「朝の薬、飲んだかな?」「気がついたら薬がたくさん余っていた」。そんな経験はありませんか。薬は、正しく飲んではじめて効果を発揮します。しかし、年齢を重ねると、飲む薬の数が増えたり、飲み忘れや飲み間違いが起こったり、薬が飲み込みにくくなったりするなど、正しく飲み続けることが難しくなることがあります。今回は、飲み忘れや飲み間違いを防ぎ、薬を無理なく飲み続けるためのコツをご紹介します。
薬をきちんと飲めない理由は、大きく2つに分けられます。ひとつは、飲もうと思っていても体の動きや記憶力などの変化によって「飲めない」場合、もうひとつは、薬の数の多さや飲みにくさなどから「飲まない」場合です(表1)。
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飲めない理由 |
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厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」より改変
この中で、もの忘れについて当センターの研究では、記憶力や判断力の低下がまだ目立たない早い段階から、薬の管理に支障が出始めることがわかっています(図1)。ご本人が「ちゃんと飲めている」と思っていても、実際には飲めていないこともあります。ご家族のちょっとした見守りが大切です。

図1.認知症の進み具合と生活上の支障
Mizokami F,et al.Am J Alzheimers Dis Other Demen.2016;31:132-136より改変
また、介護が必要な高齢者のご家族を対象にした過去の調査では、約4割の方が薬を飲むのを嫌がった経験があると答えています。その理由で多かったのは「病気だと思っていない」「飲み込むのに時間がかかる」「飲み込めない・飲み込みにくい」でした(図2)。

図2.薬を飲むのを嫌がった理由(上位5項目、複数回答)
今井幸充. 治療 87(2):433-442,2005より改変
「調子が良いから」と、自分の判断で薬をやめてしまうことがあります。しかし、調子が良いのは薬が効いているからかもしれません。急にやめると、かえって症状が悪化する薬もあります。また、飲み忘れたときに2回分をまとめて飲むことはやめましょう。
高齢者を対象にした調査では、約半数の方が「薬がのどにつかえる」など、飲みにくさを経験していました。のどにつかえた経験のある方ほど、錠剤を砕くなど自分の判断で工夫している傾向もみられました。しかし、薬の中には砕くと効き目が強く出すぎたり、副作用が起こりやすくなったりするものがあります。飲みにくいときは、まず医師や薬剤師にご相談ください。粉薬やゼリー状の薬、貼り薬などに変えられる場合もあります。
薬を正しく飲み続けるためには、ちょっとした工夫が役立ちます(図3)。
お薬カレンダーやお薬ボックスを使う
1週間分の薬を曜日や時間ごとにセットしておくと、飲んだかどうかがひと目でわかります。
1回分ずつまとめてもらう(一包化)
何種類もの薬を、飲む時間ごとに1袋にまとめることができます。袋に日付や印をつけてもらうこともできます。かかりつけの薬局にご相談ください。
飲む回数や種類を減らせないか相談する
1日3回の薬を1日1回にまとめたり、似た働きの薬を整理したりできる場合があります。
お薬手帳は1冊にまとめる
複数の病院や薬局にかかっていても、お薬手帳を1冊にまとめて毎回見せることで、薬の重なりや飲み合わせを確認できます。
残った薬はかかりつけ薬局へ持って行く
余った薬は袋にまとめてかかりつけ薬局に持って行きましょう。薬剤師が整理し、次回の処方の調整に役立てることができます。
ご家族が見守りやすい時間に合わせる
ご本人だけでの管理が難しい場合は、ご家族が声をかけやすい時間に飲めるよう、医師や薬剤師に相談してみましょう。

図3.薬の管理方法の工夫
薬のことで困ったときは、一人で悩まず、医師や薬剤師に気軽にご相談ください。「飲みにくい」「飲み忘れが多い」「薬が多くて管理が大変」といった、ちょっとしたことでも構いません。普段利用しているかかりつけ薬局の薬剤師も、身近な相談相手です。お薬手帳と一緒に、余っている薬や気になることを伝えてみましょう。