平成29年度
注:本ページでは概要のみテキスト化しております。事業の報告および結果につきましてはPDF文書をご覧ください。
目的
介護保険サービスに対する実地指導に係る行政文書の実態について、自治体、事業所を対象に全国調査を行い、実地指導の実施回数や提出書類等の実態を明らかにし、負担感の要因を洗い出すと共に、実地指導を効率的に行っていくための文書削減の可能性について検討を行う。
事業の流れ
事前調査(自治体のウェブサイトにて実地指導時に求められている文書の種類やページ数等を調査、2県1市と4介護保険サービス事業所を対象とした聞き取り調査)を行い、質問項目を選定したのち、以下の要領で質問紙調査と聞き取り調査を実施した。
質問紙調査
- 対象:
自治体:都道府県、政令指定都市、中核市のうち、平成27年度末において実地指導の実績のある113か所
事業所:介護老人福祉施設、訪問介護、通所介護、居宅介護支援各1,500件、計6,000件(地域ごとに層化無作為抽出)
- 調査期間・方法:平成29年12月から平成30年1月、郵送にて調査票を送付し、返信用封筒にて回収。
聞き取り調査
- 対象:
自治体:質問紙調査の結果、自己点検表の有無や事前提出文書の提出期限、実地指導の実施率等を参考に11か所を選出
事業所:全国で事業展開している法人1か所と、聞き取り調査対象自治体にある事業所に協力を依頼し、申し出のあった9か所
- 調査期間・方法:平成30年1月から3月。自治体は個別面接にて聞き取り。事業所はグループ面接にて聞き取り。
結果
自治体調査
回答数:98自治体(うち、3自治体からは実地指導の担当部署ごとに回答有)、計107件
- 自治体により、実地指導を担当している部署が1か所であったりサービス種別によって異なるなど、さまざまであった。
- 実地指導時に提出を求めたり、当日確認する文書は自治体によって異なり、例えば、介護老人福祉施設に対し、職員の研修計画書や資格証明書、勤務体制一覧表といった文書は、ほぼすべての自治体が事前提出、当日提出、当日確認のいずれかで求めているのに対し、職員履歴書は17.8%の自治体が求めていなかったり、通所介護においては資産状況の文書は43.0%の自治体が求めていないなど、さまざまであった。
事業所調査
回答数:2,493件
- これまでに実地指導を受けたことがある事業所はそのうちの76.6%(1,911か所)で、実地指導を受ける頻度はばらつきがみられた。
- 自治体が用意している自己点検表のページ数は、介護老人福祉施設において7ページから203ページ、訪問介護において1ページから58ページ等と、同じサービス種別であってもそのページ数に大きな開きがあった。
聞き取り調査
- 自治体、事業所それぞれから、制度や加算が頻繁に変わることに対する負担の声が多く上がった。
- ICT化については、自治体、事業所共に賛否両論があり、現状ではアクセス制限等により、事業所職員によるPC操作がなければ文書確認ができないことやICT化した文書の印刷を求められることが多いなどの理由により、負担が大きいとの報告があった。
- 実地指導時において確認すべき項目を明記したり、加算の算定要件を満たしているかのチェックシートや様式等が示されると良いとの声が多くあがった。特に、今後ICT化を進めるのであれば、文書の様式を統一してほしいという声が多くあがった。
実地指導時の文書削減・負担軽減に向けた提言
自治体
実地指導と指導監査の整理
実地指導と指導監査の整理をし、実地指導に必要な文書を絞り込むと同時に、同日実施を行うなど効率化を図る。
担当職員の意思統一と制度・加算等の理解の一致を図るとともに、人員体制を整える
- 担当者により指導内容が異なることがないよう、職員間の意思統一と制度・加算等の理解の一致を図る。
- 外部委託や地方局等の部署が実地指導を行う場合には、担当者による指導の差異が生じないよう、より一層研修等を充実させる。
- 専門職の活用や実地指導経験者の再任用などにより、人員体制を整える。
自治体が求める文書の共有
集団指導を「伝達の場」だけにせず、実地指導担当職員や介護保険課職員とのグループワークを通じて日々の疑問についてのQ&Aを行ったり、先駆的取り組みをしている事業所の取組紹介、新規事業所のみを対象とした文書整備の手法説明など、実務に直結する集団指導を実施する。
