認知症の人の口腔に着目した多施設共同の研究計画(研究プロトコール)が口腔病学会雑誌に掲載されました
2026年3月13日
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症の重症度と口腔健康状態との関連、ならびに認知症の人の口腔健康状態と定期的な歯科受診との関連を明らかにすることを目的とした研究計画(研究プロトコール)が、口腔病学会の英文誌 「口腔病学会雑誌/The Journal of the Stomatological Society, Japan」に掲載されました。
本研究は、日本老年精神医学会、日本補綴歯科学会、日本老年歯科医学会、認知症と口腔機能研究会が連携して推進する「医科歯科連携-認知機能と口腔機能の相関に関する探索的研究プロジェクト(Medical-Dental Collaboration: Exploratory research project on the Correlation between Cognitive and Oral function: ECCO)」の一環として実施されるもので、国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターからは歯科口腔外科部の釘宮嘉浩歯科医師が参画しています。
日本は世界でもっとも高齢化率(65歳以上の人口の割合)の高い国です。高齢者人口の増加に伴って認知症の人の数も増加しており、2025年には高齢者の約5名に1名が認知症になると推計されています。認知症は、その進行に伴って認知機能が徐々に低下するため、歯みがきや入れ歯の管理など、口の中のセルフケアが次第に難しくなります。また、認知機能の低下によって口の中に問題を抱えたまま歯科受診が遠のき、必要な歯科治療を受けられていない認知症の方もいる可能性がありますが、その実態については十分に分かっていません。こうした状況を把握し、認知機能と口腔機能の関係を明らかにするため、日本老年精神医学会、日本補綴歯科学会、日本老年歯科医学会、認知症と口腔機能研究会が連携して、ECCOプロジェクト1)が発足しました(図1)。ECCOプロジェクトの一環として実施される本研究では、認知症の人の口腔健康状態と歯科受診頻度との関連を、多施設共同で検討する研究プロトコールを報告しています。

図1:医科歯科連携-ECCO プロジェクトの参画団体とミッションの概略図(参考文献1より引用)
本研究は、認知症の重症度と口腔健康状態、歯科受診頻度の関連を明らかにすることを目的としています。認知症の進行に伴って口腔のセルフケアが難しくなる一方で、かかりつけ歯科医院の有無や歯科受診の頻度が認知症の人の口腔健康状態とどのように関連しているのかについては、十分に分かっていません。本研究では、アルツハイマー型認知症と診断され認知症専門医の外来を受診している120名を対象に、認知症の重症度、行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia: BPSD)の内容、口腔健康状態、かかりつけ歯科医院の有無、歯科受診頻度を評価し、それらの関連を多施設共同で検討することを予定しています。口腔健康状態の評価には、認知症の人にも使用可能な日本語版Oral Health Assessment Tool(OHAT-J)2)を用い、かかりつけ歯科医院に関する質問(図2)は付き添いの方から聴取します。本研究は、ECCOプロジェクトの活動のひとつとして実施される研究であり、将来的に認知症の人に対する適切な歯科治療や口腔ケアのあり方を検討するための基盤的知見を得ることを目指しています。また、本研究の対象者を継続的に評価することで、将来的には、人や物、時間や場所が分かりにくくなるといった認知症の中核症状や、落ち着きなく歩き回る、実際にはないものが見えると感じる、不安や混乱から言動が強くなるといったBPSDに口腔健康状態が与える影響についても検討できる可能性があります。さらに、本研究によって認知症の人がかかりつけ歯科医院の受診を続けることの重要性が明らかとなれば、歯科専門職による口腔健康管理が認知症ケアの一環として、認知症の人の生活の質(Quality of Life: QOL)の維持に貢献できる可能性を示すことができると考えられます。
![問1.かかりつけの歯科医院はありますか。[はい/いいえ]問2.【問1で「はい」と答えた方】最後に、かかりつけの歯科医院を受診されたのはどれくらい前ですか。[○○ヶ月前]問3.1年に何回くらい、歯や入れ歯の定期的なチェックを受けていますか。※全く受けていない場合は「0」、2年に1回程度の場合は「0.5」と記入してください。[1年に約○○回]](images/20260309-2.jpg)
図2:かかりつけ歯科医院の有無と受診頻度に関する質問項目
なお、本研究プロトコールは、一般社団法人日本歯科医学会連合令和6(2024)年度医療問題関連事業課題(課題番号:JDSF-DSP1-2024-103-4)の支援を受けて報告されました。
本研究は、学術英文誌「口腔病学会雑誌/The Journal of the Stomatological Society, Japan」に掲載されました。
KUGIMIYA Yoshihiro, FUEKI Kenji, MANABE Yuta, KIMOTO Katsuhiko, HASHIMOTO Mamoru, UEDA Takayuki, KASANUKI Koji, ABE Yuka, UTSUMI Kumiko, INAMOCHI Yuka, ISHIKAWA Tomohisa, SHIRAISHI Naru, SAITO Takeshi, HAMA Yohei, MIZUTANI Koji, HOSHI Noriyuki, KOBAYASHI Takuya, EGUSA Hiroshi, BABA Kazuyoshi, SASAKI Keiichi, IKEDA Manabu, KUBOKI Takuo, Investigation of Dental Attendance Rates and Oral Health in Individuals with Dementia Through the ECCO Project : A Research Protocol, THE JOURNAL OF THE STOMATOLOGICAL SOCIETY,JAPAN, 2025, Volume 92, Issue 2-3, Pages 142-147,
https://doi.org/10.5357/koubyou.92.2-3_142


国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 歯科口腔外科部 歯科口腔外科医師 釘宮嘉浩
※(at-mark)を「@」に置き換えてください。
東京科学大学(Science Tokyo) 咬合機能健康科学分野 教授 笛木賢治
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