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平成30年度

注:本ページでは概要のみテキスト化しております。事業の報告および結果につきましてはPDF文書をご覧ください。

実地指導における文書削減に関する調査研究事業

目的

 介護保険法に基づく実地指導の目的を担保する最低限必要な確認項目や文書について調査、検討を行い、実地指導における確認項目の整理、ならびに参考様式を提示し、行政文書の削減、さらには介護保険サービス事業所、自治体職員の事務負担を軽減する。

事業の概要

 検討委員会:4回

 実地指導を担当する都道府県、市町村職員と、各種介護保険サービス事業所の実地指導担当者、有識者(11名)からなる検討委員会を設置。

委員会メンバー

 大学教授(委員長)、自治体職員6名、事業所職員4名

検討事項

文書量の少ない自治体に対する聞き取り調査

対象

実地指導時における行政文書量の少ない自治体

調査時期

平成30年8月中旬から10月上旬

調査内容

限られた文書でどのように実地指導を行っているか
集団指導の実施方法や法改正等があった際の情報提供の方法

実地指導時に確認すべき標準項目案のモデル調査

対象

5自治体(10事業所)

調査時期

平成30年11月中旬から12月中旬

調査内容

実地指導の目的を担保する最低限必要な確認項目が網羅されているか
確認する文書の種類や分量は適当か

標準確認項目案、確認文書案を用いた模擬実地指導

対象

5法人(10事業所)

調査時期

平成31年1月下旬から2月中旬

調査内容

標準確認項目案は実地指導にて確認すべき標準項目を網羅しているか

標準文書案は標準確認項目案にある項目を確認するのに適しているか

実地指導における標準確認目案と文書案の提案

検討委員会メンバー

50音順(敬称略)

お名前

ご所属

 

〇 䑓豊

青山学院大学法学部教授

有識者

稲葉裕一

静岡県 福祉指導課

県職員

猪苗代全志

札幌市 介護保険課

政令市職員

近江龍

相模原市 指導監査課

政令市職員

梶川泰蔵

柏市 法人指導課

中核市職員

櫻井千恵美

アースサポート株式会社

株式会社

佐々木勝則

社会福祉法人桜井の里福祉会

社会福祉法人

柴田倫宏

株式会社メゾネット

株式会社

西野法俊

医療法人財団友朋会

医療法人財団

藤田聡

豊田市 総務監査課

中核市職員

丸山直人

川越市 指導監査課

中核市職員

標準確認項目数の変化と考察

 

「主眼事項及び着眼点(平成12年5月12日付け老発第479号厚生労働省老健局長通知「介護保険施設等の指導監督について」)における確認項目数

本事業により整理された標準確認項目数
※項目の詳細は報告書を参考

訪問介護

約90項目

36項目

通所介護

約90項目

43項目

居宅介護支援

約100項目

27項目

介護老人福祉施設

約140項目

54項目

成果と残された課題

 介護保険事業所数の増加や自治体の体制充実が難しい現在、実地指導を効率的かつ効果的に実施することが必須である。そのため、本事業で提案した標準確認項目ならびに確認文書を活用し、効率的な実地指導が行われることが期待される。
 しかし、標準確認項目や標準確認文書を示しただけでは、形式的な実地指導に陥る危険があることや、標準確認項目にない基準であっても介護保険事業所は遵守が求められる。今後、実地指導の流れや監査に切り替えるポイントなどをまとめたマニュアル等の開発や指定基準をわかりやすく説明したパンフレット等の作成が今後望まれる。


本人視点を重視した認知症の医療および介護への先端技術活用に向けた質的研究および人工知能による調査研究事業

事業結果の概要

 本研究は、グループ・ディスカッションの内容分析にAI技術を用いる有用性を検証することを目的とした。具体的には、テキストデータの効率的な解析手法の精度と有用性、ニーズ(関心度合い)分析に頻出単語分析や性格分析を活用する有用性を検証し、それにより大規模調査への展開や、本人視点を重視したニーズ聴取方法が可能かどうかを検討した。