国
実地指導と指導監査の整理
介護保険法における実地指導と老人福祉法における指導監査を整理する。
確認項目の精査と様式統一の検討
- 事業所や自治体の負担を考慮し、できる限り変更のない安定した制度・加算を目指す。
- 加算の算定要件等をわかりやすい形にするため、実地指導における標準的確認項目を策定し、それに合わせた様式作成の検討を行う。
事業所
法令順守のための積極的情報収集と、事業説明スキルの向上を図る
- 守るべき法令・条例等を職員全員に周知し、必要文書を適切に準備、保管する。
- 法改正等の情報収集や他事業所の取組を学ぶべく、集団指導や研修機会に積極的に参加をする。
- 日頃より事業の説明スキルの向上を図り、実地指導時の質問・指摘に対応する。
認知症の診断および介護に対するAIおよびIoTの活用に関する探索的調査研究
事業結果の概要
1)人工知能を用いた認知症患者の排尿行動解析から生活支援機器のIOT化を図る研究
我が国において、超高齢化にともなう高齢者の転倒・転落(以下、転倒)への対応は、もっとも重大かつ急務の課題である。申請者らが実施した予備研究のデータより、高齢者の転倒原因となる行動要因として最も多いものが「尿意」であった。本研究では、この予備調査を発展させ、日本アイ・ビー・エム株式会社との共同研究により、日本アイ・ビー・エム株式会社が開発した人工知能”WatsonExplorer”を用いて、これまで当センターで集積した3000件を超える転倒転落報告書の大規模テキストマイニング解析を試みた。それによって、認知症患者における転倒と行動意図との関連性を、統合的かつ複層的に調査することを目的とした。WatsonExplorerを用いて、全3439件に対して「排尿意図あり」因子の抽出を行った結果、1425レコード(約41%)が排尿意図に起因することわかった。次に、認知症有無別に排尿意図による事故件数を集計した結果、排尿意図による事故件数は認知症患者に多い一方、その割合は非認知症患者の方が高い傾向にあった。さらに、認知症患者の場合、夜間(21-6時)に排尿意図により転倒する割合が最も高く、重点的なケアが必要であることがわかった。これらの結果は、これまで明らかにされてこなかった認知症患者の行動意図等の内的要因に対する転倒リスクに対して、一定の見解を提示できたと考える。
2)全ゲノム、全RNA発現情報を用いた深層学習による認知症タイプの判別法検討
本実施事業は、認知症患者における先天的生命情報(全ゲノム情報やRNA配列、発現情報等)、および後天的生命情報(臨床データ、脳・生体情報等)を組み合わせることで、機械学習やAIを用いた認知症判別モデルを開発し、認知症患者における生活支援機器を創出することや根本的な疾患の原因を突き止めてエビデンスに基づく創薬や早期予知による発症の阻止を目的として、1)全ゲノム関連解析の施行、解析及び全ゲノム、全RNA配列解析の準備と検討、2)miRNA発現情報と臨床情報の整備及び深層学習による認知症タイプの判別法の検討を実施した。その事業結果の概要について、下記に項目化した。
- 第一段階として、日本人に特化したジャポニカアレイによる一塩基多型の全ジェノタイピングデータの取得を行ってきた。現在までに約7,132例(アルツハイマー病;AD2,391例、認知機能正常群;Control3,346例、軽度認知障害;MCI601例、血管性認知症;VaD88例、前頭側頭型認知症;FTD25例、レビー小体認知症;DLB128例、その他553例)の全ゲノムジェノタイピングデータを取得した。
- ここで得られたジェノタイプデータから、試験的にAD2,250例、コントロール1,848例を用いて、1000ゲノムデータを用いたインピュテーションを施行し、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を施行したところ、既報通りAPOE座位において非常に有意なADとの関連が認められた。また、新規に示唆的な有意性(P=10-5未満)を示す座位が第3、5、8、10、13、15、18番染色体などに認められ、これらの中には低頻度かつ東アジア人にしかアレル頻度が認められない座位も存在していた。
