
認知症の初期にうつ症状がみられることはあります。特にレビー小体型認知症の初期にうつ症状が目立つ場合や、血管性認知症の意欲低下がうつと見分けがつきにくいといった場合があります。また、認知症は加齢とともに非常に頻度が増えていくため、元来うつ病であった方が、高齢となり認知症を合併することもあります。
パーキンソン病の患者さんの一部は、ごく軽微なものを含め何らかの認知機能の低下をもっているといわれますが、特に長期経過された高齢の患者さんでは、意欲の低下や、物事の判断に時間がかかる、幻視等の精神症状などが出現することがあります。パーキンソン病そのものによる認知機能の低下が起こっている場合もありますし、加齢とともに頻度が増えるアルツハイマー型認知症の合併と考えられるケースもあります。
認知症に関する一般の方向けの書籍は多数販売されており、参考とされるのもよいと思われますが、中には、専門家でも診断名をはっきりさせることが難しいこともあります。特に症状が軽い段階では診断が難しい場合もありますが、複数の病気が重なっていたり、病像が十分わかっておらず臨床診断が難しい病気もあるからです。
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症といった認知症を来す疾患であっても軽度の段階では頭部MRIで正常または年齢相応の萎縮しかみられないことが珍しくありません。
認知症を疑った場合はもの忘れ外来などを行っている認知症の専門医療機関に相談することをお勧めします。
レビー小体型認知症に特別な検査は少なく、基本的にはアルツハイマー型認知症の 検査と同様の検査を行います。
唯一特別な検査としては123I-MIBG心筋シンチグラフィー という検査があります。心臓を自動的に動かしている自律神経の機能をみる検査で心臓の自律神経(交感神経)に一定時間集積する薬品(MIBG)を少量注射し、どのくらい心臓に集まるかをみます。
レビー小体型認知症では潜在的に自律神経障害があるため、しばしば心筋が映ってきません。 現在その有効性が全国的に検討されていますが、これまでの報告ではレビー小体型 認知症の90%以上に集積低下がみられると報告されています。

国立長寿医療研究センターの、もの忘れセンター外来では図に示したような流れで診断を行います。赤字で示した検査は特に認知症外来に特徴的な個所です。基本的に怖い検査、危険な検査はありません。 MRIでは閉鎖空間に閉じ込められように錯覚して、恐怖を感じることがありますがこれは認知症の人に特有というわけではなく、一般の人にも見られる現象です。脳血流検査ではIMPという薬物を使用しますが、ヨードアレルギーの方は避けたほうがよく、その場合はECDという薬剤を使用します。また狭い検査台上で約1時間安静臥床するため腰痛を生じることがあります。対策のためクッションやタオルを用意します。
また神経心理検査は、苦手になっている機能について、詳しく質問されるため、強いストレスを感じることがあります。専門の心理士さんは様子をみながら無理をせず、必要なら中断したり、別の機会に変更したりすることで対応してくれます。
全般に認知症の人は新しいことを受け入れることが苦手になっていますので、危険な検査でないことをよく話して安心していただくことが重要です。また検査を受ける際には、できるだけご家族に同伴していただくほうがよいと思います。

これは頭部のCTスキャンが最も優れた選択です。できれば脳神経外科医のいる施設で受ければすぐに処置も可能ですのでなおよいと思います。
MRIでは血腫の性状がさらに詳細にわかりますが、まずは血腫があるかどうかを確認することが重要です。
アルツハイマー病では脳内にアミロイドという異常なタンパクが蓄積することが知られています。このアミロイドに一時的に結合し、一定時間たつと体外にでていく性質をもった薬剤が開発されました。それによってアミロイドを画像としてみることができるようになりました。これがアミロイドイメージングです。アルツハイマー病の症状がでる前から診断ができる可能性があり注目されています。
アルツハイマー病による軽度認知障害または軽度の認知症の人にレカネマブが使用できるようになったことに伴い、レカネマブ投与の要否を判断する目的に限って、アミロイドイメージングが一般診療で受けられることになりました。
前頭側頭型認知症は現在のところ有効な治療法がありません。しかし、認知症の人や家族への支援は薬剤治療が全てではありませんので、医療機関には通院を続け、生活上の注意や介護保険サービス利用により、これまでの生活を少しでも長く続けられるようにすることができます。
