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心電図モニター表示の多様化。Spike On T!?

病院内で使用されている生体情報モニターは心電図を始めとして動脈血酸素分圧や血圧等、生命活動に必要な各種パラメータを24時間体制でモニタリングし、何かしらの異常が発生した場合に即座に対応できる体制が整っています。このような装置で常に問題となるのがアラームです。不要なアラームが多いためにアラーム音に対して鈍感になってしまう・・・。その結果、本当に必要なアラームが発生しても「どうせ、いつものアラーム」という認識となり対応が遅れてしまう。あってはならない事ですが実際には病院あるあるの一つかもしれません。今回は「できる限り質の高いモニター管理」という目的に搭載されている機能でありながら実際には「取扱説明書とは異なる動き」をさせてしまい判断を誤らせる可能性のある?ペースメーカーの機能について書かせて頂きます。

まずは生体情報モニターに搭載されたその機能から書かせて頂きます。それは、ペースメーカーを植え込まれた⽅や体外式ペースメーキングをされている⽅々に対して設定するものです。特に最近のペースメーカーはさまざまな機能が搭載されており、日常的にモニター監視をしている看護師さんでは判断の付かない動きをする事があります。「DDD」や「VVI」などの単純な動きだけであればよいのですが、そうも言ってられないのが昨今のデバイス・・・。また、リードのDislodgementや断線が原因となるPacingFailureやOverSensing、UnderSensingは早急な対応を必要としますので単純な動きの中にも注意しなければならない事は数多く存在します。そのために一役買うのが、微弱な電位であるペーシング刺激を検出する「ペースメーカー検出機能」と、それを誰もが分かりやすいようにあえて心電図上に表示する「疑似ペーシング表示機能」です。この機能をうまく活用する事でPacingFailureやOversensing、あるいはUnderSensingなどの異常が判断しやすくなります。

PacingFailure

疑似ペーシングが表示されているにも関わらず、そのマーカーに追従する信号(P波やR波)が表示されていない。

PacingFailureの一例

Oversensing

心拍数が設定拍数以下にも関わらず刺激パルスが出ない。

OverSensingの一例

UnderSensing

自己の心臓の拍動が十分あるにもかかわらず、その動きが検出できていないために刺激パルスが出力されている。

UnderSensingの一例

いずれの図中にあります白色の縦棒が疑似ペーシング表示であり、この縦棒の表示されるタイミングやその後の心臓の動き方に注目する事でペースメーカー作動不全を認識しやすくするのがこの機能です。では、この機能はどのような電気信号をペースメーカーからの刺激パルスと認識し表示させているのでしょうか。ペーシングパルスはパルス幅が1msec未満の⾮常に短い電気信号ですが、ECGデータのサンプリング間隔は2〜4msecです。つまり、通常ではサンプリング間隔よりも短い電気信号であるペーシングパルスをとらえる事はできません。しかし、モニター設定にある「ペーシングモード」をONとする事によってこの信号の捕捉を可能にしているのです。ペーシングパルス検出の性能に関しては、⽣体情報モニタのECGに関する国際規格(IEC06061-2-27)によってペーシングパルスをQRSとして誤認しない性能を開⽰することを定めています。規格では、幅0.1〜2.0msec/振幅±2.0〜±700mVのパルスをペーシングパルスとして認識すると規定されており、専⽤回路はこれらのペーシングパルスを検出するように設計されているそうです。でもそこはやっぱり機械です。ペーシングスパイクが100%検出されているかといわれるとそうではないですし、ノイズ等でも上記の条件に当てはまる、あるいは似通った信号には対しては ”ペーシング”と認識してしまいます。 つまり、ペースメーカやICD等のリズムデバイスを植え込んでいない⼈にもペーシングスパイクが表⽰されてしまい、逆に混乱を招く時もあります。しかしそういった患者さんの場合はそもそもこの機能をONにはしませんし、たとえONで使用したとしてもデバイスが埋め込まれていませんので”ノイズ”と判断できます。しかしこれがデバイス埋め込み患者だったら・・・。そしてさらにそれが本当にデバイスから出力された”ペーシング目的ではない電気パルス”だとしたら・・・。解析する人間からするとなかなか厄介です。ですので今回はその一例を書かせて頂きます。それは胸郭インピーダンスを計測するOptiVolという機能です。インピーダンスを計測しますので当然電気を流すのですが、この電気は心臓の興奮に影響を与えるものではありません。つまり上記で記した規格よりも微弱な電気となっています。その大きさは1.9V@50μsec。電圧はそこそこ高いですが時間は非常に短いです。つまりChronaxieには程遠いパルス幅のため心臓をCaptureさせる事はできません。このパルスを正午~17時までの間、20分ごとに4パルス/回ずつ出力し、計64パルス/16回計測したインピーダンス値をその日の値として記憶します。そしてその値を過去に取得した4日間の値を平均化したReferense値と比較します。比較した結果、インピーダンスの低下が見られた場合はその変化分を加算、インピーダンスが上昇した場合は減算し、インデックス値としてグラフ化するものです。この値の解釈については今回は説明しません。今回説明するのはこの値を得るために出力される電気パルスについてです。実はこの電気パルス、デバイスから出力された電気刺激としてしっかりとモニター心電図に表示されます。しかもその出力タイミングはR波同期(汗)。つまり自己脈が出ているにも関わらず電気パルスが出る(UnderSensingと同じような見た目になる事があります(もちろんこの電気は心臓の興奮には関与しませんのでそのパルスに続いて現れる心電図はありませんが・・・))。この機能の事を知らない場合、きっとこのような判断をすると思います。「UnderSensingが原因で自己心拍を認識する事ができず、不要なペーシングが入ってしまっている。ただ、幸いなことにタイミング的に生体の不応期にあたっているため危険な電気刺激にはなっていないけど、一歩間違えたらSpike On Tで危ない!!」ふだんからしっかりとモニター心電図を確認している看護師さんほど疑問に思われる内容かと思います。このような内容で問い合わせがあると個人的には「すごい!!ちゃんとペースメーカー管理が出来ている」と思います。

今回の内容に限らず、よりよい患者管理のためにさまざまな機能が付加された心臓デバイス、そして使用者サイドに立って、できる限り安全に利用できるよう設計された生体情報モニター等の医療機器。どちらも正常作動ですが、それが正常であると判断でき、有効に利用できる知識を身に付けておくことが医療者にとって重要な事だと改めて感じています。 近年、医療機器の進歩は⽬を⾒張るものがありますがその機能を⼗分に発揮させるのは⼈間です。そこに医療機器のプロである臨床⼯学技⼠の出番があると考えています。みなさんもどんな細かいことに対しても疑問を持ってくださ い︕︕ 絶対に役に⽴たない知識なんてありませんから。当方からの発信が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

 

 

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臨床工学部

TEL:0562-46-2311(代表)

E-mail:med-eng(at)ncgg.go.jp

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