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広範囲の筋肉が映し出される、携帯可能な筋肉専用超音波測定装置が臨床使用可能に

2024年11月8日
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

 いつまでも脚腰を丈夫に保つためには、太ももの前面にある大腿四頭筋という筋肉の量と質を維持することがとても大切です。国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典)のロコモフレイルセンターでは大腿四頭筋に着目し、そのCT(Computed Tomography コンピュータ断層撮影)画像を用いて、筋肉が加齢とともに減少する様子や、CT 画像と筋力や運動機能との関わりを明らかにする研究を続けてきました1)~5)。しかしながら、CT による筋肉の解析はどこでも簡便にできるものではないため、CT と同じような画像を短時間に映し出すことができる筋肉専用超音波測定装置を研究開発してまいりました。今般、その装置が臨床使用可能となりました。(図1、図2)。

図1 超音波筋肉可視化装置

 本装置は古野電気株式会社(兵庫県西宮市)が開発を手掛けたもので、大腿四頭筋の画像評価研究1)~5)で世界をリードしてきたロコモフレイルセンターが、測定精度や臨床的な意味合いについて有用性を検証するための研究を担い、医療機器の認証前に行われる特定臨床研究を2021年より2年間行いました。その成果、測定再現性に優れ、同一断面で撮影したCT 画像との相関も大変すぐれていることが示され、9月末に、米国の雑誌PLOS ONE に掲載されました6)。時期を同じくして医療機器としても認証され、近い将来、加齢による筋肉減弱症であるサルコペニアを診断するためにも使用されることが期待されています。

図2 若年者の測定例 筋断面画像の表示 大腿四頭筋全体を測定

 サルコペニアの診断は、現在はDXA(Dual-energy X-ray Absorptiometry)法またはBIA(Bioelectrical Impedance Analysis)法による四肢の筋肉量の測定に加え、握力の測定や歩行速度、椅子からの立ち上がりの能力などを合わせて測定する必要がありますが、かかりつけ医などでの診断は必ずしも容易ではないために、日常臨床の中では普及しているとは言い難い状況があります。CT による疫学研究結果から、加齢により男女ともに大腿四頭筋の断面積は減少し、特にサルコペニア患者では健常者よりかなり小さくなっています。また、DXA 法やBIA 法で測定される筋肉量の指標となっているSMI(skeletal muscle mass index -骨格筋指数)は日本人を含むアジア人女性では加齢による減少を上手く表すことができておらず、さらに、筋肉の量とともに起こる筋肉の質の低下(筋肉内への脂肪の浸潤)については簡単な測定方法も無く、サルコペニア判定としては、現状は使用されてはおりません。しかし、本装置は筋肉の質の劣化についても測定可能です。

図3 測定は大腿部をなぞるように行います

 CT のように高価で測定場所や測定者が限定されることもなく、病院内では、リハビリスペースや病室など色々な場所での測定も可能です。また、街中の診療所や様々な健診の場での応用も期待されています。サルコペニアは、ロコモ(ロコモティブシンドローム)やフレイルの主要な原因であり、また様々な高齢者に特有の病気の増悪要因でもありますので、早い時期に本装置を用いてスクリーニング診断をすることが、介護予防の面でとても重要です。加えて、より若い世代も対象とした、スポーツ現場やトレーニングジムなど広い応用範囲が見込まれます。今後はそうした様々なニーズを調査し、普及を進めたいと考えております。

引用文献

  1. Kasai T, Ishiguro N, Matsui Y, Harada A, Takemura M, Yuki A, et al. Sex- and age-related differences in mid-thigh composition and muscle quality determined by computed tomography in middle-aged and elderly Japanese. Geriatr Gerontol Int. 2015;15(6):700–6.
  2. Tsukasaki K, Matsui Y, Arai H, Harada A, Tomida M, Takemura M, et al. Association of Muscle Strength and Gait Speed with Cross-Sectional Muscle Area Determined by Mid-Thigh Computed Tomography - A Comparison with Skeletal Muscle Mass Measured by Dual-Energy X-Ray Absorptiometry. J frailty aging. 2020;9(2):82–9.
  3. Mizuno T,Matsui Y,Tomida M, Suzuki Y, Nishita Y, Tange C et al. Differences in the mass and quality of the quadriceps with age and sex and their relationships with knee extension strength. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2021; 12: 900–91
  4. Oba H, Matsui Y, Arai H, Watanabe T, Iida H, Mizuno T, Yamashita S, Ishizuka S, Suzuki Y, Hiraiwa H, Imagama S. Evaluation of muscle quality and quantity for the assessment of sarcopenia using mid-thigh computed tomography: a cohort study. BMC Geriatr. 2021 Apr 13;21(1):23
  5. Mizuno T, Matsui Y, Tomida M, Suzuki Y, et al. Relationship between quadriceps muscle computed tomography measurement and motor function, muscle mass, and sarcopenia diagnosis. Front Endocrinol. 2023; 14: 1–23
  6. Matsui Y, Takemura M, Watanabe T, Satake S, Arai H. Evaluation of quadriceps muscle cross-sectional area using an ultrasonic diagnostic equipment with a wide field of view, PLOS ONE Published: September 24, 2024 

リリースの内容に関するお問い合わせ

この研究に関すること

ロコモフレイルセンター 松井康素

  • 電話 0562-46-2311(代表) 内線7143
  • E-mail:matsui(at-mark)ncgg.go.jp ※(at-mark)を「@」に置き換えてください

報道に関すること

国立長寿医療研究センター総務部総務課 総務係長(広報担当)
〒474-8511 愛知県大府市森岡町七丁目430番地

  • 電話 0562(46)2311(代表)(内線4623)
  • E-mail: webadmin(at-mark)ncgg.go.jp ※(at-mark)を「@」に置き換えてください

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