レビー小体型認知症では認知症の症状に加えてパーキンソン病の症状がみられることがあります。認知症の症状から始まりパーキンソン病の症状が加わることも、逆にパーキンソン病の症状から始まることもあります。
パーキンソン病の症状としては安静時の震え(物をもったり字を書いたりする時ではなく手を自由にして力を加えていない時に震えるのが特徴です)、動きが遅くなる、筋肉を動かすときに抵抗がでる(これは自覚しにくい)、体が傾く、転びやすい、足がすくみ小刻みな歩きかたになる、立ちくらみがおきる、便秘がひどい、暑さ寒さに弱い、寝ていて大声をだしたり、 手を動かしたり起き上がったりするなどです。
これらの症状に対しては通常のパーキンソン病の治療を行いますが、レビー小体型認知症の場合はいくつかの注意点があります。
パーキンソン病の治療薬はたくさんの種類がありますが、最も基本的な薬剤であるレボドパという薬を主として使います。抗コリン薬といって使ってはいけない種類もあります。
少量から使い、最少量にとどめる。
抗パーキンソン病薬は運動症状は改善しますが、レビー小体型認知症の行動心理症状を悪化させる薬剤が多いためです。
動けるようにはなったが幻視が増えたり、興奮が強まることがあります。 立ちくらみやすくみ足にはドロキシドパが有効なことがあり、夜間の大声にはクロナゼパムが有効なことがあります。
以下のコラム(健康長寿ラボ)をご覧ください。
回想法はもともと高齢者への心理療法の一つとして始まりましたが、現在では認知症の非薬物療法として位置づけられております。
科学的根拠はエビデンスレベルCとそれほど高くはありません。しかし回想法は過去の残存している記憶を利用して、行うものなので、記憶や知的活動につなげるという点では有用です。また回想法は認知機能への直接的な効果より、気分、意欲の改善などにおいて有効性が示されています。回想法は個人回想法と集団回想法があり、特に後者は現状では介護施設などでよく行われています。
また最近では介護予防として、博物館を利用した地域での回想法も行われています。総括すると回想法は認知症に一定の有効性はあります。
音楽療法も認知症の非薬物療法の一つと考えられており、科学的根拠はエビデンスレベルCと低いのですが、認知症の人の気分や意欲に効果があり、高齢者への癒しなどにおいて有効性が示されています。歌うときに脳血流が増加するという報告もあります。
音楽療法には参加型の能動的音楽療法と受動的音楽療法があり、日本音楽療法学会もできており、音楽療法士という資格もあり、多くの介護施設や病院でも取り組まれています。
進行した認知症の人にも治療法はあります。進行の程度が中等度までであれば、初期の方と同様の治療薬が使用可能です。さらに進行した重度の方に対しては、塩酸ドネペジルとメマンチンが使用可能です。意欲が低下して不活発になっている方には塩酸ドネペジルの10mgが、過活動で興奮や多動がみられる場合にはメマンチンがよいようですが、いずれも効果がなかったり、かえって症状を悪化させる場合もありますのでよく経過をみることが重要です。また行動心理症状がめだつ場合にはそれに対しての治療法があります。重度の方では様々な身体上の障害を起こしてくることがあり(図)こちらの管理がむしろ重要です。

嚥下障害に対しては、食形態の工夫や食事時間の工夫が必要ですし、誤嚥性肺炎の予防には口腔ケアが必須です。
脳梗塞によっておこる認知症の症状を進めないためには、脳梗塞の再発を防ぐことが最重要対策となります。根本的な再発防止薬は脳梗塞のタイプによって異なりますが、脳塞栓症ではワーファリン、タビガトラン、といった抗凝固薬が、脳血栓症ではアスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールといった抗血小板薬が用いられます。また同時に危険因子の除去が重要で高血圧には認知症に対して試験されたことがある、カルシウム拮抗薬(バイロテンシン)アンギオテンシン変換酵素阻害薬(コバシル)、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ブロプレス、ディオバン)による血圧管理を行います。
糖尿病のコントロール、禁煙も重要です。アルツハイマー型認知症の治療薬が有効かどうかに関しては、Kabirajanらの報告があります。現在の4つの治療薬は軽度から中等度の血管性認知症の認知機能に有効ですが、改善幅やデータの大きさが不十分なため使用を支持するまでにはいたらないと結論しています。
