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再生歯科医療研究室

 私たち、再生歯科医療研究室では、虫歯が深くて神経(歯髄)まで到達した歯、あるいはすでに歯髄を除去して根の下に膿がたまっている歯の歯髄を元通りに回復させ、歯を長持ちさせる歯髄再生治療法を研究しています。
 現在、骨の中の骨髄やその他、体中の多くの組織には幹細胞(色々な種類の細胞に成長できる基になる細胞)が存在することが知られ、その幹細胞を移植する再生療法が注目されています。歯の中の歯髄組織の中には、特に、血管と神経を作るのに有利な幹細胞が多く含まれており、噛みあわせに関係していない不用歯(親知らずや矯正治療で便宜的に抜く予定の歯など)から歯髄幹細胞を取り出すことができます。近年、私たちは、歯髄を取った後の根の中(根管)に患者自身の不用歯から取り出した歯髄幹細胞を移植して歯の歯髄を回復させる歯髄再生治療法に関して、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に基づく厚生労働大臣の承認を得て、平成25年4月からこの臨床研究を実施しました。その結果、安全性に問題ないことを確認し、また、5例中4例で、治療後1か月以内に歯の神経の感覚が戻り、この治療法が有効である可能性が示唆されました。

目指す成果の社会的意義・有用性

 再生歯科医療研究室について

 再生歯科医療研究室では、「新しい虫歯・神経の治療法の開発」を行なっています。
 この研究は、平成20年12月、スーパー特区として、先端医療の開発・実用化を推進する国家プロジェクト24件のひとつに採択されました。
 その技術のひとつは「深い虫歯治療」の場合、象牙細管類似の穴加工焼成体を用いて細管象牙質再生、つまり元通りの歯(象牙質)にもどすものです。

 次に、「歯髄の一部分が傷害を受けている歯髄炎治療」の場合、一種の酵素であるMMP3を歯髄面に塗って、炎症を鎮め、歯髄さらには象牙質を再生させる技術です。

 3番目に「歯髄炎がひどくて歯髄を全部とらなければならない抜髄治療」の場合、あるいは「根の下に膿が溜まる感染根管治療」の場合、根の中(根管)を清掃・消毒した後、『自分の歯髄幹細胞』と『細胞遊走因子』を『アテロコラーゲン』とともに移植して歯髄を再生させる技術です。根管内には、短期間に血管、神経および歯髄が再生され、さらには上部に象牙質の蓋が再生され、生きた歯に戻すことができます。

 4番目に、ナノバブル薬剤導入法により、感染根管歯の根の奥深くに侵入した細菌を短時間で完全に死滅させることができることが明らかになりつつあります。現在、ヒトに応用できるよう、ナノバブル発生装置の開発を進めています。

 特に、3番目の歯髄再生技術に関しては、国家の総合科学技術会議が設定する重要課題として平成22年から5年間、科学技術戦略推進費の「健康研究成果実用化加速のための研究開発システム関連の隘路解消を支援するプログラム」により、臨床研究の安全性・有効性評価のための専門家のご支援を受けました。平成24年11月には厚生労働大臣のヒト幹細胞臨床研究実施承認を得て、平成25年4月から臨床研究を5例実施し、安全性が確認され、有効性が示唆されました。
 これらの技術により、虫歯を削る量を最小限に留め、歯髄、象牙質の機能を回復させることができます。
 また、お口の中から細菌が侵入する隙間ができず、再び虫歯になることを予防するメカニズムも保持しています。よって、歯を長持ちさせることに役立つ画期的な技術と思われます。細管象牙質を大量にしかも短期間に作る技術や、歯髄炎治療薬、さらには歯髄の完全な再生は今まで報告がないことから、国際的にも優位性を保っています。 

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研究室より

国立長寿医療研究センターは、高齢者の心と体の自立を促進し、健康長寿社会の構築に貢献することを使命としており、病院と研究所が連携して高い倫理性に基づく良質な医療と研究を行っております。
再生歯科医療研究室ではその理念に基づき、歯の保存・延命化を目指す革新的歯科医療とその開発研究を行なっております。
具体的には、歯髄炎あるいは根尖性歯周炎において、「世界初の新規歯髄・象牙質再生治療法により歯を元通りにして機能を完全に回復させること」を目的とした臨床研究を5例行ない、安全性を確認し、有効性も示唆されました。この治療法は、中・高齢者にも十分適用することができ、高齢者の歯の健康状態を向上し、維持することによって、咀嚼・コミュニケーション機能維持、認知症予防、運動機能維持などにつながり、高齢者の生活機能の向上に貢献できると考えております。
これらの目標を実現すべく企業の協力を得て、できるだけ早く、全国民の皆様方に歯科再生医療をお届けできるように、以下の目標を掲げ、研究部の職員が一丸となり日々邁進しております。

  • 歯科再生医療により歯内治療(根の治療)を革新し、一般化・普及に拠点を形成します。
  • 歯の延命化と8020運動※※達成者の増加による健康長寿社会の実現を目指します。
  • 歯髄幹細胞による血管・神経等組織再生治療による健康長寿社会の実現を目指します。

 