AI技術を活用した感想・要望の分類精度の検証

 教師なし学習による感想・要望の分類では、自然言語の特徴のみに着目し、ある程度内容が似通った解釈性のある項目に分類することができたと考えられる。これにより、人手で全ての発言に目を通して内容を精査する場合と比べ、比較的素早く論点を捉えることが可能となる。また、人による主観的な分類とは異なる着眼点を得ることもでき、認知症の人や家族が抱える課題をより深い視点で捉えることができる可能性も示唆された。
 教師あり学習による感想・要望の分類では、一部のデータを人手で分類し、その結果を学習・模倣させることで、人手による実施結果に対して評価の目安となる70%を超える正答率を得ることができた。今回構築したモデルは、同様のテーマのフォーカス・グループ・ディスカッションであれば再利用することすることができ、同程度の精度が期待できる。
 さらに、異なるテーマに適用する場合においても、教師なし学習と教師あり学習を組み合わせることで、短期間でのデータ解析が期待できることが示唆された。

AI技術を活用した頻出単語分析・性格分析の有用性と今後の展望

 頻出単語の分析では、認知症の人は自分史や趣味に関する単語が多く、機器や介護自体に関係する発言はあまり出現しなかった。一方で、家族はロボットの機能、認知症の人への適用や倫理的配慮、介護者の負担感に関する単語が多かった。また、性格分析の結果では、認知症の人は警戒心が強く繊細で内向的な傾向を示すのに対して、家族は好奇心が強い傾向を示していた。これらの結果から、認知症の人とその家族には、類似しているが異なるニーズがあることが示唆された。すなわち、認知症の人は日常生活の困りごとに対してできる限りの対策は講じるが、難しい場合はその行動を回避したり、家族(介護者)に支援を依頼することで、ストレスを感じることなく生活しようとしている。そのため、ロボットや先進機器に対する発言頻度が少なく、警戒心の強さが強調されたと推測された。一方で、家族は認知症の人の意見を尊重しつつも、認知症の人の生活範囲が狭小化されないこと、認知機能や歩行機能が低下しないことを望んでおり、そのため、ロボットや先進機器に対する発言頻度が多く、好奇心が強い傾向を示したと推測される。この結果は、本調査の対象者が、認知症の症状やケアに関する理解・知識を持ち合わせた理想的な家族関係であったことが背景因子にあったためと考えるが、概ね多くの認知症の人とその家族の状況を表す状態であると推測される。これらを的確に示すようなAI技術を活用した頻出単語分析や性格分析は、ニーズや関心分野の裏付けとして有用であることが考えられた。今回の調査は対象者数が少なかったため、認知症の人と家族間のニーズの違いを検討したが、それ以外にも、罹病期間、世帯構成、居住地域、認知症重症度などの交絡因子が存在することが予測される。そのため、このAI技術を活用して異なる対象群を調査することでニーズの交絡因子の解明ができると予測される。

先進技術やロボットに対する感想・要望

 本研究は、グループ・ディスカッションの内容分析にAI技術を用いる有用性を検証することを目的とした。具体的には、テキストデータの効率的な解析手法の精度と有用性、ニーズ(関心度合い)分析に頻出単語分析や性格分析を活用する有用性を検証し、それにより大規模調査への展開や、本人視点を重視したニーズ聴取方法が可能かどうかを検討した。

1.AI技術を活用した感想・要望の分類精度の検証

 教師なし学習による感想・要望の分類では、自然言語の特徴のみに着目し、ある程度内容が似通った解釈性のある項目に分類することができたと考えられる。これにより、人手で全ての発言に目を通して内容を精査する場合と比べ、比較的素早く論点を捉えることが可能となる。また、人による主観的な分類とは異なる着眼点を得ることもでき、認知症の人や家族が抱える課題をより深い視点で捉えることができる可能性も示唆された。
教師あり学習による感想・要望の分類では、一部のデータを人手で分類し、その結果を学習・模倣させることで、人手による実施結果に対して評価の目安となる70%を超える正答率を得ることができた。今回構築したモデルは、同様のテーマのフォーカス・グループ・ディスカッションであれば再利用することすることができ、同程度の精度が期待できる。
 さらに、異なるテーマに適用する場合においても、教師なし学習と教師あり学習を組み合わせることで、短期間でのデータ解析が期待できることが示唆された。