TV番組で取り上げられたことがあったのは、特発性正常圧水頭症(iNPH)という病気です。
私たちの頭の中には脳脊髄液という液体があり、脳の表面や溝の中などを潤しています。この液体は絶えず新しく作られては古くなったものが吸収除外されているのですが(健康成人では、1日に3回ほど新しく入れ替わっています)、加齢や動脈硬化など様々な原因によって、この入れ替わりが滞ると、脳脊髄液が頭蓋内に過剰に溜まり、脳を圧迫して機能低下を起こしたり、脳そのものにも何らかの影響(まだよく分かっていませんが)を与えることによって、認知機能、歩行機能、排尿機能の障害を引き起こします。
正常圧水頭症はTVなどでは「治る認知症」という紹介をよくされますが、認知障害よりもむしろ歩行障害が主症状という患者さんがおられます。最近歩くのが遅くなった、階段が上れなくなった、すこし蟹股になった、つまづきやすくなったなどという症状もこの病気の可能性があります。ただし、腰や膝が悪くてこのような症状が起こることも多いので見極めが大切です。
排尿障害も主症状の一つで、頻尿や尿失禁がその特徴です。排尿障害も前立腺肥大症など他の疾患との見分けが必要になります。この病気は放置していると少しずつ進行していきます。したがって、早めの診断・治療が望まれます。脳脊髄液シャントという手術で溜まった脳脊髄液を抜くことによって、今ある歩行障害や認知障害を軽くしたり、その後の症状進行を予防することが期待できます。
前頭側頭型認知症ではアセチルコリン系が保たれているため、ドネペジルのようなアセチルコリン系を高める薬剤は効きにくく、時には行動心理症状の悪化を誘発するといわれています。
したがって第一候補薬としては使いにくいのですが、個々の例では気分や異常行動を改善したという報告もあり、他の薬剤を使ったうえで試してみることはあり得ると思われます。(ただし保険適応外)
また認知機能を改善する薬剤はないのですが、脱抑制的行動や不適切な性的行動、過食には選択的セロトニン再取り込み阻害薬という抗うつ剤の一種が有効なことがあり、メマンチンも行動異常を抑えることがあります。
食事は人間の健康を維持するためには重要な因子で、認知症に関しても様々な観察研究がなされてきました。しかし現時点では、特定の栄養素や、食品、あるいは食事習慣で認知症の 発症を予防したり、進行をおさえるといった点で、これはよいというものは見つかっていません。
その中では地中海食(魚、野菜、果物、穀類、繊維製品、ワインを中心とした 少量多種類の食生活)は予防効果があるという報告が多いようです。 サプリメントも多くの検討がなされましたが、有効なものはありませんでした。
逆にサプリメントの中には多量に継続的に投与すると危険なもの(脂溶性ビタミン) もあり注意が必要です。
認知症の症状とパーキンソン病の症状のどちらがご本人さまの生活の質を落としているかを考えて決めましょう。
詳解
レビー小体型認知症は、認知機能障害と幻視・パーキンソン症状を特徴とする認知症です。一方のドネペジルはアルツハイマー型認知症の認知機能低下を遅らせるためのお薬です。先ずアルツハイマー型認知症用のお薬をレビー小体型認知症の方が服用して効果があるか否かという問題があります。これにつきましては、まだ医学根拠が不十分な点もありますが最近の研究結果では効果があるとする報告が多いようです。
次にドネペジルを服用するとパーキンソン症状が悪化するか否かについてですが、お薬の持つ作用から考えると確かに悪化させる可能性があります。ドネペジルの添付文書には、0.1から1%未満の頻度で出現する副作用として記載されています。
しかしながら臨床的には悪化は軽微なことが多くよほど重度のパーキンソン症状を伴わない限り、過度に気にする必要はないと考えます。
以上を踏まえますと、患者さまの生活の質を落としているのは、主に認知機能低下なのか、それともパーキンソン症状なのかをよく見極め、お薬を飲むかどうかを決めるのが良いかと考えます。
効果があるようでしたら、期限を決めずに服用を続けて下さい。
詳解
ドネペジルは発売当初、「服用開始してから半年間、認知機能低下を遅らせる」と言われていました。これはドネペジルの効果を検証した臨床試験(新薬承認のための治験)での調査期間が6ヶ月だったことに由来します。その後、世界中でさまざまな臨床研究がなされ、長期投与に関するデータも集められてきています。
