昔はもっと元気だったのに…。
なんとなく最近疲れやすくなって、友人からは「ちょっと痩せたんじゃない?」と言われる。
ちゃんと食事はとっているのに5年前より体重が減っている。
歳を重ねてくると、この様な経験をされる方は多いのではないでしょうか?
これらの症状にはいろいろな病気が潜んでいる可能性があります。しっかりと食事をしているのに6か月の間に5%以上の体重が減ったり、疲れをすぐに感じる時には、悪性新生物(いわゆる“がん”)、糖尿病、発熱などを起こさない程度の感染症(結核など)や神経・筋・消化器・呼吸器・循環器疾患等、さまざまな疾患が潜んでいる可能性があります。さらに、心の病気によってもこれらの症状は起こることがあります。
病気になっていなくても、体に良いと思って内服している“薬”や“サプリメント”によって引き起こされていたり、生活習慣の変化などでも起こる場合があります。
これまでの“健康長寿ナビ”の中には、このような状況に対処するヒントとなる医学情報が満載されています。是非、ご参考に全項目を読破されることをお勧め致します。
日常生活には支障がなくても、1か月以上症状が続く場合は一度精密検査を受けていただければと思います。当センターであれば老年内科が最初の総合的な評価を行う受診先となります。
ところで、精密検査の結果で特に異常が見つからず、心の病気でもない場合、ロコモティブシンドロームやサルコペニアが潜んでいることでフレイル状態や軽度の慢性脱水状態になっているために、これらの症状が起きている可能性もあります。
既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、ロコモとはロコモティブシンドロームの略で日本整形外科学会が提唱した概念です。加齢に伴う運動器障害による移動の機能が低下した状態で要介護となる最たる原因となっています。
また、フレイルは高齢者の身体や精神、社会的なネットワークの脆弱化により、ストレスに抵抗する力が低下している状態で日本老年医学会が提唱した用語です。両者とも重要なポイントは早期発見と適切な介入によって予防することが可能で、回復することが期待できる点です。
一方で、“サルコペニア”は元々ギリシャ語で肉・筋肉の減少・消失を意味していて、現在は加齢に伴う筋肉の機能低下と定義されています。骨格筋は筋肉自体の病気で萎縮するだけでなく、使用頻度が減っても萎縮します。これを廃用性萎縮と言います。また加齢によっても筋肉は萎縮します。筋肉には水分が多く含まれるため、筋委縮があると慢性的に軽い脱水状態に陥ることで、それが「だるい」という症状をきたす場合もあります。
これらの状態を防ぐためには、腎機能に問題がある方は医師への相談が必要ですが、筋肉の材料となるタンパク質を多めにとったり、荷重トレーニング(筋トレ)をすることが高齢者であっても必要です。
国立長寿医療研究センター病院内のロコモフレイルセンターの外来は日本でも唯一と言っても良い、総合的にサルコペニア、ロコモティブシンドローム、フレイル状態を判定する評価体制を敷いています。従来の問診、診察、一般的な血液・画像検査に加え、骨・筋量測定、歩行速度や立ち上がり機能やバランス機能、舌圧測定などの嚥下機能など、他院では行われてない詳細な運動機能チェック及び認知機能のチェックも行っています。その後、老年内科医、整形外科医を中心にリハビリテーション科、歯科・口腔外科、栄養科、薬剤師などを含めた多職種で包括的にその結果を討議し、問題点を抽出して治療介入をしています。サルコペニアやロコモティブシンドローム、フレイル状態になっていないかのチェックをすることは、今後のさらなる老化を予防する意味でも極めて重要です。
また、経年的に追跡して、データベース化し、今後の老化予防・介護予防につながるよう努めています。
だるさ、体重減少の原因がわからず、「病気ではない」と言われたら、ロコモフレイルセンターの受診をご検討ください。勿論、体力の衰えや運動機能の低下、不安を感じられている方の定期的な受診も大歓迎です。