病院レター第68号 2017年5月15日
医療情報室長 渡辺浩
今回の病院レターでは、医療情報室より診療情報提供に関する新たな試みについてお話しさせていただきます。
ご存知のように医学管理加算内で新たに、B009:検査画像情報提供加算が新しくなりました。この中で”注15”として以下のコメントがあります(表1)。また通知文書内で以下のコメントが公開されています(表2)
表1
表2
表3
これは通常の診療情報提供料250点に追加して算定されうるものです。これと対をなすB009-2電子的診療情報評価料も挙げられています(表3)。こちらは新規の算定条件です。
それぞれ注釈と通知が公開されています。
なかなかこの内容をすべて咀嚼して、コストの取れる電子的データの受け渡しができるケースは少ないかも知れません。全国的には既に構築済みの各種の地域ネットワークシステム内ではこれらの加算を取る動きも聞かれております。しかしながら、これらの地域連携システムは初期構築費や維持費も多大な負担が掛かると聞かれます。そもそもの捻出元をどこにゆだねるかという問題もあるようです。
浜松医科大学において、これらの大がかりな連携システムを用いずに電子的診療情報のやり取りをしている取り組みがあります。同大学病院は当方の前任の職場でもありますので、今回この取り組みをご紹介させていただきます。
今回の内容は今年の2月にインナービジョン誌に掲載された内容を参考にしています。
”木村通男、検査・画像情報提供加算の算定要件とIHE netPDI による標準的で安価な実装”
まず今回の加算の条件についてその概略を読み取ります。
診療情報の送り手施設側の算定できる「検査画像情報提供加算」と、提供された情報を参照して評価した「電子的診療情報評価料」の算定と分けてお話しします。
「送り手側」として必要なことは
「受け手側」に必要なことは
ことが大まかな条件と思われます。
図1 NetPDIシステムの概要
浜松医科大学医学部附属病院医療情報部教授の木村通男先生らが、上記の条件を満たす比較的安価で導入のしやすい仕組み「NetPDI」を開発しました(図1)。同病院で2016年10月から試験的に運用、同1月から本格稼働させています。これにより同病院では近隣の幾つかの施設とは「コスト算定のできる」電子的な診療情報のやり取りを行っています。
具体的なワークフロー(運用方法)ですが
このシステムの特徴は
この仕組みにご興味がある際は、各種の電子カルテや画像システムベンダー様や日本IHE協会にお尋ねご相談いただければと思います。あるいは渡辺にご連絡を頂いても詳細な説明やご提案ができると思います。
今回のようにオンラインで登録する場合も同じですが、 相手先の病院へ画像CDを送る時には画像CDはIHE PDI(Portable Data for Imaging)準拠のものをお送りください。
以前より「患者紹介等に付随する医用画像についての合意事項」という声明が関係学会の合同で発表されています。
この中で運用的な対応について以下の遵守を伝えています。
ご不明な点は、各医療機関放射線部担当もしくは各種画像機器のME担当者にお尋ねください。
実は当院においても読めない画像媒体をいただいてしまいますと、対応に遅れが出て患者様にもご迷惑がかかりますし、せっかく頂いたデータも活用できないで終わってしまいます。
誤解を避けるために申し上げますと、これらの施設間の画像CDやりとりの際の決め事は、あくまで「不特定の病院・診療所間での場合」を想定しています。「相手施設担当に直接媒体が渡り、担当者は承知で多量の画像DVDを受け取る場合」等は対象になりません。
当センターから画像CDを発行してお送りする場合にもご負担やご迷惑にならないよう注意を払っておりますのでよろしくご配慮いただきたいと思います。
長寿医療研究センター病院レター第68号をお届けいたします。
ITによる診療情報提供の仕組みは、病診連携の基本になりました。先生方と日頃から誤解のない情報交換をさせていただくためには、日進月歩のIT技術に遅れながらもついていく事が求められます。ただ、施設間差、個人差などがかなりの幅でありますので、まずは医用画像のCD1枚の確実にやり取りできることから信頼が育まれるものと思います。
病院長 原田敦