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第 2 回サルコペニア研修会:小川純人先生のご講演から

長寿NSTニュースレターVol.10
2012年1月

先進諸国の多くが高齢社会を迎え、この分野の研究者は老化機構の解明や生活機能障害の予防策開発に挑戦をしています。このような経緯の中、サルコペニア研修会が当センターで開催され、第2回目として東京大学医学部老年病科講師・小川純人先生が、「高齢者の転倒・骨折とその予防」の講演をされました。

高齢者の転倒・骨折

高齢者は、筋力低下、バランス能力低下、歩行能力低下のいずれかがあると、転倒の危険が3-5倍増加するという報告を踏まえ、ご自身の調査結果を説明されました。長野県の地域住民調査によると、転倒の危険は要支援の段階ですでに高く、早期から転倒リスクの高い人へ介入する必要性を強調されました。実際、3か月の転倒予防教室を実施し、身体機能と認知機能の改善、教室終了後の維持効果が認められました。

サルコペニアとは

2010年に欧州の4学会がワーキンググループを組織してまとめた定義、診断基準、診断アルゴリズムを示されました(本ページ下部参照また、代表的炎症性サイトカインであるIL-6の過剰発現が筋肉量を減少させ、その効果が中和抗体で改善された、というご自身の研究結果から、加齢に伴う慢性炎症(Inflammaging)がサルコペニアの一因であることを説明されました。さらに、筋肉細胞に運動を模倣した電気刺激を行うことでIL-6の産生が抑制されることなど、興味深いデータを解説されました。

サルコペニアと低栄養

長野県の地域住民調査から、独居高齢者は非独居高齢者に比べ、食品摂取品目が少なく、特に魚介類・緑黄色野菜の摂取が少ない、という結果を報告されました。また、肉類の摂取が週に1回以上ある高齢者は、まったくない高齢者に比べて、生活機能や認知機能が比較的良好であり、魚介類・肉類・緑黄色野菜・海藻類の摂取頻度が高いほど転倒リスクは低かったとのことです。

サルコペニアの予防と治療

高齢者の栄養管理ガイドラインでは「高齢者では糖質や脂質の利用が低下するが、蛋白質の需要は減少しないため、蛋白質を十分量(1日1g/kg)摂取すること」を推奨していますが、サルコペニアと蛋白質・アミノ酸との関連は明らかではありません。講演では、基礎研究の結果から、ロイシンの代謝物質であるβヒドロキシβメチル酪酸(HMB)が蛋白合成を活性化し、炎症反応を低下することを示されました。その他、ビタミンDが転倒予防や筋肉量増加に働くこと、アンドロゲンやその前駆物質(DHEA-S)が身体組成を改善し、生活機能や認知機能を改善させる可能性も説明されました。
今回の研修会は、院外の方を含め、107名に参加して頂きました。また、前回同様、アボットジャパン株式会社の協賛を頂きました。


サルコペニア診断基準

サルコペニアは、下記の項目1を裏付ける証拠に加え、2あるいは3を満たす場合に診断される。

サルコペニア診断アルゴリズム

年齢が65際を超えている高齢者に対するサルコペニアか否かのアルゴリズム。 歩行速度が0.8m毎秒より早く、且つ握力が正常であればサルコペニアなし。 歩行速度が0.8m毎秒より速く、且つ握力が低下している場合、筋肉量が低下していればサルコペニアであり、筋肉量が正常であればサルコペニアなし。 歩行速度が0.8m毎秒以下で、且つ筋肉量が正常であればサルコペニアなし。 歩行速度が0.8m毎秒以下で、且つ筋肉量が低下していればサルコペニア。

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