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もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らが、腸内細菌と大脳白質病変との関連性を見出しました

 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典)で研究を進めてきた佐治直樹もの忘れセンター副センター長が、東北大学、久留米大学、株式会社テクノスルガ・ラボと協力して、腸内細菌は大脳白質病変と強い関連があり(オッズ比2倍)、脳萎縮とも関連することを見出しました。

2021年1月8日

国⽴研究開発法⼈国⽴⻑寿医療研究センター
国立大学法人東北大学
学校法⼈久留⽶⼤学
株式会社テクノスルガ・ラボ

ポイント

本文

 この研究は、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの長寿医療研究開発費、日本学術振興会の科学研究費助成事業(科研費:課題番号20K07861)、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センターの「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業(異分野融合発展研究)、公益財団法人ダノン健康栄養財団、公益財団法人本庄国際奨学財団の支援のもと実施され、その研究成果は科学雑誌Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseasesに2021年1月7日17時(日本時間)にオンライン版で公開されました。

研究の背景

 認知症の病態解明や治療薬の開発などを目標に、2016年から国立長寿医療研究センターを中心にオレンジレジストリ研究(注1)が開始され、様々な臨床研究が展開されています。研究チームは、これまでに腸内細菌が認知機能と強く関連するという知見を発表してきましたが、その機序については未解明でした。

(注1)日本医療研究開発機構(AMED)が展開する認知症に関する多施設共同レジストリ研究

研究の概要

 研究チームは、国立長寿医療研究センターもの忘れ外来を受診した方を対象に認知機能検査や頭部MRI検査などを実施し、得られた臨床情報と検便サンプルをバイオバンクに収集しました(図1)。検便サンプルの解析では、T-RFLP法で腸内細菌叢のプロファイルを解析し、液体クロマトグラフィーなどで代謝産物の濃度を測定しました(株式会社テクノスルガ・ラボ)。そして、代謝産物と認知機能、脳MRI画像との関連について統計学的に分析しました(久留米大学室谷健太准教授)。

 その結果、腸内細菌の分類がエンテロタイプI群では、認知機能が低下し(MMSE:25 vs. 27, P < 0.05; CDR-SB, 1.5 vs. 0.5, P < 0.01)(注2)、脳MRIの画像異常(脳小血管病:図2)が多く、脳(海馬傍回)がより萎縮していました(VSRADスコア(注3)、1.07 vs. 0.80, P = 0.05)。これらの群では、大脳白質病変(36.8% vs. 18.4%)や脳微小出血(18.4% vs. 10.2%)などの脳小血管病も多く保有していました。また、脳小血管病スコア高値群では、低値群よりも腸内細菌の代謝産物が高値でした。大脳白質病変の主な原因に加齢や高血圧があり、その影響も否定できないため(交絡因子といいます)、多変量解析を実施しました。その結果、既存の危険因子とは独立して、腸内細菌は大脳白質病変と関係していました(約2倍のオッズ比)。現在、東北大学の都築毅准教授と共同で、栄養や腸内細菌の関連についての解析を予定しています。

(注2)MMSE: Mini-Mental State Examination. 数値が高いほど認知機能が良好 CDR-SB: Clinical Dementia Rating-Sum of Boxes. 数値が低いほど認知機能が良好
(注3)VSRAD: voxel-based specific regional analysis system for Alzheimer’s Disease. 記憶に関する海馬傍回付近の萎縮を数値化し正常脳と比較したスコア。数値が高いほど脳萎縮の傾向がある

研究の意義

 腸内細菌と大脳白質病変が関連する機序の解明は、認知症新規予防法の開発への糸口になるかもしれません。オレンジレジストリ研究は認知症に関する研究の基盤であり、この研究基盤を利活用した研究の推進が今後も期待されます。

図表

図1:腸内細菌研究の流れ

図2:脳小血管病について

脳小血管病は認知機能や精神・行動障害とも関連があり、以下で図示します。 

図3:脳小血管病と認知機能との関連

図4:脳小血管病と精神・行動障害との関連

補足資料

hosoku1

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オレンジレジストリ研究に関する論文情報

Saji N, et al. Lancet Neurol. 2016 Jun;15(7):661-662.このリンクは別ウィンドウで開きます 

腸内細菌の研究に関する私達の論文情報

今回の論文発表(2021年1月7日)

Saji N, Murotani K, Hisada T, Tsuduki T, Sugimoto T, Kimura A, Niida S, Toba K, Sakurai T. The association between cerebral small vessel disease and the gut microbiome: a cross-sectional analysis.
URL:https://doi.org/10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2020.105568このリンクは別ウィンドウで開きます
掲載誌:Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases

腸内細菌研究の流れについてのイラスト引用

 『医療と健康イラストカットCD-ROM』(マール社):媒体への掲載許諾を取得済み。

リリースの内容に関するお問い合わせ

この研究に関すること

〒474-8511 愛知県大府市森岡町7丁目430番地
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 副センター長  佐治直樹

  • Tel: 0562-46-2311(内線7940)
  • Fax: 0562-46-8394
  • Email: sajink@ncgg.go.jp

報道に関すること

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 総務係長 里村亮

  • Tel: 0562-46-2311(内線4623)
  • Fax:  0562-48-2373
  • Email: r-satomura@ncgg.go.jp

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