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国立長寿医療研究センター 在宅活動ガイド 2020

NCGG Home Exercise Program for Older People (NCGG-HEPOP) 2020

一般高齢者向け基本運動・活動編

第1.1版

緒言

新型コロナウイルスによる感染が広がる中、外出自粛が唱えられることにより、生活が不活発になり、心身機能が低下する高齢者が増えることが懸念されております。また、リハビリテーションをはじめとする医療サービスの提供も以前のようにできにくくなっています。このような状況においても、できるだけ健康な生活が送れるよう在宅活動ガイド 2020を発刊しました。このガイドの目的は、知らないうちに心身の機能が衰えないよう、個々の機能に応じて自宅で実践して頂ける運動や活動のメニューをわかりやすく紹介することです。同時に適切な栄養の摂り方についても紹介しています。本ガイドを是非ともお役立て頂き、いつまでも健康な生活を続けて頂くことを願っています。

令和2年5月吉日

国立長寿医療研究センター 理事長 荒井秀典

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    ※パンフレットはガイドを簡略化したものになります。

1. 背景と概要

普段、私たちは外出したり人と会ったりする中で自然と体や頭を動かしており、それが心身機能の維持につながっていますが、昨今の感染症の流行やその他の事情で、外出や社会交流を減らさざるを得ない時もあります。3密(密閉・密集・密接)を避けることは命を守るために大変重要ですが、外出を控え、社会とのつながりが絶たれる状況が長期的に続けば、心身に様々な悪影響を及ぼす危険性が高くなります。特に高齢の方にとっては、些細なストレスが大きな健康状態の悪化につながる「フレイル」の進行が懸念されます(図1)。

図1:フレイルの概念

「フレイル」の状態では、歩行困難や転倒・骨折、認知機能低下、新たな疾病の発症などの危険性が高くなることから、なるべく不活発な生活を避け、健康の維持に努めたいところです。これまで維持してきた心身機能のドミノ倒し(図2)を少しでも避けるためには、ご自宅でもできる限りの運動や活動を行うことが大切です。

図2:フレイルドミノ

この「国立長寿医療研究センター 在宅活動ガイド 2020 一般高齢者向け基本運動・活動編」は、外出を自粛したり社会活動を制限されたりしている方が、ご自宅にいる間に心身の機能が弱ってしまわないように、安全に適切な活動が行えるよう支援することを目的に作成された資料です。様々な種類の運動や活動を提示するだけでなく、フローチャートを用いてどのようなメニューがより適切であるかを判別できます。本ガイドを利用することで、皆様の心身機能が維持され、安心安全な暮らしを続けるための一助となりましたら幸いです。

2. HEPOPフローチャート

まず、次の①〜③のすべての質問にお答えいただき、矢印の流れに沿ってあなたに適した運動・活動パック(適正パック)を見つけましょう。①と③の両方が「はい」となるなど、複数の答えに該当し、複数の適正パックが選ばれる場合もあります。

以下の注意点を確認し、フローチャートにお進みください。

HEPOPフローチャート seshoku eiyo koguni balance tairyoku fukassei

適正パックは心身の状態によって変わる可能性があります。1ヶ月に1回程度、または心身の状態が変化した時にフローチャート式質問に答えなおし、その時々で、より適していると考えられる運動や活動を選んでください。完璧さや完成度にこだわる必要はありません。運動や活動に毎日挑戦することに意義がありますので、無理をせず、自分のペースで実施してください。複数のパックに該当するときは、全てのパックの中身を確認し、それぞれ、できそうなメニューから開始してください。パックの運動・活動メニューに進む前に、次ページからの「利用時の注意点と利用方法」や「運動強度」などをご確認ください。

3. 利用時の注意点と利用方法

まず、感染予防のために以下の基本的な対策をしっかり行うようにしましょう。

<感染予防のための基本的な対策>

  • 3密(密閉、密集、密接)の空間を作らない、不要不急の外出はしない
  • 人混みや不特定多数の集まる場所へは極力行かない
  • 適宜消毒用アルコールを使用し、外出から帰ったらうがいと手洗いを徹底する
  • 窓や扉を開けて、よく換気を行う

マスクに関する注意点は以下の通りです。

<マスクに関する注意点>

  • マスク着用時も、熱中症や脱水予防のために、時々水分補給は行いましょう
  • マスクをしていない他者とはできる限り2m以上の距離を保ちましょう
  • 誰とも会わず他者との距離が保てる場合はマスクを着用しなくても良いですが、様々な環境に備えてマスクは携帯しましょう
  • マスクの付け方や高齢者のためのコロナウイルス対応の注意点は次のURLからご覧いただけます(https://www.ncgg.go.jp/topics/20200420.html

これらの予防策を行いつつ、下記の点に注意して運動や活動を始めましょう。

<運動・活動全般に関する注意点>

  • 運動や活動は無理のない範囲で行ってください
  • 手すりや安定した台を持ち、転倒しないよう周囲の環境にも十分に注意してください
  • 運動時は息を止めずに自然な呼吸を心がけてください
  • 発熱など体調の悪いときは決して無理をせず、運動をお休みしてください
  • 全てのメニューを行う必要はありませんが、なるべく毎日、頭や体を動かしましょう
  • 今までなかった痛みや動悸、息苦しさ、その他の症状がみられた場合には、運動や活動を速やかに中止し、かかりつけ医などに相談してください

