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在宅連携医療部の活動

病院レター第54号 2015年1月20日

在宅連携医療部長 三浦久幸

 これまで当センターでは2009年より在宅医療支援病棟を立ち上げ、かかりつけ医の先生方とともに、地域の在宅医療の活性化に向け、活動してきましたが、2012年度に当センターが厚生労働省から在宅関連の委託事業を受けるにあたり在宅連携医療部が新たに創部されました。
 本病院レターでは、開設後の在宅医療支援病棟の進捗状況と厚生労働省からの委託で行ってきた事業等の進捗についてご報告させて頂きます。

1.在宅医療支援病棟

1.在宅医療支援病棟の受け入れ体制

 当センターでは、厚生労働省の地域ケア体制の整備事業の一環で、2009年4月に在宅医療チームと病院スタッフのシームレスな連携を目指すモデル病棟(在宅医療支援病棟)を開設し、具体的な地域の在宅医療活性化に向けての活動を開始しました。「私たちは、高齢者の尊厳を大切にし、最期まで安心して生活ができる在宅医療を推進します」を理念に掲げ、病棟の運営においては、近隣の訪問診療を行っている診療所の医師を「登録医」、登録医の訪問診療を受けている方の中で当センター入院・通院歴のある方を「登録患者」とした登録制で、病棟運営を行っています。登録患者であれば、救急から看取り、レスパイト等、登録医の入院適応の判断に従い、入院を受け入れる体制としています。病棟は個室8室(有料)、2人床6室の計20床からなります。診療体制は登録医と入院中の病院主治医の二人主治医体制としていますが、開放病床は設けず、入院中は病院主治医が診療にあたります。総合病院の病棟という利点から、臓器別の専門的治療は必要に応じ受けられる体制としています。

2.病棟看護師の働き

図1 病棟プライマリーナースの働き

 もう一つの病棟運営の特徴としては、完全プライマリーの看護体制をしき、再入院しても、担当看護師は、原則代わらない体制をとっています。プライマリーナースは入院中に必要時自宅へ訪問し、早い段階から退院後の療養を想定した看護を提供します(図1)。入院中、ご家族へは、経管栄養や痰の吸引などの技術指導のみではなく、自宅で療養することや看取りについての精神的な支援を行います。自宅訪問は、入院中では得られない、多くの情報が得られるためですが、訪問時にはできるだけ、担当のケアマネジャーが同行し、医療と介護の情報共有を図るようにしています。また、退院後1週間程度を目安に患者さんのお宅へ電話連絡を行い、自ら行った入院中の看護の見直しを行っています。

3.開棟後の経過

図2 登録患者数・登録医数の推移

  開設時12人の登録医でスタートしましたが、その後、図2のように増加し、現在は101名の登録となっています。登録患者は75名から180名前後と増加しています。開棟後の登録患者は確かに増加してはいますが、登録患者のみでの病床利用率は20床の病棟の50~80%で推移していますので、この空床に対し、他の登録以外の高齢者の救急患者で利用しています。
 2009~2012年度の4年間のこの病棟への入院患者は、延べ1,008人(22-104歳;平均78.0歳±12.2歳、男:女=57:43)であり、平均入院日数は20.5日でした。入院患者の基礎疾患としては神経・筋疾患(24.7%)が最も多く、悪性腫瘍(24.5%)、脳血管疾患(17.7%)、認知症(10.7%)、呼吸器疾患(8.7%)が続いています。入院形態は時間外・休日の救急入院16.8%、時間内救急32.3%、復帰支援(他病棟からの転棟)11.2%、予約入院37.7%と、救急入院はほぼ半数を占めています。また再入院率は高く、2回以上入院している方は51.8%と半数を超えています。
 また、死亡退院患者を除く在宅復帰率は約91%で、自宅への復帰は極めてスムーズに行われています。4年間の病棟利用患者の退院後の在宅死亡率は平均34.5%で、愛知県平均(約12%)の約3倍高い割合です。

