本文へ移動

病院

文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大

 

外来診療・時間外診療・救急外来 電話:0562-46-2311

ホーム > 病院 > 医療関係者の方へ > 長寿NSTニュースレター > 第2回 健康長寿と栄養の研修会~ポリファーマシと栄養障害~

第2回 健康長寿と栄養の研修会~ポリファーマシと栄養障害~

長寿NSTニュースレターVol.33
2018年4月

 今回のニュースレターでは、平成30年3月8日に開催された「第2回健康長寿と栄養の研修会」の内容をご紹介いたします。講師には東京大学医学部附属病院老年病科助教小島太郎先生をお招きし、「ポリファーマシーと栄養障害」をテーマにご講演を頂きました。以下に、今回の講演内容の概要につきご紹介させて頂きます。

1.ポリファーマシーとは

 ポリファーマシーとは薬物有害事象、アドヒアランス不良など多剤服用に伴う諸問題を指すだけでなく、最近では薬剤のあらゆる不適正問題を含む概念へ発展している。高齢者は様々な慢性疾患が重なり、ポリファーマシーに陥りやすい。ポリファーマシーの問題点は服薬の過誤、処方・調剤の過誤、薬物相互作用、医療費の増大、服薬に伴うQOLの低下などがある。2015年の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」では、75歳以上の高齢者、75歳未満でもフレイルあるいは要介護・要支援認定を有する高齢者を対象とし、投与中止を検討すべき薬物や開始を考慮すべき薬物のリストが挙げられている。これらの薬剤を「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物(PIM)」とし、重篤な有害事象の出る可能性のある薬剤や有害事象の頻度の高い薬剤がこれに含まれている。PIMに該当する薬剤がある場合や、服薬管理能力の低下がある場合、あるいは薬物相互作用の危険がある場合などには積極的に薬剤調整を行う必要がある。

 2.高齢者の低栄養

 高齢者の低栄養の原因は、認知機能障害、嚥下障害など様々であるが、その一つには多剤服用による副作用も含まれる。服用する薬剤数が低栄養と相関し、10剤以上の服用で3年後の低栄養リスクが高まるとの報告もある。食欲低下に関与しうる薬剤としては、味覚障害を引き起こすACE阻害薬、口腔乾燥を引き起こす抗コリン薬、消化管障害を引き起こすステロイドやNSAIDsなど多数ある。Med-Passとは薬剤を水分で服用する代わりにONS(OralNutrition Supplementation:経口栄養補助)で服用する方法である。これにより300-400kcalのエネルギーとタンパク質の摂取が可能となり、プレアルブミンや体重増加も認められている。減薬は高齢者の予後に効果を及ぼさないとのデータがあり、これは減薬しても予後が悪くならないともいえる。栄養障害につながり得る相互作用や有害事象の回避のためにも、ポリファーマシーの是正は大切である。


 今回の研修会には、総計63名の職員および外部聴講者の方々にご参加を頂きました。
 当院でも昨年度よりポリファーマシー削減チームによる処方の見直しを行っておりますが、普段の業務においても処方内容の適正化と栄養障害の改善を目指したいと思います。
 今後とも当院NST活動にご協力お願い致します。