しかしながら実際に医学研究を行うに当たっては、「長期」と言っても1年から2年間ぐらいを研究期間にとるものがほとんどです。それ以上長期に追跡調査すると、患者さまやご家族さまに多大な負担をかけることになり、また研究費用や手間も膨大なものになるからです。「有効期間は2年」というお話は、おそらくこういった研究期間が元になっているのだと思われます。つまり、「半年間」とか「2年間」というのは研究期間を意味しているのであって、ドネペジルが最長で何年有効かを示したものではありません。
実際の臨床の場では、ドネペジルを飲んで効果がある患者さまについては、途中で止めずに飲み続けることが推奨されています。ちなみに研究期間の長いものでは、「ドネペジルは約5年間にわたり有効であった」とする報告もあります。
一緒に服用していただくことに問題は無いと思われます。
詳解
フェルラ酸は基礎研究において抗酸化作用やアミロイド蛋白(アルツハイマー病の原因の一つとされています)に対する効果が示されていることなどから、アルツハイマー病に有効なのではないかと言われています。
ドネペジルと似た効果(薬理作用)を持つ「タクリン」という物質とフェルラ酸を組み合わせることで、アルツハイマー病の新たな治療薬となり得るのではないかと研究している人もいるぐらいですので、ドネペジルと一緒に服用していただくことに大きな問題は無いと考えられます。
ただし、フェルラ酸とドネペジルを一緒に服用して本当に大丈夫か?(重大な副作用はないか?)を確認した臨床治験はありません。
また基礎研究ではなく臨床研究においてフェルラ酸の有効性を示した質の高い医学研究はないため、全世界的にフェルラ酸は食品と認識されており、医薬品ではありません。したがって、アルツハイマー病の患者さまがフェルラ酸を服用することで認知機能低下を遅らせることが出来るか否かは現時点では不明です。
フェルラ酸服用に関しては、あくまで医薬品ではなく食品であることをよく理解した上でその長所と短所を勘案しつつ自己の責任で服用すべきと考えます。
認知症の進行具合やドネペジルの効き加減と副作用の有無をみて決めましょう。
詳解
ドネペジルは、アルツハイマー型認知症の軽症(初期)から重症(末期)までの幅広い適応をもったお薬です。通常は一日に5mgという量で服用しますが、重症の場合は10mgまで増量することが出来ます。したがって10mgまで増量するかどうかは、先ずは認知症が重症であるかどうかの判断が必要になります。
また増量する場合、ドネペジルを5mgで服用していた期間に、キチンと治療効果があったかどうかの判断も必要になります。お薬の効果には個人差があり、残念ながらドネペジルが全く効かない人もいます。5mgでは効かなくても10mgにすれば効く人もいますが、もともと全く効いていないお薬をいくら増やしても効果が出るものではありません。5mgでの治療期間中(つまりは軽症から中等症の時)に効果があった場合、10mgに増やしてみるのも良い手段と考えます。
次に副作用の問題です。ドネペジルに限らず、いかなるお薬も量が増えると副作用も出やすくなります。5mgでは副作用が出なくても、10mgにしたら副作用が出ることもあります。病気の進行度合いとお薬の持つ長所と短所を考えながら、増量するかどうかを決めましょう。
認知症の症状とドライアイの症状のどちらがご本人さまの生活の質を落としているかを考えて決めましょう。
詳解
ドネペジルはアセチルコリン系を賦活する作用を持ちます。もう少し平たく表現すると、アセチルコリンという物質を増やす作用を持つと考えていただいて差し支えありません。これをコリン作動性と言います。
一方でドライアイの原因の一つに、アセチルコリン系の抑制が挙げられます。これも平たく表現すると、アセチルコリンが減ってしまうとドライアイになることがある、ということです。つまり、コリン作動性を持つドネペジルを飲んでドライアイになる可能性は低いと考えられます。事実、ドネペジルの添付文書の副作用の欄にドライアイの記載はありませんし、むしろコリン作動薬をドライアイの治療薬として考えている研究者もいるぐらいです。
したがって,ドライアイがドネペジルの副作用である可能性は低いと考えます。しかしながら、お薬のもつ作用(ここではコリン作動性)とはあまり関係ないのだけれど、お薬を飲むことで何らかの不快な症状が出ることがあります。こういった不快な症状は「副作用」とは言わず、「有害事象」という言葉で表現します。明らかな「副作用」であれば,お薬は止めるか減らすべきです。しかしながら不快な症状が「有害事象」の場合、その症状がどのぐらい生活の質を落としてしまっているかを考えてからお薬の変更を考えるべきです。
