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すこやかな高齢期をめざして ~ワンポイントアドバイス~

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良質なたんぱく質とは? 【低栄養予防】

老化疫学研究部 Department of Epidemiology of Aging

「良質なたんぱく質を取るように心がけましょう。」とよく耳にしませんか?でも、「良質なたんぱく質」って何でしょうか?

たんぱく質とは、私たちの生命を維持するために不可欠なものです。たんぱく質を構成しているのは、わずか20種類のアミノ酸です。たんぱく質の種類によって、そのアミノ酸の量や配列(並び順)、集合体の大きさや形が異なります。

「良質なたんぱく質」というのは、アミノ酸がバランス良く含まれているたんぱく質のことです。アミノ酸の含有バランス(アミノ酸スコアといいます)が良いものは、生体内での利用効率が良く、余分な老廃物となるものが少ないので、「良質なたんぱく質」と呼ばれます。良質なたんぱく質を含む食品は、肉類、魚介類、牛乳・乳製品、卵類や大豆・大豆製品などであり、豆類以外はほとんどが動物性食品です。植物性食品である穀類や野菜類にもたんぱく質は含まれますが、例えば重要なアミノ酸が少ないなど、アミノ酸のバランスがよくありません。このような場合、たんぱく質の利用効率はそのアミノ酸の量に合わせて下がってしまいます。

高齢期になると動物性食品由来のたんぱく質は、「脂っこい」、「固い」、「調理が面倒」などの理由で敬遠されがちです。植物性食品からもたんぱく質が摂れるからいいのでは?と思われるかもしれませんが、利用効率が悪く、必要量を満たすことができません。さらに最近では、植物性食品に由来するたんぱく質と動物性食品に由来するたんぱく質を比べた場合、アミノ酸の含有バランスだけでなく、生体に対する機能の点でも違いがあることがわかってきました。

ここで「プロリン」というアミノ酸についてのNILS-LSA(ニルス・エルエス・エー)の研究をご紹介します。プロリンは動物性食品と植物性食品の両方に含まれているアミノ酸ですが、その摂取量が、知的な能力にどのような影響を及ぼしているか調べました。

知的な能力のうち、どれくらい知識を持っているか、知識を蓄えることができるかという「知識力」得点の10年間の変化に着目しました。下の図をご覧ください。40代から60代では、動物性食品由来のプロリンをより多く摂取している人(多摂取群)は、摂取が少ない人(少摂取群)と比べて、「知識力」の得点がより上昇しています。一方、ここには示していませんが、植物性食品由来のプロリンの摂取量と「知識」得点には関連がありませんでした。このことから、プロリンの中でも、特に動物性食品由来のプロリンが、知的な能力に望ましい影響を与えていたと考えられます。

40代から70代の年齢別に、動物性プロリン摂取量が多いグループと少ないグループで、研究開始から10年後の知識力の得点がどのように変化したかを示した図。

プロリンという同じアミノ酸なのに、どうして影響が異なるのでしょうか?それにはペプチド(アミノ酸が数個結合したもの)が関わっていると考えられます。つまり、動物性由来のプロリンと植物性由来のプロリンでは、アミノ酸の配列(並び順)が違うためです。最近では、牛乳や魚に含まれる動物性のたんぱく質を酵素で分解したものから、血圧や血糖値を下げる作用をもつペプチドが見つかっています。

このように、同じアミノ酸を含んでいても、動物性食品由来か植物性食品由来かで異なる機能を持っていることがありますので、いろいろな食品をバランス良く食べることが大切です。

大豆などの植物性のたんぱく質に加えて、肉類、魚介類、乳製品、卵類などの動物性のたんぱく質も、バランス良く組み合わせて食べましょう

 

<コラム担当:加藤 友紀>

*このコラムの一部は、以下の研究成果として発表しています*
加藤友紀,大塚 礼,西田裕紀子,丹下智香子,今井具子,安藤富士子,下方浩史.
地域在住中高年者のプロリン摂取量が知能に及ぼす影響に関する長期縦断疫学研究.
日本未病システム学会雑誌、20 (1)、99-104、2014.

「良質なたんぱく質とは?」の続編もぜひご覧ください。

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