2.AI技術を活用した頻出単語分析・性格分析の有用性と今後の展望

 頻出単語の分析では、認知症の人は自分史や趣味に関する単語が多く、機器や介護自体に関係する発言はあまり出現しなかった。一方で、家族はロボットの機能、認知症の人への適用や倫理的配慮、介護者の負担感に関する単語が多かった。また、性格分析の結果では、認知症の人は警戒心が強く繊細で内向的な傾向を示すのに対して、家族は好奇心が強い傾向を示していた。これらの結果から、認知症の人とその家族には、類似しているが異なるニーズがあることが示唆された。すなわち、認知症の人は日常生活の困りごとに対してできる限りの対策は講じるが、難しい場合はその行動を回避したり、家族(介護者)に支援を依頼することで、ストレスを感じることなく生活しようとしている。そのため、ロボットや先進機器に対する発言頻度が少なく、警戒心の強さが強調されたと推測された。一方で、家族は認知症の人の意見を尊重しつつも、認知症の人の生活範囲が狭小化されないこと、認知機能や歩行機能が低下しないことを望んでおり、そのため、ロボットや先進機器に対する発言頻度が多く、好奇心が強い傾向を示したと推測される。この結果は、本調査の対象者が、認知症の症状やケアに関する理解・知識を持ち合わせた理想的な家族関係であったことが背景因子にあったためと考えるが、概ね多くの認知症の人とその家族の状況を表す状態であると推測される。これらを的確に示すようなAI技術を活用した頻出単語分析や性格分析は、ニーズや関心分野の裏付けとして有用であることが考えられた。今回の調査は対象者数が少なかったため、認知症の人と家族間のニーズの違いを検討したが、それ以外にも、罹病期間、世帯構成、居住地域、認知症重症度などの交絡因子が存在することが予測される。そのため、このAI技術を活用して異なる対象群を調査することでニーズの交絡因子の解明ができると予測される。

3.先進技術やロボットに対する感想・要望

 本研究は認知症の人6名、家族5名と調査対象数は少数であるため、この結果から結論を導くことはできないが、挙げられた感想・要望の概要を纏めた。
 コミュニケーションロボットの有用性については、肯定的な意見と否定的な意見が得られた。肯定的な意見としては、”コミュニケーションが取れて、心が和むみたいなような、あれですよね。“というように、支持的な発言が聴取された。この背景として、回想法や、コミュニケーションロボットの効果と用途に関する情報が広く認知されており、そのことがプラスに働いたと考えられる。その一方で、“うーん、まだ何となく馴染めないねぇ。そのうち相手してもらいたいって思うようになるかもしれないんだけど、今んとこはですねぇ。”“回想療法を時々やるんですけど…(中略)…忘れてしまってるんですね。だから(認知症が)進んだ人には無理になるかもしれないですね。”というように、適用となる対象属性は限定的である可能性が考えられた。また、移動支援ロボットや社会支援ロボットも同様に、“コンパクトに使いやすくなって、その人に応じた移動・身体介助をしてくれるようなものがあれば、介護する側は楽だと思う”や“これはここにおいておくからとか、何々をする予定だからって言うのがあって、(中略)このロボットがそういう代わりをしてくれるような相手として付き合えるんだったらいいなっていう風には思いましたけどね。”というように、先進技術やロボットに期待する発言が聴取された。その一方で、“我々はこれを買うだけの収入はないですね。これが大きいと思います。”や、“あんまり難しい環境設定とかするのしんどそうかなと思ったり。”や、“なんか使うタイミングっていうか、逆に機能を落とすんじゃないか。”というように導入コスト、機器の操作性(使いやすさ)、先進技術やロボットとの関わり方(認知機能が低下するのではないか、という不安)、プライバシーなどを懸念する意見も聴取された。海外の調査研究では、倫理的考慮の欠如、他者の評価、操作性(使いやすさ)、カスタマイズの可否が利用者の受容性の要因として説明されている。また、現在の認知症ケアに関する製品・技術の大部分は、プライバシーや正義感・平等性などの明確な倫理的考慮がなく開発が進められているといった事も報告されている。そのため、製品設計や開発の段階から認知症の人や家族の意見を聴取し、利用者のニーズや受容性、使用感の調査などを実施していくことが重要と考えられた。


