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松井康素ロコモフレイルセンター長らの研究グループが、日本人の年齢・性別による大腿四頭筋の筋肉量と質の違いを明らかにしました

2021年6月18日
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学

 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典)、ロコモフレイルセンター(センター長:松井康素)、老化疫学研究部(旧NILS-LSA活用研究室)(部長:大塚礼)は、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学大学院医学系研究科整形外科学(教授:今釜史郎、同博士課程4年/当センター研究生:水野隆文)との共同研究において、サルコペニアのより的確な診断方法を検討するため、大腿中央部を撮影したCT1)画像より計測される大腿四頭筋の筋肉の量、質に注目し、性別・年代別での違いや膝伸展筋力との関係性について明らかにしました。研究成果は、国際科学誌「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」のweb版に2021年5月19日に掲載されました。

ポイント
  • 日本人の中高年の地域住民において、大腿部の筋肉量と質には男女の違いがあり、高齢者ほど量も質も低く、特に男性は高齢になると加速度的に低値を示すようになる。
  • 筋力の発揮には、筋肉の量も質も重要な役割を果たしている。質と量を合わせて評価することで筋肉の状態をより正確に把握することができる。
  • 本研究の成果は、将来的にCTによるサルコペニアの診断法の確立や他の診断機器への応用が期待される。

要旨

 加齢や疾患により筋肉量と筋力・身体機能が低下する状態をサルコペニア2)と言います。サルコペニアはフレイルの主な要因として知られており、転倒、日常生活動作の障害、生活の質の低下、死亡などとかかわるために、超高齢社会にある日本においてサルコペニアの対策は喫緊の課題であり、高齢者の自立促進を目指す、国立長寿医療研究センターの主要研究テーマの一つです。サルコペニアのアジアの診断基準の策定には荒井秀典理事長が主導者として携っています。
 サルコペニアの診断は現在DXA法3)またはBIA法4)による筋量の測定と筋力(握力)と身体機能(歩行速度など)の測定を組み合わせて行われています。近年、筋肉の量のみならず筋肉の質を評価することの重要性が提起されてきています。筋肉の内側や周囲への脂肪の蓄積や、繊維化が起こることで筋肉の質が低下すると考えられていますが、筋肉の質を定量化するためにCT画像の濃度を利用した評価方法が提案されています。
 今回のわれわれの研究では、高齢になるほど筋肉の量も質も、ともに男性が女性と比べて急激な低下を示すことや、膝伸展筋力には量も質も関係していることを明らかにしました。また、大腿四頭筋を4つの細かい筋肉に細分化した詳細な検討でも、筋肉毎に筋力への関係度合いに男女差があることなどを明らかにしました。
 今後はこれらの情報をもとに、CTによるより的確なサルコペニア診断方法の確立、他の診断機器での評価への応用、質の低下する筋肉へ焦点を当てた運動介入方法の開発などへ繋がっていくことが期待されます。
 なお本研究は、日本学術振興会科学研究費(研究代表者:松井康素)の助成を受けて行われました。

図1

図1:大腿四頭筋のCT画像(注:通常のCT画像とは色調が反転しています)

 白い部位が脂肪で、黒い部分が筋肉です。CT値(画像の濃度)により筋肉の質が評価されます。筋肉の断面積により筋肉量が評価されます。

図2

図2:年齢と大腿四頭筋の筋断面積とCT値の男女別の関係性

 大腿四頭筋では男性は女性よりも高齢になるほど急激に筋断面積(筋肉の量)、CT値(筋肉の質)の数値が低くなります。

背景

 2018年にThe European Working Group on Sarcopenia 2 (EWGSOP2)5)はサルコペニア診断の主要なパラメータとして、筋肉量だけではなく筋肉の質にも焦点を当てています。骨格筋の質的な変化は速筋繊維のサイズの減少、骨格筋内や筋間脂肪の増加、筋肉の線維化などによって引き起こされると考えられています。CTやMRIなどの画像診断装置では横断面の構成要素を細かく評価することができ、筋質の評価にも有用である可能性があります。特にCTに関して言えば、CTにより計測できる濃度(CT値6))を利用して大腿部や腹部の筋肉の脂肪化の程度を評価する試みがなされてきました。加齢により下肢では上肢の2倍近い筋肉量の減少を示すとされるように加齢性変化は下肢で明らかであり、以前われわれは、大腿の前側に位置する大腿四頭筋はハムストリングスなどの大腿後方の筋肉と比較して加齢による筋量の低下が著しいことを報告しています。そのため、大腿四頭筋についての詳細な評価がサルコペニアのより適切な評価につながる可能性があると考えました。今回の研究目的は、生体の中で加齢による影響が顕著である大腿四頭筋に焦点を当て、その筋肉の断面積とCT値の性別・年代別の分布を構成筋ごとに詳細に調査し、また膝伸展筋力との関係を調査、検討することにしました。

研究成果

 本研究は、1997年より継続実施されている「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)のうち第七次調査(2010~2012年)を利用した研究の一環として行われました。520人の中高年の地域住民(男性273人、女性247人、平均年齢63.1歳)を対象に、右大腿中央部CT画像を撮影しました。これを専用のCT画像解析ソフトを利用し、大腿四頭筋全体や4つの構成する筋肉(大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋)と筋間脂肪別に筋断面積(筋肉の量の指標)、CT値(筋肉の濃度、筋肉の質の指標)を計測しました。年齢、性別、身長、BMI、既往歴、喫煙歴、アルコール摂取量、食事摂取量、身体活動量などの参加者の背景因子と、握力、膝伸展筋力、DXA法にて計測した全身筋量などのサルコペニアと関連のある測定項目を利用して解析を行いました。いままで日本人において大腿四頭筋の断面積・CT値を合わせて性・年代別に報告されていないために詳細に記述しました。筋断面積、CT値は多くの場合で男性が女性よりも高い数値を示すことが判明しましたが、大腿直筋ではCT値に男女差を認めないなどの他とは異なる特徴を認めました。男性は断面積もCT値も高齢になると加速度的に低値を示すようになることが判明し、男性と女性では年齢が筋肉に与える影響の程度が異なると推測されます。大腿四頭筋は膝を伸ばす際にはもっとも大きな役割を果たす筋肉であるために、膝伸展筋力との関係を確認しました。大腿四頭筋全体の断面積、CT値はともに膝の伸展筋力に関連していることが判明しました。さらに構成する4つの筋を分けて詳細に検討すると、膝伸展筋力と構成する筋肉の関係性は男女で異なることが判明し、女性において中間広筋のCT値が関係を示すなど、筋量を表す断面積のみでなく、筋質を表すCT値においても、大腿四頭筋毎に異なるという特徴を認めました。

用語説明

発表論文

お問い合わせ先

当研究の内容について

  • 国立長寿医療研究センター ロコモフレイルセンター センター長 松井康素
    TEL: 0562-46-2311(内線3112) FAX:0562-48-2373
    e-mail:matsui@ncgg.go.jp

  • 名古屋大学医学部・医学系研究科 整形外科 水野隆文
    TEL: 052-741-2111 FAX:052-744-2260
    e-mail:takafumi.mizuno@med.nagoya-u.ac.jp

広報担当

  • 国立長寿医療研究センター 総務部総務課総務係
    TEL: 0562-46-2311(内線4623) FAX:0562-48-2373
    e-mail:webadmin@ncgg.go.jp

  • 名古屋大学医学部・医学系研究科総務課総務係
    TEL:052-744-2228 FAX:052-744-2785
    e-mail:iga-sous@adm.nagoya-u.ac.jp

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