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用手的人工換気に使用する物品について(ジャクソンリース編)

前回に続き今回はメイプルソン回路について書かせて頂きます。アンビューバッグとの⼀番の違い・・・ それは前回 [このリンクは別ウィンドウで開きます] も書きました通り駆動源(酸素等のガス)を要するという事です。つまり駆動ガスなしでは呼吸補助はおろか息を吸う事さえできません。作動原理は、駆動ガス(通常は100%酸素)を回路内に添加し、そのガスによってバッグを膨らませます。そしてメイプルソンの場合は、アンビューバッグとは異なり回路内に⼀⽅向弁等のガスの流れを遮るものが存在しませんので、気管カニューレに接続した時点でバッグと肺は直列に接続された状態になります。という事は「バッグの膨らみ=肺の膨らみ」となるわけです。では吐いた空気はどのように排出されるのでしょうか。このメイプルソン回路には、圧⼒調整窓と呼ばれる⽳が開いており、その⽳はさまざまな⽅法(機種によって異なります)で⼤きさが変更できます。そしてその調整された⽳から排出されるガスが呼気となり、その量を調整することで肺の膨らみが調節できます。つまりその⽳は「圧を保持する事」と「呼気を排出する」役目を担っているのです。やっぱり⾔葉で書いてもよく分かりません・・・ 今回も絵を描いてみました。まずは吸気です。

 

ジャクソンリース回路のよる吸気制御の図

そして呼気

ジャクソンリース回路による呼気制御の図

またまた下⼿な絵で申し訳ありません。 少しはイメージをつけて頂けましたでしょうか。ここでご注⽬頂きたいのは、吸気の時も呼気の時も両⽅バッグは膨らんだ状態であるという事です。そしてアンビューバッグが⾮再呼吸式呼吸補助であったのに対してメイプルソン回路は⼀部再呼吸式呼吸補助装置です。アンビューバッグとメイプルソン回路の違いはまさしく⼈⼯呼吸器と⿇酔器の違いと同じなのです。絵の中でも説明したとおり、弁を介さない回路で直列に接続されたバッグと肺の膨らみ(圧⼒)は「=」の関係が成り⽴ちます。つまり、常にバッグを膨らましておく事でFRC(機能的残気量)を確保しつつPressureControlに近い呼吸補助ができる訳です。もし呼気の際にバッグが潰れてしまったら・・・ メイプルソン回路の意味がまったく無くなり、アンビューバッグと同じどころか確実な呼吸補助という⾯ではアンビューバッグに軍配が上がってしまうかもしれません。せめてもの救いは酸素濃度が⾼いという事だけでしょうか・・・ (病態によってはそれ⾃体(⾼濃度酸素)が悪の時もありますが・・・) では⼿の感覚だけでPressureControlなんてできるのでしょうか。 私の様な凡⼈ではかなり危険が伴います。なぜならバッグの膨らみが肺の膨らみとはいえ、摘出肺ならまだしも実際の⽣きている⽅の肺に触れた事なんてありませんので正常な柔らかさなんて想像の域を脱しません。ではどうすれば客観的な指標のもと安全な呼吸補助ができるのでしょうか。 PressureControlと⾔ってるのだから圧⼒が分かればよさそうです。そこで当センターでは誰もが客観的に圧⼒を把握できるよう回路内に圧⼒計を組み込んでおります。(下写真参照)

メイプルソン回路に組み込んで使用する圧力メーター

⾮常に簡単な構造のディスポ製品ですが非常に有用です。場合によっては、メイプルソン回路を使⽤したRecruitmentManeuverもできます。 今となってはこのマノメーター無しでは怖くて換気補助ができないくらいです。⿇酔科の医師の中にはバッグの感触で⾒た⽬では分からない肺の膨らみを検知する事ができる超絶テクニック&感度をお持ちの先⽣⽅もお⾒えになると聞いた事がありますが、そのような先⽣にはこんなマノメーターなんて必要ないのかもしれません・・・。 ⾮常に羨ましい限りです。また、肺と直列に接続されているという事は⾃発呼吸の有無をしっかりと把握する事ができます。バッグが膨らんだ状態で使⽤していれば介助者が軽くバッグを握った状態を保持する事で、⾃発呼吸の吸気努⼒を⾮常に敏感に感じ取る事が可能です(バッグ⾃体が息をしますから)。そしてその吸気努⼒に同期して圧⼒計を⾒ながらバッグを軽く握りこめばいわゆるPSVに近い感覚で呼吸補助を⾏う事ができます。これはアンビューバッグでは到底マネのできない、メイプルソンだからこその利点だと思います。このような補助であれば患者さんにも優しいですし、なにより安全です。メイプルソン回路ってよい事ばかり︖︖ 

