本文へ移動

もの忘れセンター

文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大

 

ホーム > 病院 > もの忘れセンター > ニュース&トピックス > もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らが、難聴と認知機能低下との強い関連を見いだしました

もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らが、難聴と認知機能低下との強い関連を見いだしました

2020年12月1日

国⽴研究開発法⼈国⽴⻑寿医療研究センター
地⽅独⽴⾏政法⼈東京都健康⻑寿医療センター
国⽴⼤学法⼈⿅児島⼤学
学校法⼈久留⽶⼤学
学校法⼈名古屋⼥⼦⼤学
学校法⼈愛知医科⼤学
社会福祉法⼈杏嶺会⼀宮医療療育センター

国⽴⻑寿医療研究センター(理事⻑:荒井秀典)で研究を進めてきた佐治直樹もの忘れセンター副センター⻑が、東京都健康⻑寿医療センター、⿅児島⼤学、久留⽶⼤学、名古屋⼥⼦⼤学、愛知医科⼤学、⼀宮医療療育センターと協⼒し、地域在住⾼齢者の難聴は認知機能低下と強く関連することを⾒いだしました。また、補聴器の使⽤率が海外と⽐べて⽇本では低いことを報告しました。

ポイント

 国立長寿医療研究センターの佐治直樹もの忘れセンター副センター長は、名古屋女子大学の片山直美教授、東京都健康長寿医療センターの鈴木宏幸研究員、鹿児島大学の牧迫飛雄馬教授らと協力し、北海道八雲町、東京都板橋区、鹿児島県垂水市で実施された地域在住高齢者の住民健診データを統合して、難聴と認知機能に強い関連があることを見いだしました。また、海外と比較して日本では補聴器の使用率が低いことも考察しました。この研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の認知症研究開発事業、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの長寿医療研究開発費(19-24, 30-1)、堀科学芸術振興財団からの支援のもとで実施され、その成果は科学雑誌Archives of Gerontology and Geriatricsに2020年11月27日19時(日本時間)に原著論文1編、短報1編として公開されました。

研究の背景

 認知症の病態解明や治療薬の開発などを目標に、2016年から国立長寿医療研究センターを中心にオレンジレジストリ研究(注)が開始され、認知症制圧のため様々な研究が展開されています。今回ご報告する難聴と認知症についての研究も、認知症に関する現在進行中の臨床研究です。近年、難聴があると認知症になりやすいというデータが海外から報告されており、視力や聴力など感覚器の領域と認知症との関連について注目されていました。

(注)AMEDが展開する認知症に関する多施設大規模レジストリ研究事業

今回の研究成果の概要

 研究チームは、2018年度に実施された北海道八雲町や東京都板橋区、鹿児島県垂水市で実施された地域在住高齢者の住民健診データを統合し、聞こえについてのアンケート調査と認知機能との関連を解析しました。結果は以下をご覧ください。

研究の意義

 難聴は認知症のリスクであり、補聴器を用いることで認知症の発症リスクを軽減できる可能性が示唆されています。難聴が認知機能障害と独立して関連する(年齢、性別、生活状況などの他の要因と関係なく関連する)という今回の新知見は、適切に補聴器を導入すれば、認知症の発症を軽減させうる可能性を示しています。

 日本での補聴器の導入率は海外諸国よりも低く、これからの地域在住高齢者を対象にした人間ドックや住民健診では、聞こえや認知機能についてのチェックがより一層必要になると考えます。オレンジレジストリ研究は、認知症に関する研究基盤になっており、今後も、この研究基盤を利活用した研究の推進が期待されます。

論文発表(2020年11月27日)

 

学会発表(2020年11月26日~12月11日オンデマンド配信)

z1

図1:認知症の危険因子

 修正可能な認知症リスクとして難聴の影響は大きいです。Lancet論文を契機に、保健行政の視点からも難聴と認知症の関係が注目されるようになりました。 

 

図2:難聴と認知症の臨床研究

 国立長寿医療研究センターでは、もの忘れと難聴がある患者を対象に補聴器を使用することで認知機能がどう変化するか、認知症に関する観察研究を実施しています(エスカルゴ研究)。観察終了後、結果をまとめる予定です。

 

z3

図3:地域住民を対象にした研究

 エスカルゴ研究では、地域在住高齢者を対象にしたデータ解析も計画しました。

 

図4:難聴と認知機能との関連を解析

 難聴と認知機能検査が実施でき、必要なデータ活用が可能な2地区での匿名化した住民健診データを収集して、統計解析しました。

 

h1

表1:補聴器使用者と未使用者の2群比較

 補聴器使用者は、高齢で認知機能障害を伴う(時計の絵がうまく描けず、3つの単語記憶・再生ができない)傾向でしたが、運動習慣の頻度はやや高い傾向でした。

 

z5

図5:聞こえの状況と認知機能テスト正答率との関係

 難聴(聞こえの程度)が重度になると認知機能テストの正答率も低下しました。

 

h2

表2:3地区を対象にした眼鏡や補聴器の使用率の比較

 眼鏡を使用する高齢者は8割以上と多いのに、補聴器を使用する高齢者は1割未満でした。

 

表3:難聴者の割合と補聴器使用率の国別比較

 難聴者の割合は、海外と日本でほぼ同一なのに、補聴器の使用率は年代別に比較しても日本は海外よりも低い傾向でした。

補足資料

オレンジレジストリ研究に関する論文情報

まとめ

謝辞

地域住民健診のデータのご提供

耳鼻咽喉科医としてのご協力

生物統計家としてのご協力

補聴器使用に関する調査結果のご提供

 

問い合わせ先

この研究に関すること

〒474-8511 愛知県大府市森岡町7丁目430番地

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 副センター長  佐治直樹

Tel: 0562-46-2311(内線7940) Fax: 0562-46-8394  Email: sajink@ncgg.go.jp

 

報道に関すること

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 総務係長 里村亮

Tel: 0562-46-2311(内線4623) Fax:  0562-48-2373  Email: r-satomura@ncgg.go.jp

もの忘れセンター