新型コロナウイルス感染症への対応をきっかけに、オンライン会議システム(以下、「オンライン」)が全国的に普及し、国も行政サービスの電子化を進めている。そこで、本研究事業では全国の自治体を対象に、オンラインを活用した運営指導・集団指導に関する実態調査と具体的事例の把握、聞き取り調査を行い、現状を把握するとともに、オンラインを活用した運営指導・集団指導の在り方について検討を行った。
有識者、自治体職員、介護保険サービス事業所役職員からなる「オンライン会議システム等を活用した介護保険施設等への運営指導等の在り方に関する調査研究検討委員会」を設置し、東京駅近郊の会議室ならびにZoomを併用したハイブリッド形式にて委員会を4回開催した。
全国の都道府県、市区町村、広域連合を対象に、質問紙による調査を実施し、事業所数の把握や運営指導の実施数、運営指導、集団指導の実施状況と実施方法(対面、オンライン等)について確認した。
オンライン等を活用した運営指導を行っている自治体と運営指導を受けた事業所に対し、その方法や工夫、課題等について確認すること、またオンラインを活用した運営指導を実施していない自治体に対し、導入の課題について確認することを目的に、聞き取り調査を実施した。なお、2)の質問紙調査において、聞き取り調査への協力の有無を確認した。
本研究事業の結果報告を兼ね、東京駅近郊の会議室での集合形式、ならびにウェビナー形式にて報告会を開催した。
令和6年10月から11月にかけ、専用のウェブサイトによる質問紙調査を行った。また、ウェブでの回答が難しい自治体にはメールまたはファックスにて回答を依頼した。
全国の自治体・広域連合より808件の回答があり、令和4年度の運営指導において、617件(76.3%)が事業所・施設を訪問して実施しているのに対し、オンラインを活用した自治体は19件(2.3%)であった。運営指導の実施方法として望ましいと考えている方法を複数回答で確認したところ、273件(33.8%)が「対面とオンラインを活用してのハイブリッド」と回答した。
集団指導については、実施した自治体は426件(52.7%)にとどまり、特に一般市の実施率は61.8%、町村の実施率は22.6%であった。実施した自治体のうち、集合やウェブ会議、ウェビナー、ハイブリッドでの開催をした自治体は261件で、オンデマンドで配信を行った自治体は116件であった。集団指導の実施方法として自治体が望ましいと考えている方法について複数回答で確認したところ、集合開催が最も多く481件であったが、ウェブ 会議又はウェビナー配信(42.8%)、ハイブリッド開催(38.4%)、オンデマンド配信(32.9%)と、オンライン活用の関心の高さがみられた。
1)の全国調査に回答のあった自治体のうち、オンラインを活用した運営指導を行っている自治体10か所と実施していない自治体13か所、ならびにオンラインを活用した運営指導を受けた事業所5か所に対し聞き取り調査を行った。
オンラインを活用した運営指導を実施した自治体からは、移動時間の短縮や感染症や繰り返しの延期への対策、また重要事項を事業所に確実に伝達できる点などが利点として挙げられた一方、文書確認の難しさや個人情報の取り扱いについての懸念が報告された。また、オンラインを活用した運営指導を受けた事業所からは、感染症対策として良かったという声の他、対面の時に比べて拘束時間が少ないことや確認事項等の流れがわかったという報告があった一方、職員の中にはPC操作に慣れていない者もいることが懸念として報告された。
オンラインを活用した運営指導を実施したことのない自治体からは、文書の確認や個人情報の取扱い等についての懸念が多く報告されたほか、通所系や施設・居住系サービスにおける設備の確認や利用者の様子の確認が行えないことが課題として報告された。また、集団指導ではオンラインを活用した自治体も複数あった。
全国調査の結果報告と厚生労働省の講演の他、自治体からオンラインを活用した運営指導、集団指導の実施事例の報告と、オンラインを活用した運営指導を受けた事業所から報告を頂いた。会場参加者は2名と少なかったが、ウェビナー配信には196自治体が参加し盛況であった。
本事業を通じ、全国の自治体におけるオンライン会議システムを活用した運営指導・集団指導の実施状況や工夫、課題等の把握の他、具体的事例を収集することができた。オンライン会議システムを活用した運営指導は実施件数が少なく、確認文書の受け取り方、確認方法、対応する職員数等個別性が高いことに加え、個人情報が含まれる文書の取り扱いや現地確認をどうするかなど、検討すべき事項が多い。一方、集団指導はオンライン会議システムの活用になじみやすく、今後多くの自治体で取り入れられることが想定される。
運営指導・集団指導を適切に行うことは、介護保険施設等の運営支援において重要であり、オンライン会議システムというツールが増えたことにより、さらに効率的に実施できるよう、今後も検討を進めたい。
