が解ければ幸いです。

院長 鳥羽研二