久しぶりの投稿になった今回は、最近承認されたペースメーカーの手技の一つであるCSP(ConductionSystemPacing)について書かせて頂きます。CSPといってもHis束ではなく左脚領域ペーシング(LBBAP)についてです。LBBAPを行うための材料は承認されたといっても、その手術に使用する物品については目新しい物はないように思います。しかし、手技的にはこれまでとは少し異なった部分もありますし 、より確実・安全なペーシング治療が実現できる事が重要です。そこで今回は「これができたら便利だな」と思う部材を自作してみました。その名も「回転コネクタ付き接続ケーブル(ペーシング電極用)」。これを作製した意図は以下の通りです。
確実なLBBAPを実施するためには、PSA(PacingSysytemAnalizer)中にリアルタイムで心電図波形や抵抗値、COIを把握する事が重要とされています。しかし、LBBAPに使用するペーシングリードはボディターンタイプのスクリュー電極です。つまり心筋へのスクリューインを行うためにはリード本体を回転せねばならず、その回転はPSAやポリグラフとの延長ケーブルも一緒に回転させる事となり手技には必要のない部分に意図せぬテンションが発生してしまいます。場合によってはテストペーシングを一時的に中断する必要があるかもしれません。テストペーシングを継続するためには不要なテンションが発生しない様にリードと延長ケーブルの接続に絶えず注意を払いながら行うといった手間を要します。理想はリードの接続等に気を取られる事なく、安定したテストペーシングを継続したままリアルタイムに抵抗値やCOI、波形などどを注視できる環境を整える事です。医師にとっては装置側の余計なリードテンションを気にせず、心筋側のスクリューインの感覚だけをとらえる事ができますのでより確実で安全な手技が可能となります。さらにボディスクリュー操作が行いやすい形状であればなおよいと思います(細いリードをもって回転させるのは意外と難しいです・・・)。このような理想を叶えるべく自作したリードがこちらです。
自作したケーブルの全体像
自作したケーブルの回転部分のアップ画像
これは、リード側のコネクタに回転機構を設けています。そして他方はPSAとポリグラフが並列に接続できるよう、先端をDIN(ポリグラフ接続用(ジャンパー機能有))とワニ口(PSA接続用)に分岐してあります。特筆すべきは回転部分が非常にスムーズに動く事です。このスムーズな回転によりクリップ部分を把持してストレスなくリードを回転させる事ができます。
これ以外にも、当センターの臨床工学部は「ない物は作る精神」で、さまざまな治具を作成しています。たとえば「装置(人工呼吸器等)アラームとナースコール連動ケーブル」「神経筋疾患の患者さんの動く部位に合わせたセンサー」「アンギオ装置のベッドフレームに固定可能な超音波プローブ接続治具」「加温加湿器センサー断線検出用点検治具」などです。どれも現場のニーズに合わせて作っておりますので日々活躍しています。
今後もより安全で優しい医療を提供すべく日々努力させて頂きます。
臨床工学部
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