ドライアイの程度はいかがでしょうか?市販の目薬では治まらないレベルでしょうか?一方、認知症の程度はいかがでしょうか?お薬を減らしても大丈夫なレベルでしょうか?先ずはご本人さまの生活の質を考えましょう。
別のお薬に換える方法もあります。
詳解
ドネペジルの副作用で手が震える(振戦)などの副作用が出ることがありますが、その出現頻度は添付文書上0.1から1%未満とされており、また症状は軽微なことが多いので過度に心配する必要はありません。しかしながら振戦が重度な場合、減量もしくは中止せざるを得ないこともあります。
さて、振戦のように比較的稀な副作用が出る場合、先ずは病気の診断が本当にアルツハイマー型認知症であるかを考え直す必要があります。ドネペジルの適応症は、アルツハイマー型認知症です。ドネペジルの適応がない認知症の場合、服用しても効果がないばかりか副作用が目立つ場合があります。
次に診断がアルツハイマー型認知症でほぼ間違えないと考えられる場合では、お薬の量がもともと多すぎた可能性も考えられます。ドネペジルに限らず、いかなるお薬も副作用を持っています。一般に副作用は、お薬の量が多いと出やすくなります。ドネペジルは通常一日5mgもしくは10mgで服用するのですが、海外では一日23mgまで服用しても良いとする研究結果もあり適正用量にはかなりの個人差があるようです。個人差があるのなら,5mg以下に減らしても効く人があってもおかしくないと思われますが、現時点では「少ない用量でも効果がある」とする質の高い医学研究報告はありません。
基本的に耐え難い副作用が出た場合、その原因となるお薬は中止すべきです。最近ではドネペジル以外にもアルツハイマー型認知症の進行を遅らせるお薬があります。お薬を換えることを検討してみてもよろしいかと考えます。
主治医と相談してから決めて下さい。
詳解
メマンチンは比較的最近発売されたアルツハイマー型認知症の治療薬で、ドネペジルと同じく認知症の進行を遅らせる効果があります。しかしながらドネペジルとは違う作用(薬理学的作用機序)を持っており、その副作用もドネペジルとはかなり異なります。先ずはその症状が本当に副作用かを確認する必要があります。
「副作用」というのは、そのお薬の持つ薬理作用が原因で不快な症状が出現することを言います。
そのお薬の持つ薬理作用とは無関係と考えられるけれども不快な症状が出る場合は、「有害事象」という言葉を使います。
基本的に「副作用」の場合は減量するか中止するかの選択になりますが、「有害事象」の場合はその不快な症状の程度によって判断します。
すなわち不快な症状という短所(リスク)はあるけれど、大きく日常生活に差し支えるものではなければ、認知症を遅らせるという長所(ベネフィット)に目を向けることになります。これを「薬のリスク・ベネフィットを考慮する」と言います。要するに長所・短所を天秤にかけたとき,どちらを重要視するかを判断することです。
リスク・ベネフィットを勘案するには,高度な専門知識が必要になる場合があります。止める前に担当の医師と相談して下さい。
別のお薬に換えて貰いましょう。
詳解
リスペリドンは抗精神病薬に分類されるお薬で、幻覚や妄想・興奮などの精神科的症状を抑えるための治療薬です。もともとは認知症の治療薬ではありませんが、認知症でも同じような症状が出る場合に使われることがあります。
お薬の副作用で、一日中寝ていたりボーッとしてしまうことがあります。これを過鎮静と言います。リスペリドンに限らず抗精神病薬に分類されるお薬は、多かれ少なかれ過鎮静を引き起こす可能性があります。一般的には過鎮静を起こしてしまった場合、その原因となったお薬を止めることが推奨されます。
抗精神病薬はリスペリドンだけではなく、さまざまなお薬があります。副作用が強ければ、他の抗精神病薬に換えて貰うのが良いでしょう。
さらに付け加えると、認知症の精神科的症状(これをBPSDと言います)を抑える作用を持つのは、抗精神病薬だけではありません。やや専門的になりますが、抗精神病薬以外の向精神薬(抗うつ薬や気分調整薬など)や漢方薬の効果も示されています。
リスペリドンが処方されたのは、それ相応のBPSDが認められたからなのでしょうから、何のお薬も飲まないというのは難しいのだと思います。可能な限り副作用の少ないお薬にしてもらいましょう。
お薬無しでも眠れるようなら、飲むのを止めましょう。止める際には医師と相談して下さい。
