病院レター第113号 2024年11月1日
在宅医療・地域医療連携推進部長
三浦久幸
在宅医療・地域医療連携推進部では、トランジショナル・ケア等、モデル的活動・運営や探索的研究を行っています。
病院スタッフの退院前後訪問(トランジショナル・ケア)により、退院後早期の再入院を防ぐための活動をおこなっています。この活動を通じ、患者さんの再入院要因分析や地域との連携のあり方などを検討しています。活動のアウトカム評価も含めたプロジェクトとして行うのは全国的にも初めての試みで、この好事例などは関連学会等で情報発信しています。
愛知県内の病院職員、在宅医療関係者、介護関係者を対象に、入退院支援ツールの開発や地域包括ケアや地域包括ケアに関する教育などを運営しています。愛知県事業を受託し、『入退院支援ルール作成の手引き』も公表しています。
全国各地の臨床経験5年以内の若手医療職を対象に、オンラインによる意思決定支援技能訓練を試行運営しています。
新型コロナウイルス感染症によるパンデミック経験を基に、新たな感染症パンデミック時に備えた遠隔退院支援や退院支援アルゴリズムの構築に関する研究を行っています。
AMED研究により、在宅療養中の非がん性呼吸器疾患・呼吸器症状の緩和ケア指針やACP(アドバンス・ケア・プランニング)の指針を作成し、ホームページで公開。啓発を進めています。令和5年度には認知症の人の緩和ケア・ACP推進・啓発を目的とした「認知症支援ガイド」(日経BP)も出版しています。
地域医療連携室は現在、医師1名、看護師6名、医療社会事業専門員(ソーシャルワーカー)4名、事務員3名で構成されています。地域医療連携室の主な業務は、「退院支援」「病診連携予約業務」「医療福祉相談」になります。「退院支援」では、当センターは退院支援加算1の届け出をしていますので、看護師かMSWを病棟に専任で配置して退院支援を行っています。「病診連携予約業務」では、事務が開業医や病院からの外来予約の受付などを行っています。「医療福祉相談」では、MSWが患者さんやご家族などからの相談に応じ、必要に応じて、関係部署へ連絡調整しています。
退院支援の対象は、患者さんとそのご家族になりますが、そのニーズは多様化・複雑化してきています。そのため、一職種での支援には限界があり、多職種で連携、協働していく必要があります。スライドは院外、院内、院内外の多職種での連携、協働をイメージして図にしています。患者さんやご家族が安心して退院後の生活場所へ移行できるように、地域の皆様と協働で支援していけたらと考えておりますので、よろしくお願い致します。
病院と地域のシームレスな連携は、患者さんのみならずご家族の満足感やQOLを高めることが期待されます。ナショナルセンターの一部門として、当部ではさらに先進的な地域医療連携の試みを行っていく予定です。今後もどうかご助力をお願いいたします。
長寿医療研究センター病院レター第113号をお届けいたします。
在宅医療・地域医療連携推進部の活動の一つとして、ACP(アドバンスド・ケア・プランニング)の指針の作成が紹介されています。 ACPとは「意志決定能力を有する個人が、自分の価値観を確認し、重篤な疾患の意味や転帰について十分に考え、今後の治療やケアについての目標や意向を明確にし、これらを家族や医療従事者と話し合うことができるようにすること」とされています。簡単に言えば、 ACPはもしもの時に備えて患者さんがご家族や医療者と自分の望む医療やケアについて前もって話し合っておくものです。ただ、 ACPは一度やれば終わりというものではなく、患者さんの状態・置かれている状況に応じて 、回数を制限せずに行われるべきで、情報の提供の仕方、タイミング、話し合いの進め方など、複雑な問題が関わってきます。特に救急。集中治療領域において看取りを考慮しなければならない場合、 ACPを親族間で周知していなかったり、親族が存在しない場合などでは、医療者側の情報が不足して、患者さんの意志とは異なる医療が提供されてしまうことがあり、ご家族が「望んでもいない延命治療を行われた」と強く感じてしまうことが、患者さんの高齢化に伴って増えてきています。このため高齢者医療を専門とする当センターに限らず、一般の医療・介護従業者の方々にも ACPの興味を持っていただき、地域ネットなどを通じて広い範囲での情報共有がなされることが必要です。 ACPに対する一層の、ご理解をお願いいたします。
病院長 近藤和泉