認知症予防を目指した多因子介入によるランダム化比較研究

Japan-multimodal intervention trial for prevention of dementia

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ご挨拶

 J-MINTのホームページへようこそ。私はJ-MINTの研究代表者を務めております国立長寿医療研究センターの荒井秀典です。

 

 高齢化とともに認知症の人の数も増加し、認知症は要介護に至る原因の第一位となっています。認知症に対する政策については、平成27年1月の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」策定に引き続き、令和元年6月には「認知症施策推進大綱」がとりまとめられました。すなわち、世界一の長寿国である我が国から社会全体として認知症への取り組みを行うことを世界に向けて発信するとともに、認知症の人ができる限り地域で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指し、「共生」と「予防」を車の両輪として施策を推進することとなりました。

 

 この中で予防については、糖尿病、高血圧、肥満などが認知症の危険因子であることが明らかとなるとともに、ヨーロッパで行われたFINGER研究によって、運動や栄養改善に加えて、認知訓練を行うといった多因子介入により、認知機能低下のスピードが緩やかになることが示されました。我が国でも、認知症への予防効果を検証するために我が国独自の取り組みを加えた介入研究であるJ-MINT研究を2019年に国立長寿医療研究センターを中心に開始することになりました。本研究は、名古屋大学、名古屋市立大学、藤田医科大学、東京都健康長寿医療センターとともに実施する多施設共同研究です。

ご挨拶

 

 本研究の目的は、認知症のリスクをもつ高齢者500名を対象として複合的認知症予防プログラム(生活習慣病管理、運動、栄養、認知トレーニングの複合介入)の認知機能向上や認知機能低下の抑制に対する有効性をランダム化比較試験で検証することです。4年間の研究期間中に複合的認知症予防プログラムの認知機能低下抑制効果を明らかにするとともに、民間企業と連携して研究を行うことで新たなサービスの創出、さらに既存事業が認知症予防サービスとして適正かどうかの認証基準の作成、理想的なサービスの利用マニュアルの作成を行い、広く展開できる認知症予防サービスの仕組みを構築する予定です。また、本研究はバイオマーカー、オミックス解析や脳画像解析を実施することで認知機能低下抑制のメカニズムに迫ることができると考えています。

 

 

 本研究の成果は、認知症ハイリスクの高齢者に対する標準的アプローチの確立だけでなく、認知症予防に向けた社会実装の端緒となるものと考えています。さらに本成果は高齢者の健康寿命延伸、生活の質改善に寄与するとともに、認知症推進施策大綱の実現、医療水準の向上、医療経済にも寄与することが期待されます。どうかJ-MINT研究への一層のご支援をお願い致します。

令和3年3月吉日
国立長寿医療研究センター 理事長
J-MINT研究代表者
荒井秀典