病院レター第123号 2026年7月1日

在宅医療推進室長
緩和ケア診療部長
荒川伸人
我が国では高齢化の進展に伴い、医療提供体制は「病院完結型」から「地域完結型」へと転換してきました。厚生労働省は、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で生活を継続できるよう、地域包括ケアシステムの構築を推進しています。その中で在宅医療は重要な役割を担っていますが、在宅療養中の患者さまは病状の急変や介護者の負担増加等により、一時的な入院が必要となる場合があります。
こうした状況に対応するためには、患者さまを日頃から支える、かかりつけ医の先生と病院との緊密な連携が不可欠です。
このような課題を背景として、厚生労働省は平成26年度診療報酬改定において在宅療養後方支援病院制度を創設しました。在宅療養後方支援病院は、あらかじめ登録された在宅療養患者さまについて、緊急時の入院受入れや必要な医療の提供を行うことで、在宅医療を支える後方支援機能を担っています。また、地域包括ケアシステムの推進においては、在宅医療とかかりつけ医を支える重要な役割を果たしています。
在宅療養後方支援病院は、かかりつけ医の先生を支える「地域のセーフティネット」として制度化されたものです。急変時の受入れやレスパイト入院への対応を通じて、患者さまとご家族が安心して在宅療養を継続できる環境を支えるとともに、地域包括ケアシステムを支える重要な役割が期待されています。
当センターでは、以前、在宅療養後方支援病院として地域住民が安心して在宅医療を受けられる体制の構築を目的に、Z登録制度を運用しておりました。今回、その制度や規約を刷新し、「N登録制度」と改めて、2026年より新たに開始いたしました。N登録制度は、地域住民が安心して在宅療養を継続できる体制を構築することを目的としています。在宅医療を実践している、あるいは今後取り組む医師および在宅歯科医療を担う歯科医師(以下「かかりつけ医」といいます)にN登録機関・N登録医として登録いただき、登録を希望する在宅療養患者さまをN登録患者として、その患者さまの情報を当センターと共有することで、切れ目のない在宅医療と入院支援を提供する仕組みです。
具体的なシステムは、図のとおりです。N登録していただいたかかりつけ医と、当センターは、N登録患者さまの心身の状態や医療・介護の方針を普段から定期的にかかりつけ医と情報共有を行います。そして、定期訪問時や、体調不良・急変時に、患者さまやご家族からかかりつけ医へ連絡・相談していただき、かかりつけ医が要入院と判断すれば、当センターの専用ホットラインを通じて、入院調整を行います。(ただし、急性心筋梗塞や脳梗塞で高度急性期医療が必要な場合は、かかりつけ医から三次医療機関へ対応依頼をお願いしています。)ホットラインは、平日日中は地域医療連携室が、夜間・休日は当直担当者が対応します。そして、入院により患者さまの体調が回復すれば、在宅療養に戻り、再びかかりつけ医による在宅医療が継続されます。

N登録制度は、かかりつけ医と当センターが顔の見える関係を築きながら、患者さまとご家族を支えるための連携基盤です。N登録患者さまは、事前に背景がわかっているため、当センターにおいても、スムーズに入院対応ができ、患者さまやご家族の負担軽減にもつながると考えています。
N登録は、始まったばかりです。今後も地域の医療・介護関係者の皆様と協力しながら、調査・研究を通じて制度のさらなる改善を図り、安心して在宅療養を続けられる地域づくりに努めてまいります。
N登録の登録に係る費用は発生しません。なお、診療や入院に際しては、通常の保険診療と同様に、各種公的医療保険が適用されます。
N登録制度への参加をご希望の医療機関や、本制度に関するご質問がございましたら、お気軽に当センター地域医療連携室(TEL 0562-88-3010)までお問い合わせください。
在宅医療の体制構築に係る指針(厚生労働省のページ)
※疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について、167ページから
長寿医療研究センター病院レター第123号をお届けいたします。
今回は、当センターが2026年より開始した「N登録制度」について、地域医療連携室の協力のもとご紹介いたしました。本制度は、在宅療養を支えるかかりつけ医の先生方と当センターが日頃から情報共有を行い、患者さまの症状悪化など入院が必要となった際に、円滑な入院受入れを行うことで、安心して在宅療養を継続できる体制の構築を目指すものです。

超高齢社会を迎え、在宅医療を支える地域連携の重要性はますます高まっています。当センターでは、N登録制度を通じて地域の医療・介護関係者の皆様との連携を推進し、安心して在宅療養を継続できる体制づくりに努めてまいります。在宅療養中の患者さまの入院調整や医療連携に関するご相談がございましたら、ぜひ当センター地域医療連携室までお問い合わせください。
病院長 松浦俊博