こんなにメリットのある物を使⽤しない理由は⾒つかりません。でも使⽤する前には⼗分な練習が必要です。では実際の使い⽅を記載してみます。⽚⼿でバッグを保持し⾃発呼吸の検出と圧⼒保持に注意を払い、もう⽚⽅で圧⼒調整⽳の⼤きさを調整しながらマノメーターを観察して患者さんにとって必要な圧を観察します。その際に流す駆動ガスの流量はどの程度がよいのでしょうか。⼀般的には分時換気量の2〜3倍程度と⾔われています。これらを加味して当センターでは最低10L以上(成⼈の場合)の駆動ガスを流して固定し、あとは⾃発呼吸の出⽅に応じたバッグの揉み具合と窓の調節のみで管理しています。流量が多い分には、窓を⼤きく開けて外に排出してあげればよいだけなのですが、流量が少ないと圧をかける事も、バッグを膨らます事すらできません。そうなるとメイプルソンの意味を成しませんし、呼吸補助ができない状況に陥る危険性がありますので駆動源のガス流量は多いに越した事はありません。しかしたまに⾼濃度酸素投与はできない症例に対してメイプルソン回路による呼吸補助をしなければならない場⾯があります。 そんな時はどうすればよいのでしょうか。⼤気(21%酸素)でよければ、混合空気や圧縮空気⽤の流量計を酸素流量計の代わりとして使⽤すればよい訳ですが、主に搬送時等に使⽤される⽤⼿換気ですので、基本は酸素ボンベからのガス供給となってしまいます。「21%では物⾜りない。でも100%は⾼すぎる」と⾔った場合はみなさんはどのように管理されますでしょうか。当⽅がそのような症例に対して呼吸補助を⾏う場合は、酸素ブレンダーを使⽤します。 このような物品のほとんどは、5L以上の酸素を流す事で25%程度〜 40%程度の酸素濃度のガスを10L以上提供してくれます。 そうです︕︕ ベンチュリー効果を利⽤した器具です。これは流量や酸素濃度ともにメイプルソン回路との相性は抜群です︕︕ 具体的な物品としては⾼流量酸素療法で使⽤するものです。接続の際は若⼲の⼯夫が必要ですが、⾮常に効果的な呼吸補助が可能となります。また、マスクによる換気補助においてもメイプルソン回路は威⼒を発揮します。基本的にはマスクによる⽤⼿換気といえばアンビューバッグですが、場合によってはしっかりと圧をかけたいしPEEPも維持したい事もあります。そんな時はNPPV⽤マスク(呼気ポートなし)をバンドで固定した状態(通常の装着状態)にして通常の気管カニューレに接続した際と同様の使⽤⽅法にて呼吸補助ができます。 ⼿動NPPV︕︖ あまり出番はありませんが、知っていると症例によってはとっても助かります。 まだまだ書きたい事はたくさんありますが、今回はこの辺にさせて頂きます。

実際臨床の場にいると使⽤頻度の⾼い器具こそ、その使⽤⽅法が⼗分に知られていない状態で使⽤されている現状があるような気がします。だって⾒よう⾒まねで使えちゃいますからね。⽤⼿換気⽤器具もその⼀つだと思いますが、その作動原理を理解したうえで使⽤しなければ⼗分な効果を発揮する事ができませんし、逆にしっかりと理解したうえで使⽤すれば患者さんの病態に応じた安全で確実な応⽤編を考えて使⽤する事もできます。簡単な構造の物だからこそ今⼀度その使⽤⽅法や原理をしっかりと理解して臨床で使⽤していきたいと思います。

 

 

お問い合わせ先

臨床工学部

TEL:0562-46-2311(代表)

E-mail:med-eng(at)ncgg.go.jp

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