詳解
眠剤(睡眠薬)は、夜間眠れないことが続き、そのことで日常生活に差し支えがある場合に使います。少々眠れなくても、日常生活を送るに当たって差し支えがなければ服用する必要はありません。
一般に高齢になるほど睡眠時間は短くなっていきます。「○○時間寝ないと身体に悪い」などの思い込みで睡眠薬を服用すると、かえって副作用に苦しむこともあります。
睡眠薬の主な副作用は、眠気と脱力です。夜間眠れるのはいいのですが、昼間も眠気が強くなることがあります。力が抜けて、転びやすくなることもあります。ご質問のように寝てばかりになってしまうこともあります。そういった場合、睡眠薬を飲むのは止め、昼間運動するなど活動性を上げることで対処します。運動しても眠れないなど、どうしても睡眠薬が必要である場合には、副作用の少ないものに換えてゆきます。睡眠薬の中には、急に飲むのを止めると思わぬ副作用が出るものもあります。お薬の中止や変更は、主治医とよく相談してからにした方が安全です。
いずれも認知症の進行を遅らせるという効果の点では変わりありません。薬理学的作用機序や副作用、使い勝手が違います。
詳解
わが国において認知症の進行を遅らせるお薬(向知性薬)が処方できるようになったのは、1999年のドネペジルが最初になります。その後しばらく新薬の登場はありませんでしたが、2011年になり、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミンが相次いで使えるようになりました。いずれもアルツハイマー型認知症の進行を遅らせるのが主な作用であることには変わりありません。
細かくみてゆくと、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミンはそれぞれ脳内でのお薬の働き方が異なります。これを薬理学的作用機序と言います。ここではあまりに専門的な部分は割愛し、実際に使用していただく立場での違いを示します。
先ずドネペジルですが、最も早くから使われていたお薬ということもあり、わが国での治療経験(エビデンス)が豊富という大きな利点があります。また、錠剤のみならず散剤・口腔内崩壊錠・ゼリー状剤・貼付剤と剤型に豊富なバリエーションがあります。軽症から重症まで使えるという幅広い適応も魅力的です。本剤はレビー小体型認知症にも使用可能です。
メマンチンは上記薬剤と薬理学的作用機序が大きく異なります。したがって、唯一他の抗認知症薬との併用が認められています。重度の認知症にも適応があります。
続いてガランタミンについてです。これはドネペジルと大きな違いはありませんが、ドネペジルにはない液剤があるのが特徴です。また何らかの理由でドネペジルが飲めない場合の“次の一手”という役割が大きいと考えます。
リバスチグミンは貼り薬であるという大きな特徴があります。何らかの事情でお薬を口から摂ることが難しい場合、大きな利点となるでしょう。また消化管を介さないことから、吐き気や食欲低下といった副作用が出にくいことが考えられます。
さて少々専門的になりますが,ドネペジルおよびガランタミン、リバスチグミンは全て「アセチルコリン・エステラーゼ阻害薬」というものに分類されます。これに対して、メマンチンだけが「NMDA受容体拮抗薬」というものに分類されます。この違いにより、前者には吐き気・下痢・食欲不振といった消化器系の副作用が出やすいとされ、後者にはめまいやふらつきといった神経系の副作用が出やすいとされています。
このように抗認知症薬にもさまざまな特徴があります。抗認知症薬登場の最も大きなメリットは、個々の状況や病状でお薬を選択できるようになったことと考えます。
メマンチンだけが他のお薬と併用可能です。
詳解
わが国において認知症の進行を遅らせるお薬(向知性薬)が処方できるようになったのは、1999年のドネペジルが最初になります。その後しばらく抗認知症薬の登場はありませんでしたが、2011年になり、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミンが相次いで使えるようになりました。いずれもアルツハイマー病の進行を遅らせるのが主な作用であることには変わりありません。
さてこの中で、メマンチンだけが他のお薬と作用点(薬理学的作用機序)が異なります。少々専門的すぎるかもしれませんが、ドネペジルおよびガランタミン、リバスチグミンは「アセチルコリン・エステラーゼ阻害薬」という薬理学的機序を持っています。これに対してメマンチンは「NMDA受容体拮抗薬」というものに分類されます。あまりに詳細になりますので両者の薬理学的作用機序の具体的な違いまでは説明いたしませんが、ここでは両者が異なる作用を持つことを理解していただければと思います。