介護予防の取り組みによる社会保障費抑制効果の検証および科学的根拠と経験を融合させた介護予防ガイドの作成事業

 介護予防の取り組みには、自治体主導で行う教室型運動教室(共助)から、住民が自主運営する自主グループ(互助)、さらには住民個々が実施するウォーキングやジム通い(自助)などがある。本調査の目的は、これらの単独および組合せによる介護予防効果および社会保障費抑制効果を検証することである。加えて、国内外の関連研究のシステマティックレビューを実施することで、介護予防事業の内容、頻度、回数、形態などを明確にする。これら科学的根拠に基づく情報と、有識者の経験を融合させることで、介護予防の課題を抽出し手引きを作成することを目的とした。

 本事業では、1.介護予防の取り組みによる社会保障費抑制効果の検証、2.介護予防に関するシステマティックレビューの実施、3.介護予防ガイドの作成を行った。レビューチームとは別に有識者チームを作成し、各地でどのような形で介護予防が実施されているのかをまとめた。その後、事業1や事業2のシステマティックレビューでまとめられた科学根拠に基づく情報と有識者の経験を融合させ、介護予防の課題を抽出するとともに手引きを作成した。システマティックレビューの結果と有識者の経験の両者をまとめた上で、どのような情報を残し、そして整理していくのかをデルファイ法によって決定した。要介護の身体的な要因は要介護状態、要介護認定によらずおおよそ共通する項目が挙げられたが、要介護認定には心理・社会的要因が多く挙げられた。要介護認定の重度化に関する報告からは、年齢が要介護認定の重症化に影響する因子であることが示唆されるが、十分に検討されているとはいえず今後の検討が必要である。介護予防事業においては、ハイリスクアプローチ、ポピュレーションアプローチとともに要介護状態への移行を予防する効果が示されており、双方の特徴を踏まえて適切に介護予防事業を展開することが求められる。自主グループでは専門家の介入は少なく、住民の中で一定期間の教育を受けたリーダーやファシリテーターが指導に当たることが多く、場合によってはDVDを用いて運動を行うこともある。このように必ずしも専門的な運動指導が受けられているとは言えない環境下であっても介護予防効果は認められており、自主グループの形成を推進し、何らかの形で運動を継続することが 重要であると考えられる。なお、住民主体で運営する自主グループを養成・育成するための取り組みを支援すること、住民がモチベーションを維持することができるように専門職が介入や支援を行うこと、住民の中から介護予防の取り組みを進めるリーダーを育成すること、会場確保等の環境整備を行うことなどが重要であることが示唆された。 


認知症サポート医研修のあり方に関する調査研究事業

目的

 認知症サポート医養成研修の研修カリキュラムや教材をより実践的かつ現場のニーズに合わせた内容に改訂する。また、認知症サポート医フォローアップ研修に関しても検討を行う。

方法

  1. 調査内容の検討:委員会を組織し、本調査研究を行うために必要な調査項目を検討する。
  2. 認知症サポート医を対象としたアンケート調査を行う。
  3. 新たな研究カリキュラムを開発し、試行・検証を行う。
  4. 今後の方向性の検討:調査結果を踏まえ、認知症サポート医養成研修や認知症サポート医フォローアップ研修等に関する課題を整理し、そのあり方に関して検討を行う。

