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第3回サルコペニア勉強会

長寿NSTニュースレターVol.12
2012年7月

2012年5月21日、NSTと長寿医療研究センター内で続けられているサルコペニアの勉強会が共催して行う研修会の第3回目が開催されました。今回は会場をあいち健康プラザのホールとし、国立長寿医療研究医療センター研究所長の鈴木隆雄先生にご講演をお願いしました。

老年症候群と虚弱

医学の進歩により疾病による死亡率は低下したものの、その発症率が変わっていないことが示すものは?という問いかけからお話しが始まりました。その答えの一つが、疾病罹患後に生活の質(QOL)を脅かされる高齢者が増加することであり、老年症候群の予防が重要であることを示されました。先生は在宅/地域の高齢者における老年症候群の予防に関する研究を幅広く行い、国の政策にもつながる提言も活発にされてきました。老年症候群と虚弱(frailty)の考え方には重なるところが多くありますが、それらの病態の中心にサルコペニアがあります。

サルコペニアとは

サルコペニアは筋肉の量と質(機能)の両方が低下した状態であり、高齢者の自立をさまたげる大きな要因の一つです。サルコペニアの定義についてはいまだ一定したものはありませんが、ヨーロッパでの判定基準について解説されました。歩行速度という身近な指標によるスクリーニングはたいへん実用的であるものの、日本人にも欧米人と同じ毎秒0.8mという基準値をあてはめてよいのか、という疑問も示されました。「筋肉量」の評価方法としては、全身型のX線吸収度計(DXA)を用いた測定がgolden standardとされていますが、身近な指標である下腿三頭筋周囲径もQOLとの相関があるとのことです。

RCTの重要性

サルコペニアを適切な方法で判定し、その結果をサルコペニアの予防方法の開発にむすびつけていくことはさらに重要です。低栄養の改善や転倒予防指導がサルコペニアの予防方法の柱になると思われますが、これらの「介入」の有効性については科学的な評価が必要です。そのためにもっとも有用な研究デザインがランダム化比較試験(RCT)です。鈴木先生が前任地で行った「お達者健診」(東京都板橋区)や転倒予防教室(東京都小金井市)を例にその有用性とともに難しさが解説されました。現在、当センターと大府市が協力して行っている認知機能低下予防(対象はmild cognitive function impairment, MCI)の研究でもRCTのデザインで行われており、その成果が期待されます。

サルコペニアの予防

鈴木先生はサルコペニアの予防を目指した栄養学的な介入試験をRCTで行いその成果を発表されました(JAGS2007)。この研究では、ロイシンを多く含むアミノ酸を摂取する栄養群、運動介入群、栄養介入と運動介入の両方を行う群、そしてどちらも行わない対照群の4群で様々な指標が比較されました。その結果、栄養介入のみではサルコペニア予防につながる効果は得られなかったものの、運動介入の効果に対して相乗的または相加的な効果が観察されました。サルコペニアの予防には運動面と栄養面の両方が重要であることを示した貴重な前向き研究です。