本研究事業の目的は、アンケート・ヒアリング調査による通いの場の実施状況やプロセス評価、通いの場の有効性検証に基づいてgood practiceを抽出し、フレイル予防に効果的な手法や評価方法を提案することであった。
東海北陸6県(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県、石川県、富山県)の194自治体を対象に、通いの場の事業に関するプロセス(PDCAサイクル)をアンケート調査によって評価した。PDCAサイクルはACT-RECIPE(以下、アクトレシピ)を用いて、通いの場の1)理解度、2)調査・計画状況、3)体制・連携状況、4)実施状況、5)評価状況、6)調整・改善状況についてスコアリングし、順位付けすることでgood practiceと見なせる市町村を特定した。
通いの場参加者と非参加者の予後(フレイル発症、要介護認定)を比較検証可能な多市町村の縦断データ(*JAGES:Japan Gerontological Evaluation Study、日本老年学的評価研究)を解析し、通いの場の有効性を検証した。また、多市町村データの強みを活かし、市町村間比較も行い、縦断データよりgood practiceである市町村を抽出した。抽出した市町村の具体的な取組を事業3において聴取した。
事業1および事業2の結果に基づいて、good practiceを展開している自治体を抽出し、アクトレシピを用いて通いの場事業の具体的な取り組みを聴取した。対象自治体の選定は、アンケート調査に回答した自治体(N=127)のうち、ヒアリング調査に同意した自治体(n=28)から選択した。アンケート調査のアクトレシピ※の総合得点を用いて、3つの可住地人口密度区分(①4000人/km2以上、②1000から3999人/km2、③1000人/km2)から、各区分で最も得点が高かった3市(1.名古屋市、2.知多市、3.伊豆市)を、ヒアリング対象自治体として選出した)。加えて、JAGESの調査から、通いの場の参加割合が高い自治体をヒアリング対象候補とし、東浦町、大府市、武豊町を選出した。そのうち、ヒアリング調査に同意のあった東浦町(可住地人口密度:1000から3999人/km2)を対象とした。
事業1の結果、多くの自治体が、通いの場の理解度(70/100点以上)や通いの場の実施状況(概ね60/100点以上)が良好であった一方で、通いの場の評価状況はスコアが低い傾向が見られた。総合得点で順位付けすることで、効果的に実施できている自治体を抽出した。
その後、総合得点の上位と下位の10自治体を比較した時、効果的な事業が行えていない自治体では、通いの場の評価、および調整・改善に関わる項目の点数がとくに低かった。これは上位スコアの自治体でも、この2つの項目が他の項目に比べて低いため、どの自治体も評価と調整・改善に関する領域の強化を行う必要があることが明らかとなった。
事業2の結果、フレイルの発症や新規要介護認定(要介護2以上)、また健康寿命喪失(要介護2以上および死亡)に対して、通いの場の参加者において予防効果が期待できることが確認され、通いの場への参加頻度が高いほど、また、その効果は後期高齢者において、より顕著に見られた。また、高齢者全般に対しては週1回以上の参加が、後期高齢者では月に1回以上の参加が勧められる結果を得た。以上の結果から、通いの場参加により健康寿命を喪失しにくくなる可能性が明らかとなり、そのメカニズムとして、参加によるフレイルリスクの低下が寄与することが示唆された。さらに、日常生活動作、運動機能、閉じこもり、抑うつリスクの低下といった側面が通いの場参加により持たされている可能性も示された。
事業3の結果、効果的な事業を推進している自治体は、1.専門職と連携し、介護予防や通いの場の重要性を地域に伝える取り組みを積極的に行っている2.参加者の興味やニーズに答える通いの場を計画し、運営を支援している3.通いの場の情報発信や開設・運営に関する情報提供を発信している、の3つが共通していた。一方で、通いの場のリーダーやメンバーの担い手が不足していることが共通の課題として挙げられていた。名古屋市は、スマートフォン向けアプリと連動した取り組みなど、介護予防に関するコンテンツが非常に充実しているようであった。反面、コミュニティの希薄化による、住民への情報の提供および周知に課題があるようあった。知多市では、通いの場の数は過不足なく、医学的評価を含むマネジメントを基盤に、ニーズに応じた取り組みをする工夫があった。課題として、新たなコンテンツの創出が聴取された。伊豆市では、地元企業と連携した多様な取り組みを展開していた。反面、歩いて行ける範囲に集える場所が少ないなどの問題を抱えているようであった。
また、通いの場の参加割合の高さで選出された東浦町は、住民と協力することによって通いの場は基本的に歩いていける箇所に構築できており、行政が実施している各種健康づくり教室などから住民主体の通いの場(同好会)の運営にシフト出来るように積極的な支援をしていることが特徴的であった。