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脱!アルブミン値を参考にした栄養評価

長寿NSTニュースレターVol.40
2021年1月

アルブミンによる栄養評価は古い?

血清アルブミンやプレアルブミンはこれまで栄養評価の指標として考えられてきました。しかし、近年の専門家のコンセンサスでは、従来の考え方は正しくないと強く否定されています。

栄養指標としてのアルブミン値利用を否定する論文

栄養指標としてのアルブミン値利用を否定する報告は10年以上前からあります。2007年には我が国で、要介護高齢者の血清アルブミン値と栄養状態の相関が認められないことから有用性が疑わしいと報告されています。2012年の米国静脈経腸栄養学会(ASPEN)と米国栄養士会(AND)共同の報告の中では、血清アルブミンやプレアルブミンは炎症の重症度を反映する指標ではあるが栄養状態を示す指標ではないとしています。この報告の中では栄養失調の診断に推奨される所見として、①摂取量不足、②体重減少、③筋肉量低下、④皮下脂肪減少、⑤体重減少をマスクする体液貯留、⑥握力低下を挙げていますが、アルブミンとプレアルブミンは栄養状態と相関しない、として含んでいません。2016年にはASPENと米国集中治療医学会(SCCM)の共同の報告で、従来の血清タンパク質マーカー(アルブミン、プレアルブミン、トランスフェリン、レチノール結合タンパク)は、重症患者における急性反応(血管透過性の増加および肝臓におけるタンパク質合成の優先順位変化)を反映したものであり、栄養状態を正確に表しているとは言えず、栄養指標として用いないことを推奨しています。また同じ理由で、アルブミン、プレアルブミン、トランスフェリンを術後患者の栄養指標として用いないことを推奨しています。さらに2020年10月にもASPEN からアルブミンを用いた栄養評価は正しくないとのアナウンスがされています。

2020 年ASPEN の声明

ASPEN は2020 年10 月のポジションペーパーにおいて、「アルブミンは栄養状態を示すものではなく炎症を示すものである」と明記しています。その中で、①血清アルブミンやプレアルブミンは現在認められている栄養不良の定義の構成要素ではない、②血清アルブミンやプレアルブミンは総タンパク質や総筋肉量の代理測定値として機能しない、③したがって栄養マーカーとして用いるべきではない、④血清アルブミンやプレアルブミンの低下は炎症マーカーである、とされています。重症疾患や慢性疾患には炎症を伴うことが多く、肝臓におけるタンパク質合成の優先順位付けが行われ、その結果としてアルブミンとプレアルブミンの血清濃度が低下すると言われます。また、炎症に伴う毛細血管の透過性上昇により血清タンパク質の再分配が起き、血清アルブミン値は低下します。炎症と栄養不良には関連があるものの、栄養不良と内臓タンパク質レベルには関連がないため、アルブミンやプレアルブミンは栄養マーカーとして使用すべきではなく、あくまでも炎症マーカーであることを認識する必要があります。

図:低栄養、炎症、アルブミンの関係

次回

現在、世界的に使用されている栄養評価の方法についてご紹介します。

文献

  • Kuzuya M, et al. Clin Nutr. 2007
  • A.S.P.E.N./AND コンセンサスWhite JV, et al. J Parenter Enteral Nutr. 2012
  • SCCM/A.S.P.E.N.コンセンサスTaylor BE, et al. Crit Care Med. 2016
  • Evans DC, et al. Nutr Clin Pract. 2020. doi: 10.1002/ncp.10588.