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血液バイオマーカー(ニューロフィラメントL)と認知機能、腸内細菌との関連を調査しました

2022年2月17日

 もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らと、認知症先進医療開発センター分子基盤研究部の里直行部長らの研究グループは、腸内細菌研究に参加された患者さんを対象に、認知症に関連する血液バイオマーカー(ニューロフィラメントL)と認知機能、腸内細菌との関連を調査しました。解析の結果、ニューロフィラメントLは認知機能や脳MRIの画像所見とは関連しましたが、腸内細菌とは強く関連しませんでした。

ポイント

本文

 本研究は、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター長寿医療研究開発費、日本学術振興会の科学研究費助成事業(課題番号20K07861)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の認知症研究開発事業(課題番号 JP20dk0207042)、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センターの「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業(異分野融合発展研究)、公益財団法人ダノン健康栄養財団、公益財団法人本庄国際奨学財団の支援のもと実施され、その研究成果が科学雑誌Journal of Alzheimer's Diseaseに2022年2月15日にオンライン版で公開されました。

研究の概要

 研究チームは、国立長寿医療研究センター(以下、当センター)もの忘れ外来を受診した方を対象に認知機能検査や頭部MRI検査などを実施し、得られた臨床情報と血液・検便サンプルをバイオバンクに収集、保存しました。保存された血漿サンプルを用いて、認知症先進医療開発センターでニューロフィラメントL(Neurofilament light chain L: NfL)を測定しました。
 解析の結果、NfLが高い群は、高齢で女性が多く、高血圧や脳卒中の既往、認知症を多く伴っていました。多変量解析では、NfLが高い群は低い群と比べて約10倍強く認知症と関連していました(オッズ比9.94)。しかし、NfLと腸内細菌の代謝産物濃度に有意な関係は認めませんでした。

図1:NfLと認知機能、脳小血管病との関連

A)認知機能健常、MCI(軽度認知障害)、認知症の順にNfLは高値であり、
認知機能障害の程度とNfLは相関している。

B)ラクナ梗塞や大脳白質病変など脳MRI画像所見が多い群で(脳小血管病スコアが高値)、
NfLが高値であり、脳小血管病の程度とNfLは相関している。

研究の意義

 ニューロフィラメントLが認知機能に関連するというデータはすでに報告されていますが、腸内細菌と認知症が関係する機序についてはよくわかっていませんでした。今回、ニューロフィラメントLと腸内細菌との関連は有意な結果ではありませんでしたが、これからもバイオマーカーについて解析を予定しています。腸内細菌と認知機能が関連する機序の解明には、今後のバイオマーカー解析が鍵になるかもしれません。

論文発表(2022年2月15日)

 

問い合わせ先

〒474-8511 愛知県大府市森岡町7丁目430番地

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 副センター長  佐治直樹

Tel: 0562-46-2311(内線7940) Fax: 0562-46-8394  Email: sajink@ncgg.go.jp

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