結果

  1. 平成29年度認知症サポート医養成研修修了者と平成28年度修了者で比較を行ったが、受講目的、所属の医療機関種類、主な診療科、認知症サポート医としての活動状況に大きな変化は見られなかった。しかし、認知症初期集中支援チーム、地域ケア会議、認知症カフェなどの地域資源の整備が進み、運転免許更新の診断書作成に関しても制度として定着しつつあることが推定された。
  2. 平成30年度認知症サポート医養成研修受講者のうち32.3%が認知症サポート指導料の算定要件取得のため受講したと回答した。認知症サポート指導料の算定要件取得のため受講した医師の主な診療科は神経内科と脳神経外科が多く、自分の地域の社会資源への関心がやや薄い傾向が認められた。
  3. 地域の困難事例を題材としてグループワークを行う新たな研修カリキュラムに関しては、研修受講者からは概ね良好な評価が得られたが、その一方で委員会等において「かかりつけ医の役割の範囲を明確にした方が良い」等の指摘もあり、更なる改善が必要と考えられた。
  4. アンケート調査の結果、地域の資源の整備が進み、制度が変化する中での認知症サポート医の現状と課題が明らかになった。今後、専門医、認知症サポート医、かかりつけ医、その他の関係機関(地域包括支援センターや介護支援事業所等)の役割分担と連携のあり方につき更に検討を行い、より適切な認知症サポート医養成研修および認知症サポート医フォローアップ研修、かかりつけ医認知症対応力向上研修を模索し続ける必要がある。

認知症初期集中支援チームの設置後の効果に関する研究事業

1)設置されたチームの運⽤状況の把握

 平成27年度から毎年チームの運⽤状況の調査をおこなってきており本年度で4年めとなる。対象者に関しては2/3が⼥性で83%が75歳以上と例年と変化はみられない。また、2/3が独居か夫婦のみの世帯である点も同様で、このチームの対象者は⽇本の平均的は⾼齢者世帯であることを⽰している。
 ⼀⽅、把握経路に関してはこれまでと順位はかわらないものの、本⼈・家族ケアマネジャーや周辺住⺠、⺠⽣委員の⽐率がいずれも減り、その他が増えている。その他の詳細は不明なため推測になるが、全国にチームができたことによって把握経路が多様化していることが推測される。困難事例の⽐率は⽋損値を除くと42%で⼤きな変化はみられなかった。対象者の重症度では認知症⾼齢者の⽇常⽣活⾃⽴度は、72%がIまたはII、障害⾼齢者の⽇常⽣活⾃⽴度は⾃⽴からJまでで87%をしめている。⾝体的、認知機能的には⽐較的軽度だが、介護者、周辺は困ってチームへ相談が来ていることがわかる。認知症⾼齢者の⽇常⽣活⾃⽴度はIIIより⼤きくなると、⾃宅での⽣活が困難になることから、チームが適切な介⼊を⾏えば、在宅⽣活が維持できる対象者であることがわかる。介⼊の結果では認知症の診断は約70%が未診断から約60%が診断され、88%が利⽤していなかったサービス利⽤は70%に近くが利⽤に変化した。アセスメント指標ではDASCは悪化するが、DBD13とJ-ZBI_8はともに改善傾向であり、これもこれまでのデータと変化は⾒られなかった。平成29年度と⽐べて、変化がみられたのは(1)初動期間(把握から初回訪問)平均12.7⽇⇒15.4⽇中央値7.0⽇⇒8.0⽇(2)⽀援期間平均61.5⽇⇒73.3⽇中央値48.0⽇⇒57.0⽇といずれも延⻑している点である。前述のように、必ずしも困難事例が増加しているというデータではないため、平成30年から開始したチームが多いことによる処理時間の延⻑や、地域に社会資源が乏しく、なかなかつなぎ先がみつからないといった可能性が考えられる。またこれを反映して、対象者⼀⼈あたりの所要額は平成28年平均35,204円、平成29年33,426円、平成30年41,121円と、変動があるとしてもこれまでの最⾼値を記録した。
 ⽀援終了後の転帰について、「在宅継続」は⽋損値を除外すると79%であり、8割が狭義での在宅を維持できていた。また今年度は認知症初期集中⽀援チームの機能の⼀つとして市貯村の認知症の⼈を可能な限り早期に発⾒するという機能も求められていることから、そのような取り組みが⾏われているかどうかを訊ねた。また、併せて初期集中⽀援チーム以外の早期発⾒のための試みを⾏っているかどうかを訊ねた。回収率62.3%(1,085/1,741)であった。初期集中⽀援チームでは202票18.6%で⾏っていると回答があり、市町村では認知症初期集中⽀援チームで対応する(に繋ぐ)以外に、早期発⾒の施策を⾏っていますかという問いに対して、549票50.6%が⾏っていると回答していた。これらの中で推奨できる取組について今後抽出、集積が必要である。