4.病診連携、多職種連携のためのICT利活用

 この病棟では、ナースを中心とした退院支援・ケア体制の充実、退院前訪問、退院前カンファレンスの実施により、病院スタッフと地域スタッフとの顔の見える関係が構築されつつあります。この一方で、登録医の退院前カンファレンスへの出席率は、カンファレンス実施の約3割と少なく、退院後の看取りを含めた、より深い議論をご家族も含め行おうとしても、なかなかできないのが実情です。このため、当病棟では、低価格で導入でき、他病棟への移動も可能なテレビ会議システムを導入し、カンファレンスの時に登録医にテレビ電話での参加をしていただくよう進めています。

5.在宅医療支援病棟の今後の役割

 急激に高齢化が進み社会構造が変化する中で「生活を支える」在宅医療への需要が大府市近隣でもさらに増加すると予想されています。この状況に対し、住まいをベースに医療、介護、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場で適切に提供できるような地域での体制(地域包括ケアシステム)の構築が求められています。現在、大府市も愛知県の在宅医療連携推進事業を受託し、在宅医療・介護連携を進めていますが、当病棟もこの地域の在宅医療のバックアップ機能をさらに充実することで、この地域の地域包括ケアの構築に寄与したいと考えております。

2.その他の活動

1.在宅医療連携拠点事業

 2012年度の厚生労働省の委託事業「在宅医療連携拠点事業」が全国105ヶ所で行われましたが、この事業の活動のサポート・進捗管理を行いました。この「在宅医療連携拠点事業」医療と介護の連携の促進をこのコアとしていますが、現在ではこの事業は、県が主導する「在宅医療連携推進事業」として全国500ヶ所以上で活動が展開されています。これらの事業の成功を受けて、2015年度からは介護保険下での地域支援事業としての位置づけで、各市町村で在宅医療・介護連携推進事業が開始されようとしています。2015年度以降、当部では特に愛知県を中心とした地域包括ケアの推進事業の、実質的な進捗管理を行う予定となっていますので、今後は愛知県活動のサポート役としてさらに努める所存です。

2.多職種協働による在宅チーム医療を担う人材育成事業

 当センターでは2012年度に在宅医療の全国的なリーダーを育成するための中央研修を行いましたが、2013年度からはこの研修を受けた各県のリーダーが、各々の地元で地域リーダー研修を行っています。この都道府県リーダーによる各地域での研修、もしくは地域での多職種研修開催の実績の集計では2012年度については少なくとも42都道府県で実施され、約7千人が受講しています。さらに2013年度については43都道府県で約3万人が受講しています。このように全国的な多職種協働研修の波が起こっていますが、当部では今後も全国で行われる多職種協働の研修事業に指導的に関わっていきたいと思います。

3.人生の最終段階における医療体制整備事業

 病院レターNo.53で西川医師より報告させて頂きましたが、現在、全国10病院で、当センターによる中央研修を受けた相談員が、意思決定支援を行っています。それぞれの活動の詳細につきましては、当部ホームページをご参照ください。

3.おわりに

 在宅連携医療部では、このように在宅医療支援病棟を中心とする診療活動のみでなく、地域在宅医療の活性化や人材育成事業等を並行して行っています。来年度以降、愛知県の在宅医療関連事業も本格化してきます。当部としましては、特に大府市など知多北部圏の在宅医療につきましては特に力を入れてサポートする所存です。これらの活動全て、かかりつけ医の先生方のご協力なくしては進みませんので、なにとぞご指導のほど宜しくお願いいたします。 


長寿医療研究センター病院レター第54号をお届けいたします。

 地域包括ケアシステムの核となる在宅医療に対する取組が紹介されました。ここまで発展できたのは、登録医を初めとする地域の先生方のご協力の賜物です。この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。

 これまでの成果は、診療報酬や医療制度に反映されています。たとえば、今年度診療報酬改訂で導入された「在宅療養後方支援病院の新設」では当センターが採用している在宅患者の登録制による入院制度が採用されています。また、当センターでも10月からオープンしました病院が地域を支援する「地域包括ケア病棟」新設の理念にも影響を与えるなどです。
 今後も、在宅連携医療部が2025年までの医療の需要と供給の急速な変化を先取りしながら、貢献し続けることが期待されます。

院長 原田敦