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外来診療・時間外診療・救急外来 電話:0562-46-2311

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ペースメーカーに記録された不整脈ログ解析の重要性

当センターでは20年近く前からペースメーカー関連業務は基本的に臨床⼯学技⼠のみで対応しており、各メーカーさんの⽴会いは行っておりません。それゆえ各メーカーのさまざまなデバイスについての機能(アルゴリズム含)を熟知している必要があります。もしそれが出来ないのであれば従来通りメーカーさんにお願いした方が安心できます。しかし、いざという時に即座に対応できるのは施設に勤務するスタッフです(もちろんメーカーさんも緊急対応はして頂けますが)。そして常に完璧な対応が求められます。そのような背景の中で、今回はペースメーカー外来時に観察された少し難解な不整脈記録についての紹介です。症例はIntermittent A-V Blockにて当センターでPMIを施⾏され、その後他施設にてPSVTに対するRFCAが施⾏されている患者さんです。当センターの外来におみえになった患者さんは脈の違和感の訴えがありました。その違和感と一致した日時でペースメーカー内にはArrythmiaLog記録されており、何かしらの対応が必要だと考えられます。設定を確認してみると以前当方で行った設定が変更されています。どうやらRFCAを実施した施設で設定変更が行われたようです。実際のIECG記録を以下に示します。

ペースメーカーに残された不整脈イベントログ

少し⾒難くて申し訳ありません。記録初期では Asense→Vpace→Vpace→Asense となっており、⾚線の部分からは、Asense→Vsense→Asenseとなっています。みなさんはこのログを見てどう考えますか︖︖ もちろん使用している機種によって考察内容は変わってきますが、設定変更は以下通りです。変更内容とその意図を考察すると・・・

 私はそのようには考えませんでした。この設定変更ではせっかくの安全機能(心室バックアップペーシング)が損なわれますし、そもそも根本的な違和感の軽減になりません。なぜなら機械の誤認識による作動によって発生しているイベントではないからです。私はこれはあるデバイスに搭載された⼼室AutoCapture機能の⼀フェーズである⼼室⾃動閾値Search期間と考えました。 理由は次の通りです。Asenseに対して30msec(Pace後AVは60msec)でVpaceが⾏われている事。しかしこの作動の場合、⾃動測定(21 時間ごとに勝⼿に⾏われる機能)のため、万が⼀のCaptureLossを防ぐため、すべてのPulseの後にBackUpPulse(TestPacingから約100msec 後)が発⽣します。この事は計測すれば明白です。しかしこれとは別に⼼房は何かしらのReentryCircuitにより頻拍が発⽣しており、機械はこれを正しく判別してFallBack動作をしています。PSVTに対するPostAblationという事を考慮すると頷けます。 そして、ModeSwitchが働きAutoCapture機能がキャンセルされたため、⾚線の部分からはAsense→Vsense→Asenseとなり通常のPSVT様のパターン(FFRWの心内心電図は見えますが・・・)が確認できます。

つまり、変更された設定はあまり意味を成しておりません。 行うべきはPSVTに対する追加治療だと考え設定はすぐに元に戻しました。 RFCAを⼀度実施して発作回数の軽減が図れている事、患者さんご自身が二度目のRFCAを希望しなかった事から、この患者さんは投薬と組み合わせたハイブリット治療となりました。そしてそれ以降は同様の訴えやArrythmiaLogの記録が残る事もなくなりました。設定変更だけでは消えなかった違和感とArrythmiaLogが、設定を元に戻して薬を追加する事によって消失した事を考えると今回の判断は間違っていなかったと考えて良さそうです。このような解析も各メーカーの機能が把握出来ているからこそできる事です。そしてそれは医学と工学の両方の知識を持つ臨床工学技士だからこそ成せる事だと考えています。最近はこのような心臓リズムデバイス業務が臨床⼯学技⼠の業務となって徐々にメーカーさんから移⾏している事と思います。不整脈治療専⾨臨床⼯学技⼠等の資格もありますが、これからも資格だけではなく実践に即した知識を⾝に付けて患者さんに還元できるよう⽇々努⼒していきたいと思います。

 

 

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TEL:0562-46-2311(代表)

E-mail:med-eng(at)ncgg.go.jp

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