2)チームの評価尺度の有⽤性の検証・更なる検討

 チームの評価尺度を仮定でもよいので定めたいという要望はこの事業の当初からよせられていた。すべての市町村にチームが⽴ち上がったこれからは、ますますその必要性が増していると思われる。しかし、全国の市町村におかれたチームは背景の市町村の規模、チームの設置場所やチーム員数など多様であり、⼀つの尺度でチーム状況を評価することは難しい。また、評価尺度は何のために存在するかというと、あるチームが「良い」か「悪い」かを評価するためにあるのではなく、現状を⾃⼰評価し、今後の改善につなげていくことに有⽤でなくてはならない。そこで今回は、チームの属性としての⾃治体特性を基本にチーム属性を現す3つの情報((1)チーム設置機関、(2)設置後の期間、(3)チーム員⼈数)と、仮に評価指標として設定した以下の7つの項⽬(1)⽀援対象者数(活動の⾯)(2)-1把握から初回訪問までの期間(機動性、対応の⾯)-2初回訪問から引継までの期間(機動性、対応の⾯)(3)-1DASCの介⼊時と終了時のスコア差(効果の⾯)-2DBD13の介⼊時と終了時のスコア差(効果の⾯)-3J-ZBI_8の介⼊時と終了時のスコア差(効果の⾯)(4)医療・介護への引継(⽬標達成の⾯)との相関性を検討した。評価指標分析の結果を図表1にまとめている。その結果、たとえばチーム員⼈数の規模によって、⽀援対象者数は異なり、チーム員⼈数が多いほど、⽀援対象者数が多くなる関係にあるといった、あらかじめ想定できる関連もみられたが、初動期間とアセスメント結果(DASC、DBD13、J-ZBI_8)については、それぞれの分散分析の結果より、初動期間が短い⽅が、アセスメント結果が良くなる関係がみられたり、初動期間と医療・介護引継について、医療・介護引継率が⾼位のチームは、初動期間が短い(全体の上位1/3が占める割合が⾼い)という関係性が認められた。この結果から特にチームの状態を⽰すのに有⽤な評価指標としては、チーム活動量を⽰す「(1)⽀援対象者数」、チームの機動性・対応⼒を⽰す「(2)初動期間」、チーム活動の効果を⽰す「(3)J-ZBI_8スコアの変化」、チーム活動の⽬標達成を⽰す「(4)医療・介護引継」を項⽬として整理することとした。また、評価指標について、チーム活動に関係がある(影響を及ぼす)属性や条件を考慮して、(イ)チー設置機関、(ロ)設置後期間、(ハ)チーム員⼈数の3種類でより実際的に⽰すこととした。各チームは⾃分の所属するチームの相対的な位置付けを全体を1/3ずつに分けた場合に(仮に松、⽵、梅と名付けた)どの位置にあるかを確認する。チームの状況によっては項⽬が梅から⽵や松になることが必ずしもチーム⼒の向上を直結しないことがあるが、「(1)⽀援対象者数」、「(2)初動期間」、「(3)J-ZBI_8スコアの変化」、「(4)医療・介護引継」を項⽬に関しては、梅から⽵や松に変化した場合、チーム⼒の向上を反映していると考えられる項⽬である。

