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徐脈?! ペースメーカーが入っているのになぜ・・・

本⽇は以前ペースメーカー外来で出会ったレアな症例を紹介させて頂きます。 きっかけは・・・・ 「最近脈が飛ぶんだよね」という患者さんからの訴え。ペースメーカーを⼊れてるのに脈が飛ぶ?? もしもその感覚が正しければPacingFailureやOverSensingなど、再手術も検討しなければならない可能性もあります。ひとまず⼀通りのチェックを行うも異常は見つかりませんでした(汗)。 もともと上室性の頻拍をRFCAにて治療したが完治させる事ができなかった⽅ですので上室性の頻拍イベントは数え切れず・・・ 通常IPGやICD/CRTDでは頻拍性不整脈のイベント取得機能は備わっているものの除脈のイベント取得機能は備わっていません。だって、除脈を治療する機器なんだからそもそも除脈なんて起こらないはずですからね︕︕ いろいろと患者さんとお話をしながらさまざまなチェックを⾏うも、それっぽい現象を再現させることが出来ません。患者さんが脈が飛ぶといわれるのは⼿⾸で拾った拍動、もしくは家庭⽤の⾎圧計で測定された数値です。 心房細動中に⼼室Rateが速い、または心室性期外収縮によって拡張不全から⼼拍出量の減少に伴って⼩さくなった脈波を拾うことが出来ず患者さんご本⼈が脈が飛んだと感じてしまう事も⼗分考えられます。でも薬物療法にて RateControlされている事もあり心房細動中の⼼室Rateもそんなに速くありませんし、長時間心電図にて心室性期外収縮も確認できません。これまでの経験上、ペースメーカーの様な心臓リズムデバイスの植え込みをされている方の脈の自覚症状は非常に敏感であり、いわゆる”気のせい”ではなくほとんどの場合不整脈等の何かしらの原因があります。さぁどうしたものか・・・ もう⼀度熟考してみる事に・・・ この⽅の植え込みされている機種はATP(AntiTachyPacing)機能の搭載されたものであり、その治療機能も設定されています。⼀通りのチェックで異常がないとなると、Dailyで⾏われている別の機能が何か悪さをしている可能性もあるかもしれません。特殊な機能といえば「MVP(AAI⇔DDD)」そして「ATRやARR、CAFR」。 ATP以外は不整脈が出ない限り調べようがありませんが、ATPであれば過去の不整脈治療履歴から何か掴めるかもしれません。 さっそく改めて過去の履歴を探っていくと・・・ よく分からないけど⼼室Rateが37bpmまで低下している部分があります。 これか︖︖ でもなんでこんな動作してるんだろう・・・ 実際の⼼電図は以下の通りです。

一過性に徐脈となった心電図

通常であれば上室性頻拍が停⽌したからといって、ModeSwitch中のDDIR作動によるSensorRateでの心房ペーシング、または⼼室ペーシングが⼊るはずです。 でも⼊っていない・・・いろいろと検討した結果、ペースメーカー側でAT/AFイベントがDetectされたと同時に患者さん⾃⾝のAT/AFイベントが自然停⽌。しかしデバイス本体はATPを実施するための最終準備段階に入って最後の⼼室イベントから500msecの同期シーケンスを開始しています。本来であればそのシーケンス中に発⽣した⼼房イベントに同期してATP治療とVVIバックアップペーシングが始まる・・・はずでした。しかしこの症例ではすでに心房細動が自然停止しています・・・。つまり、ペースメーカーはATP治療の⼨⽌めを⾷らっているのです。同期シーケンスが発⽣すると、その間ペースメーカーは待機状態となりペーシングを行いません。そしてシーケンス終了と同時にRateCounterが働いてSensorRateや LowerRateによるBackUpPacingが行われます。本来、同期シーケンスとは頻拍検出後に安全に不整脈治療を⾏わせるための⾃⼰脈検出ウインドウです。 しかし今回はこれが原因となって意図せぬ除脈を作ってしまったようです。

心室イベントの間隔が伸びた拡大図

長年この仕事をしていますが発見したのははじめてです。SSSやAVBlockで自己脈が出にくい方で、しかも心房細動の発作と停止が頻回に繰り返される方に対してATPをONにして、さらに生体の心房細動自然停止とデバイス側の上室性頻拍治療の開始アルゴリズムが同時起こった場合のみに起こる⼤変珍しい現象です。分かりにくい説明で⼤変申し訳ありませんが、みなさんはこの⼼電図からすぐに徐脈の原因を把握できますか?? 今後は「MINERVA」の事もありATP治療を積極的にセッティングする施設が増えると思います。その結果AT/AFの持続時間が減少し、Detectされたタイミングで頻拍が終了といった今回の様なレアな症例に遭遇することも”ゼロ”とは⾔えないと思います。ATPは確かに⾮常に優れた機能であると思いますが、特にBlockのある⽅に使⽤する際は「思わぬ所で脈が⾶ぶかも」。そしてその原因はこれかもしれないということを頭の⽚隅に置いてチェックして頂けるとよいのかもしれません。もしかしたら自然停止する心房細動という前提であれば、あえてATPをONにしないという選択肢もありなのかも知れません。⾮常にレアなケースかとは思いますが、みなさまのお役に⽴てれば幸いです。

 

 

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E-mail:med-eng(at)ncgg.go.jp

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