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すこやかな高齢期をめざして ~ワンポイントアドバイス~

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あなたのサポートが誰かを救う? 【フレイル予防】

老化疫学研究部 Department of Epidemiology of Aging

社会的なサポートや家族からのサポートの存在が、(必ず、ではないにしても)自殺の防止に役立つ、ということはご存じの方々も多いかと思います。でも、そういったサポートが高齢者の「体の健康の支え」にもなり得る、ということはご存じでしょうか?

表:分析対象者の各調査参加状況とフレイルの回答者数。第2次調査から第7次調査の参加人数に対してフレイルありの人数と割合を%で並べたもの。

  NILS-LSA(ニルス・エルエスエー)の第2次調査に参加された65歳以上の方々で、その時点では「フレイル」注)ではなかった466名(トピックスNo.27『フレイルに気をつけて』参照)を対象として、その後「フレイル」になったかどうかに関する、最長11年間の追跡調査を行いました。まず、表にお示ししたとおり、追跡期間が長くなるにつれて「フレイル」の人の割合は次第に増えていきます。

注)「フレイル」とは、「健康で自立した生活を送れる状態」と「他者からの介護を必要とする状態」の間の状態を指します。

 

図:各サポート得点の1標準偏差(SD)分増加に伴うフレイルになるリスク。調整変数:性別、ベースライン時の年齢、局行く歴、配偶者有無、フレイル指標該当数。および追跡年数。

この「フレイル」になってしまうリスクが、家族(別居者も含む)、および家族以外から受けられるサポートの内容とその量によって、異なるかどうかを分析した結果をに示しました。それによりますと、情緒的サポート、つまり「心配事や悩み事を聞いてくれる」ことや「気を配ったり思いやったりしてくれる」などの、心理的側面におけるサポートをたくさん受けられる人や、手段的サポート、つまり「留守の時やちょっとした用事を頼める」ことや「病気で数日間寝込んだ時に、看病や世話をしてくれる」などの、問題解決に焦点をあてたサポートをたくさん受けられる人ほど、その後「フレイル」になるリスクが20%ほど低いということが示されました。そしてこれらのサポートは、サポートの提供者が家族である場合でも、家族以外である場合でも、同じような効果を持つことが分かりました。

 

家族からでも家族以外の人からでも、いろいろなサポートを受けることができる人ほど体の健康状態を維持できるという結果は、高齢化がますます進む現代においては大きな意味を持つと言えます。家族間だけではなく、一人暮しや家族・親族がいない高齢者に対して、例えば友だち同士やご近所さんの間でちょっとしたサポートを提供し合うことによって、お互いに健康に長生きしていけるといいですね。

お互いにサポートを提供し合うことで、フレイルを予防しましょう!

 <コラム担当:丹下 智香子>

道ばたに横になり通行人になでてもらっている猫の画像
その「一(ひと)なで」もサポートです!

*このコラムの一部は、以下の研究成果として発表しています*
丹下智香子・富田真紀子・西田裕紀子・大塚 礼・安藤富士子・下方浩史・荒井秀典:
地域在住高齢者のフレイルに対するソーシャルサポートの影響.
第59回日本老年医学会学術集会,2017.

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