3)チームの継続的な研修によるチーム⼒の向上

 平成30年度までの受講者総数は8,377⼈に上り、1,741市町村の97%が受講を済ませている。100%に満たないのは、複数の市町村でチームを作っている場合があるためで、平成30年4⽉からチームが活動を開始するに必要なチーム員はほぼ研修できたと考えられる。新しいチーム員に対する研修は、今後も⼀定数必要と考えられる。チーム員の転勤や、個⼈の事情による離脱は起こりうるし、また少ない⼈数で開始したチームがチームの拡充を図ることもある。また⼤きな都市ではチームそのものの数を増やすこともありうる。厚⽣労働省の調査では、チーム設⽴後の平成30年度研修受講を予定している⼈数は、全国で2,500⼈に上ると推計されており、それに対応できるよう、平成30年度も研修を実施し、31年度以降も研修会の実施を予定している。また、研修テキストの改訂を⾏っており、研修内容にあわせ、新しい項⽬として、前述のように認知症と認知症以外の精神疾患との鑑別の項、若年性認知症に関する知識の項を加えた。また各項⽬を複数の講師が担当できるように、講師の育成もはかっている。フォローアップ研修については、平成29年度末までにほぼ全市町村に少なくとも1チームは設置されたが、平成25年度のモデル事業時にチーム活動を開始したチームから平成30年4⽉に活動を開始したチームまで、1年から6年の経験年数の幅がある。またチーム員研修の伝達形式の導⼊など、初動知識にも差が予想される。また横の情報の不⾜によって、他県のあるいは⾃分の県内でも他のチームの活動内容が分からず、⾃チームの活動を⾒直し、確認することが難しいとの指摘がある。これらの問題点を克服するためにもフォローアップ研修が必要と考えられた。フォローアップ研修は各県や政令指定都市にゆだねられており、今年度は踏み込んだ調査ができていない。次年度以降の課題としたい。

図1.項⽬の関係略図


認知症の研究を効率的・効果的に推進するための体制構築に関する研究事業

目的

 オレンジプランの精神に沿って認知症施策の推進に資する研究を進めるため、認知症当事者、家族、関係省庁、アカデミア、民間企業を含む関係機関等が基礎研究と臨床研究の融合のための共通基盤づくりを目指し、産学官の連携による社会実装体制の充実のための研究を行う。

方法

  1. 調査内容の検討:委員会等や委託先との協議にて本調査研究を行うために必要な調査項目を検討する。
  2. 認知症研究における現状を関係者で共有するためのシンポジウムを開催するとともに、認知症当事者、治験・臨床研究従事者を含むアカデミア、製薬企業等を対象としたアンケート調査を行う。
  3. 今後の方向性の検討:調査結果を踏まえ、認知症研究の現状に関する課題を整理し、共通基盤づくりや社会実装体制の充実のためのあり方に関して検討を行う。

結果および考察

  1. シンポジウム参加者および治験・臨床研究従事者に対するアンケート調査
     日本における認知症研究は基礎研究、臨床研究ともにある程度、世界的に問題ない地位を確保しているという認識をアカデミア、企業とも共有しているものの、基礎研究から臨床研究への橋渡しや臨床研究における成果の社会への還元など、認知症研究の連携という面で問題点があるとする関係者の認識が判明した。
  2. オレンジレジストリ参加医療機関、当事者・家族および製薬企業に対するアンケート調査
     医療機関はレジストリ研究を実施する社会的意義を感じつつも、情報集約や成果活用に至っていないことを問題視し、製薬企業もレジストリ研究への期待は大きいものの、様々な懸念を持っていることが判明した。当事者は自身の状態管理や知識習得といった面でレジストリに期待している一方、治験を含む他研究への参加意欲も高く、製薬企業等が期待する被験者募集への寄与というニーズに合致していた。
  3. 今後の方向性の検討
     委員会等における検討では、国際連携や医療機関間の連携、介護と医療の連携など、「連携」がキーワードとして抽出された。現状ではこの連携に必要な研究基盤整備において、人材・資金の確保や効率的なシステム構築、当事者目線での情報還元や国民への成果の広報等に課題を抱えており、アカデミアだけでなく民間や当事者を含む国民の意見を反映させていくことが重要と考えられた。