<運動前の準備>

  • 血圧を測定しましょう 降圧薬を内服中の方:高い方の血圧が100未満、または160以上なら、
    降圧薬を内服していない方:高い方の血圧が80未満、または160以上なら、
    無理な運動は控えましょう
  • 脈拍(安静時心拍)を測定しましょう
  • 脈拍が40拍/分未満、または90拍/分以上なら無理な運動は控えましょう
  • 不整脈・高血圧などの循環器疾患で治療中の方や動悸がある方は、この脈拍の範囲であっても運動前に医師にご相談ください

以下の疾患や症状をお持ちの方は、ご自身の健康状態やお薬の内容などについてかかりつけ医とご相談いただいた上で、その指導のもと、この「国立長寿医療研究センター 在宅活動ガイド 2020 一般高齢者向け基本運動・活動編」を使用していただくか、別の運動や活動を実施するかをご判断ください。

<運動や活動に注意が必要な方>

  • 心不全や心臓の術後など循環器疾患をお持ちの方
  • 神経・筋疾患をお持ちの方
  • 手足のしびれや運動麻痺(動かしにくさ)のある方
  • じっとしている時でも身体のふるえが強い方
  • めまいやふらつきがある方
  • 息苦しさ、息切れなどの症状や気管支ぜんそくをお持ちの方
  • 股関節や膝関節など関節の手術を受けた方
  • リウマチなどで関節の変形の強い方
  • 手足や腰、肩などに痛みのある方
  • 安静時でも上の血圧が180mmHg以上、または下の血圧が100mmHg以上の方
  • 降圧薬を内服中で、安静時の上の血圧が80mmHg未満の方
  • その他、医師から運動を制限されている方

5. 運動強度と身体活動量

運動や活動には、実施時間や回数の目安がありますが、心身の状態に合わせて“楽である~ややきつい”の範囲内で行って下さい。運動や活動は20分以上行うことが良いと考えられています。運動や活動は連続して20分以上、最大1時間程度を目安に実施して下さい。

体に対する運動の強さの影響は脈拍(心拍数)でも知ることができます。表1の年齢別の運動時目標心拍数を目安に運動や活動の実施時間・回数を調整して下さい(例:70歳で安静時の心拍数が60拍/分の方の場合、運動時の心拍数の目安は109拍/分となります)。

表1:目標となる年齢別運動時心拍数

運動の強さ(強度)はメッツ(METs)で表します。安静時を1とした時に、その運動や活動によって何倍のエネルギーを消費するかを示したもので、数字が大きいほど運動の強度が高くなります。特別な運動や活動だけでなく、日常生活や家事などを行うことも運動につながります。表2のメッツ表を参考に、日々の運動や活動の強さを振り返ってみて下さい。

表2:活動と運動の強度(メッツ)表

運動の強度を確認するだけでなく、エクササイズ(Ex)という単位を使えば、ご自身の身体活動量を計算することもできます。エクササイズはメッツに時間数をかけたもの(3メッツ未満の活動は除く)です。例えば、普通の平地歩行20分=3.0メッツ×20分/60分=1.0Ex、自転車30分=4.0メッツ×30分/60分=2.0Exのようになります。健康を保つために、週に10〜23Ex以上の身体活動を目指しましょう。可能なかぎり、3メッツ以上の運動や身体活動に取り組み、身体活動量の維持・向上を目指したいですが、心身機能が弱っている時には横になったまま、座ったままでもできる運動や活動もあります。なるべく寝たきりや座りきりを避け、どんな運動や活動でも良いので、毎日継続して体を動かすことが大切です。

6. おわりに

本ガイドでは、外出や活動の機会が減った高齢者の方を対象に、運動、認知機能、栄養に焦点を当て、心身の状態に適した活動を自宅で安全に行えるよう、多様なメニューを紹介しました。高齢であることは感染症や社会生活の制限などの影響を受けやすい状態であり、フレイルが進行しやすい状況であるということを意識し、適切な睡眠、適切な栄養、適切な運動を通じて心身機能の回復力を高めるようにしましょう。また感染対策を行ったうえで屋外での活動を行うことにより、陽の光に当たりビタミンDの活性化を促進するとともに、心身のリズムを整えることも大切です。日々の生活の中で本ガイドを活用しながら、可能な限り心と体の健康を維持し、すべての方が、今まで同様、社会で活躍し続けることを願っています。

7. お問い合わせ先

<国立長寿医療研究センター 在宅活動ガイド 2020 一般高齢者向け基本運動・活動編>に関するお問い合わせは、以下のメールアドレスにお願いします。

電話でのお問い合わせには対応できません。お問い合わせは以下のアドレス宛に電子メールでお願いいたします。ただ、全てのお問い合わせには対応できない可能性がありますとともに、お返事に時間がかかる場合がありますのでご了承下さい。

お問い合わせ先 E-mailアドレス:rehab@ncgg.go.jp


NCGG-HEPOP作成委員会

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

大沢愛子(委員長)、近藤和泉、佐竹昭介、川嶋修司、尾崎健一、島田裕之、木下かほり、伊藤直樹、谷本正智、植田郁恵、川村皓生、牧賢一郎、神谷正樹、佐藤健二、鈴村彰太、小島由紀子、村田璃聖、和田真弓、鷲見幸彦、荒井秀典

金城大学

前島伸一郎