注釈

  • 歯髄炎あるいは根尖性歯周炎
    歯髄炎とは、歯の内部にある歯髄[歯の神経]がう蝕、外傷などの刺激により炎症を起こしている状態です。歯髄が壊死すると、根の下にまで炎症がおよび、根尖性歯周炎に進行します。この際には感染根管治療を行うことになります。歯髄炎の症状は、一過性にツーンと水に冷みたり、ものを食べたあとズーンときたり、熱いものを食べたら急にズキン・ズキンと持続的に痛くなったりします。根尖性歯周炎では、噛んだり叩くと痛かったり、歯がういた感じで持続性の鈍い痛みがあります。歯ぐきが腫れ、さらに進むと痛みを伴って唇や頬まで腫れてきて、歯ぐきに膿がたまり時々つぶれて膿が出るようになることもあります。
  • ※※8020運動(はちまるにまるうんどう)
    日本において展開されている歯科に関する運動で、満80歳で20本以上の歯を残そうとするのが主目的としています。厚生労働省や日本歯科医師会により推進されています。20本以上の歯を持つ高齢者はそれ未満の人に比べ、活動的で、寝たきりとなることも少ないなど多くの報告がされています。80歳で20本の歯が残っている人の割合は現在約38%であり、厚生労働省は、10年後には50%まで引き上げたいとしています。

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研究業績

2024年

  1. Iohara K, Tominaga M, Watanabe H, Nakashima M. Periapical bacterial disinfection is critical for dental pulp regenerative cell therapy in apical periodontitis in dogs. Stem Cell Res Ther. 2024 Jan 17; 15(1):17. doi: 10.1186/s13287-023-03628-6

  2. Sakatoku S, Hayashi Y, Futenma T, Sugita Y, Ishizaka R, Nawa H, and Iohara K. Periostin Is a Candidate Regulator of the Host Microenvironment in Regeneration of Pulp and Dentin Complex and Periodontal Ligament in Transplantation with Stem Cell-Conditioned Medium. Stem Cells International. 2024 Feb 23;2024:7685280. doi: 10.1155/2024/7685280. eCollection 2024.PMID: 38435089

2023年

  1. Zayed MH, Iohara K.Age Related Senescence, Apoptosis, and Inflammation Profiles in Periodontal Ligament Cells from Canine Teeth. Curr Mol Med. 2022 May 20. doi: 10.2174/1566524022666220520124630.

  2. Nakashima M, Fukuyama F, Iohara K. Pulp Regenerative Cell Therapy for Mature Molars: A Report of 2 Cases. J Endod. 2022 Aug 5;S0099-2399(22)00510-6. doi: 10.1016/j.joen.2022.07.010. Online ahead of print.

  3. Ziauddin SM, Nakashima M, Watanabe H, Tominaga M, Iohara K. Biological characteristics and pulp regeneration potential of stem cells from canine deciduous teeth compared with those of permanent teeth. Stem Cell Research & Therapy. 2022 Sep 2;13(1):439. doi: 10.1186/s13287-022-03124-3.

2021年

  1. ​Zayed MH,Iohara K,Watanabe H,Ishikawa M,Tominaga M,Nakashima M Characterization of stable hypoxia-preconditioned dental pulp stem cells compared with mobilized dental pulp stem cells for application for pulp regenerative therapy. Stem Cell Res Ther, 12(1):302, 2021

2020年

  1. Nakahima M,Iohara K,Zayed M Pulp Regeneration: Current Approaches, Challenges, and Novel Rejuvenating Strategies for an Aging Population. J Endodontics. 2020;46(9S):S135-S142.

  2. 庵原耕一郎、中島美砂子 難治性根尖性歯周病における薬剤含有ナノバブル水による根管内除菌効果の検討 日本歯科保存学雑誌. 63(1):73-82, 2020.

  3. Iohara K,Zayed MH,Takei M,Watanabe H,Nakahima M Treatment of Pulpectomized Teeth with Trypsin prior to Transplantation of Mobilized Dental Pulp Stem Cells Enhances Pulp Regeneration in Aged Dogs. Frontiers Bioengineering. 14 August 2020 .doi.org/10.3389/fbioe.2020.00983

  4. Zayed MH,Iohara K,Nakashima M Antagonist of CCR3 stimulates pulp regeneration by transplantation of mobilized dental pulp stem cells in aged dog teeth. Scientific Reports. 10, Article number: 8631 (2020)

  5. Abdel Azim,Iohara K anobubble-Enhanced Antimicrobial Agents: A Promising approach For Regenerative Endodontics. The Journal of Endodontics. 2020 Sep;46(9):1248-1255. doi: 10.1016/j.joen.2020.06.002. Epub 2020 Jun 15.

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受賞

2020年

  1. 庵原耕一郎、中島美砂子
    難治性根尖性性歯周炎における抗菌ナノパーティクル含有ナノバブル水による根管内除菌効果の検討
    日本歯科保存学雑誌63巻 歯内治療法学分野 優秀論文賞(松風優秀論文賞)

2018年

  1. 庵原耕一郎、中島美砂子
    Trypsin前処理による高齢の歯髄再生促進治療法の開発
    2018年6月15日 第147回日本歯科保存学会秋季学術大会 カボデンタル優秀ポスター賞

2017年

  1. Iohara K,Fujita M,Ariji Y,Yoshikawa M,Watanabe H,Takashima A,Nakashima M
    Assessment of pulp regeneration induced by stem cell therapy by Magnetic Resonance Imaging (MRI).
    The 2017 Journal of Endodontics Awards Apr. 26, 2017.

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