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統合神経科学研究部の田口明子部長らはアルツハイマー病の発症に関与するアミロイドベータータンパク質の蓄積が糖尿病の発症と進行を促進することを発見

2022年6月8日

                                                                                                   国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

 

  国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典)・研究所(研究所長:櫻井孝)統合神経科学研究部の王蔚研究員、田口明子部長らの研究グループは、理化学研究所脳神経科学研究センター(西道隆臣 チームリーダー)と名古屋市立大学(斉藤貴志教授)との共同研究により、アルツハイマー病(AD)の発症に関与するアミロイドベーター(Aβ)タンパク質が早期から蓄積している場合では、中年期以前でも2型糖尿病の発症と進行が促進されることを明らかにしました。

近年、2型糖尿病はADの危険因子の1つであることが知られています。一方で、ADが2型糖尿病の発症・進行要因となるのかについても関心が高まっていますが、これらの関係は明らかではありませんでした。今回、ADで見られる脳のアミロイド斑の元となるヒトAβの蓄積が若齢期から生じているADモデルマウスに2型糖尿病を誘導させたところ、同疾患を誘導させた野生型マウスに比べ肥満度や耐糖能障害が悪化することを見出しました。さらに、本AD モデルマウスでは、2型糖尿病の有無に関わらず、血中ケトン体の値が有意に低いことが分かりました。

最近の研究から、ADの脳は、糖の利用率低下によるエネルギー不足にあることが報告されています。ケトン体は糖質が脳で不足した時に利用される代替のエネルギー源ですが、血中レベルの低下は、認知機能障害発症以前から脳のエネルギー不足を進行させている可能性が考えられます。しかしながら、これらのエネルギー代謝異常は、Aβの蓄積や認知機能に影響を与えませんでした。今回の研究成果から、AD の特徴であるAβの蓄積は、2型糖尿病への脆弱性を高め、疾患の発症と進行を促進することが示唆されました。しかしながら、エネルギー代謝障害は、認知機能低下の誘導には不十分であり、加齢要因が必要である可能性が示されました。今後、中年期以降の解析を進めることで、アルツハイマー病と2型糖尿病の相互作用と脳のエネルギー不足を端緒とした未知の認知症発症機序の解明に繋がることが期待されます。

本研究成果は、Neuropsychopharmacology Reportsに2022年5月18日付(JST)で掲載されました。

論文情報

発表論文                             

論文リンク

https://doi.org/10.1002/npr2.12257このリンクは別ウィンドウで開きます

 

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