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すこやかな高齢期をめざして ~ワンポイントアドバイス~

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歩行速度と要介護との関連性

老化疫学研究部 Department of Epidemiology of Aging

歩くことは、日常生活の中で最も一般的な移動手段です。「トピックスNo.10 速く歩けること、バランスを保てることの大切さ」では、歩く速さやバランス能力といった身体能力が、「自立した生活を送る能力」を維持するために重要であることをご紹介しました。今回は、歩行速度とその後の要介護発生リスクの関連について検討した研究成果をご紹介します。

NILS-LSA(ニルス・エルエスエー)第2次調査から第7次調査に参加された方々のうち、65歳以上かつ要介護認定を受けていなかった1,779名(注1)を対象として、歩行速度とその後20年間の要介護発生リスクとの関連を縦断的に検討しました。

(注1) 初めて歩行速度を測定した調査のデータを解析に使用しました。

その結果、男女別に歩行速度で5グループ(5分位(ごぶんい)により5等分)に分けると、参加者の平均的な歩行速度を含む第3グループと比べて、歩行速度が最も遅い第1グループの参加者の要介護発生リスクが高いことが示されました()。

歩行速度の遅いグループから早いグループを第1グループから第5グループにわけ、それぞれのグループと要介護発生リスクの関連を示した図。第1グループは男性で毎秒0.47から1.15m、女性で秒速0.47から1.12m。第2グループは男性で秒速1.17から1.25m、女性で秒速1.13から1.22m。第3グループが基準群となり、男性で秒速1.27から1.37m、女性で1.23から1.30m。第4グループは男性で秒速1.38から1.47m、女性で1.32から1.42m。第5グループは男性で1.48から1.97m、女性で1.43から1.78m。一番遅い第1グループが基準群と比較して全参加者、男性、女性すべてにおいて要介護発生リスクが高いことを示している。
Cox比例ハザードモデル;年齢、性、調査時期、体格指数(BMI)、喫煙、教育歴、抑うつ症状、既往歴(脳卒中、高血圧、糖尿病),総身体活動量を調整
図:歩行速度5グループと要介護発生リスクとの関連

第3グループ(参加者の平均的な歩行速度レベル:男性平均値秒速1.32メートル、女性平均値秒速1.26メートル)の参加者と比較して、歩行速度が最も遅い第1グループ(男性最大値秒速1.15メートル、女性最大値秒速1.12メートル)の参加者の要介護発生リスクが高かった。この結果は、性で層別化しても変わらなかった。さらに、歩行速度が最も速い第5グループは、男性において要介護発生リスクが低かった。

歩行速度秒速1メートル未満がサルコペニア(注2)の診断基準(AWGS2019)では採用されています。しかし、最近の研究により、日本人高齢者の歩行速度が過去20年間で上昇していることが明らかになっています。今回の第1グループの最大値に近い秒速1.1メートルは秒速1メートルよりわずかに速いだけですが、日常生活で少し速く歩くことは、要介護予防に有用と言えそうです。

(注2) サルコペニアは加齢により筋肉量の減少、筋力の低下、身体能力の低下が生じた状態をさします。ギリシャ語由来の「Sarco(筋肉)」と「Penia(減少)」を合わせて、「Sarcopenia:サルコペニア」という造語となりました。

ただし、無理に早歩きすると転倒の危険性があります。また、高齢者の場合は運動のしすぎで血圧の上昇や不調を招くこともあります。ご自身の体調や周囲の安全を考慮した上で歩きましょう。

日常生活で意識的に少し早歩きをして、要介護を予防しましょう。

<コラム担当:張 姝>

*このコラムの一部は、以下の研究成果として発表しています*

Zhang S, Otsuka R, Nishita Y, Shimokata H, Arai H: 

Twenty-year prospective cohort study of the association between gait speed and incident disability: The NILS-LSA project.

Geriatrics & Gerontology International 2022, 22:251-253.

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