「同じ作用を持つものを組み合わせても治療効果は期待できなくても、違う作用を持つものを組み合わせれば有効な治療手段になり得るのではないか?」という考えから、メマンチンだけが他のお薬と併用出来ます。
ただし現時点では、「併用することの有効性はあっても、それほど大きな効果ではない」とされています。ご本人さまの状態をよくみて、お薬を増やすことが本当に幸せに繋がるかをよく検討してから併用するかどうかを決めるのがよろしいかと考えます。
レカネマブはアルツハイマー病による軽度認知障害の進行抑制に有効であることが示されました。
詳解
軽度認知障害とは、「正常と認知症の中間状態」を言います。
もう少し正確に表現すると、「認知症ではないけど、自覚的な記憶障害の訴えがあって、詳しく調べてみると軽度の認知機能障害が認められる状態」となります。いずれにしても大切なことは、
です。この軽度認知障害が注目されるようになったのは、軽度認知障害の人は正常の人に比べて将来的に認知症になる確率が高いことが示されたからです。
レカネマブの詳しい内容は以下のコラムをご覧ください。
お薬が合っていないことが考えられます。別のお薬に換えることや、お薬以外の方法で対処することも考えましょう。
詳解
認知症のお薬(向知性薬;認知症の進行を遅らせる薬)の中には、活動性を上げてくれる作用を持つものがあります。活動性が上がることは良いことですが、上がりすぎてしまうこともあります。それが「イライラ」とか「興奮」という形で表現されることがあります。
ドネペジルの添付文書には、0.1から1%の頻度で「興奮」「不穏」「攻撃性」が認められると書いてあります。つまりは100から1000人に1人の確率で、興奮する人もいるということです。認知症のお薬を飲んだからと言って、必ず皆が興奮するわけではありません。むしろ興奮する人の方が稀ということになります。
副作用が出た場合は、そのお薬を止めるのが原則になります。最近はいくつかの新薬が出ています。別のお薬に換えてみるのも一つの方法です。またお薬だけでなく、認知機能を悪化させないような生活習慣を心がけることも肝要です。
規則正しく続けて服用することで効果が出ます。
詳解
ドネペジルの治療効果は、規則正しく続けて服用することで発揮されると考えられています。臨床研究上は6週間以上服薬を中断すると、再度ドネペジルを飲み始めても効果が期待できないことが解っています。
お薬の飲み忘れは日常よくあることですが、認知症の方はお薬の管理が上手くできないことが稀ならずあります。きちんと服薬したかを見守ってあげることが大切です。
血液をサラサラにする薬、例えばアスピリンやワーファリン等が、脳梗塞を予防することは証明されていますが、出血の危険性を上げることも事実です。血管の脆くなった高齢者で、梗塞を予防するのか、出血を避けるかは、専門医でも判断に迷うことがあります。
最近のMRI検査では、微小な脳出血を見つけることが可能です。年齢、血液凝固(固まりやすさ)等も踏まえ、総合的に判断することが必要です。
認知症になったから、高血圧治療しなくても良いということは決してありません。
認知症のある高齢者で、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などの生活習慣病を治療した群では、まったく放置した群より、認知機能の悪化が緩やかであるとされています(図)。
ただし高齢期の血圧管理は、中年期と異なりやや緩めることが必要でしょう。

治験には様々な段階があり、新しい薬の安全性を主に確認するI相、II相試験 有効性や有効量を見るIII相試験、すでに市販されているが、市販後の安全性や、多剤との併用による有効性をみる、IV相試験があります。
このうち本当の意味での新しい薬剤の治験はIからIII相試験ということになります。IからII相試験は安全性の検討をするため全国でも限られた施設でしか行えないことが多く、通常は数か所程度で行われます。III相試験では全国の認知症の専門病院が多く参加するため参加できる可能性が高くなります。
各病院の認知症担当科の外来や薬剤科に募集のためのポスターが掲示されていることが多いので、注意するとよいと思います。また時にはインターネット上で募集の案内がでていることもあります。