- 全RNA配列の取得については、約200例のバフィーコートより高品質なRNAを取得し、全RNA配列解析用のライブラリ作製を進めてきた。全RNAの質の指標であるRNAintegritynumberは概ね7.0以上が得られており、RNAライブラリの質も良好であった。
- 2,000名を超える認知症患者および健常高齢者の血液中の約2,500種のmiRNA発現量の解析データと臨床データから機械学習を行うことで、AD、VaD、DLB等の、疾患タイプを判別する予測モデル開発の検討を進めた。今回はmiRNA発現量の主成分に着目し、その違いが各種認知症疾患を分別できる可能性があるという仮説に基づき、検討を行った。結果として、AD、VaD、DLBとコントロールを判別する予測モデルの構築を行ったところ、AD、VaD、DLBにおける探索セットではこのアルゴリズムの高評価な統計値が得られ、再検証セットでも同様の統計値が得られた。これらの正確度(Accuracy)、感度(Sensitivity)、特異度(Specificity)も非常に高値を示した。
GWASについては今後サンプル数をさらに増加すると共に、日本人3,500人から得られたインピュテーションのリファレンスパネルを用いることによりさらに有意な新規座位が得られるものと考えられるとともに、全RNAについては次世代シークエンサーにより全RNA配列データを取得する予定である。その後これらの統合解析から機械学習、AIによる認知症予知予測法の確立を目指すと共に、ドラッグリポジショニングによる既存治療薬の認知症への適応、新規創薬のターゲット探索を進めていく。miRNAによる疾患予測モデル構築に関しては、現在、本モデルは前向き患者コホートによる認知症発症予測における精度の確認を進めている。また、今後は日本人特有の全ゲノムジェノタイピングデータ、全RNA配列解析データ、miRNA発現データおよび画像データも含めた詳細な臨床データを使用するビックデータを用いた統合解析を行い、深層学習およびAIによりさらに正確な疾患診断法や革新的な治療法の確立を見据えた研究開発が期待できる。
認知症サポート医に関する研修のあり方に関する調査研究事業
目的
認知症サポート医の活動状況に関する課題等を整理し、認知症サポート医のあり方や役割について検討するとともに、それらを踏まえた研修のあり方に関する提案を行う。
方法
- 調査内容の検討:委員会を組織し、本調査研究を行うために必要な調査項目を検討する。
- 都道府県・指定都市、認知症サポート医を対象としたアンケート調査を行う。
- 今後の方向性の検討:調査結果を踏まえ、認知症サポート医の活動や活用に関する課題を整理し、研修のあり方に関して検討を行う。
結果
- 認知症サポート医を対象とした調査
近年は認知症初期集中支援チームに協力するためと認知症ケア加算対象の院内チーム設置のためを目的として受講する医師が増えており、医療機関としては無床診療所と一般病院に所属する医師の受講が増加していた。また、認知症初期集中支援チームに協力している認知症サポート医は可能な認知症診療が全体を上回っており、連携や研修に関しても機能を発揮していた。
- 都道府県・指定都市を対象とした調査
認知症サポート医養成研修受講者に関する課題として認知症サポート医の目的や役割を理解してもらいにくい、認知症ケア加算の影響で病院医師の受講希望者の増加、自治体の希望と申込者の受講目的のズレの順に多かった。受講者を選定するルールや要件を決め、主体的に受講者の選定に関わっていると想定された自治体は約半数であった。
- 今後の方向性の検討
委員会において認知症サポート医の役割として地域におけるコーディネート機能を担うことが求められ、認知症の人を初期から終末期まで支えていく視点、地域の認知症の人全てが適切な医療や介護等のサービスを受けて生活できるような地域づくりの視点も求められた。このような役割を果たすことができるように研修においては医学的な診断や治療にとどまらない包括的なアセスメントに関する講義や社会的に複雑化した認知症の事例や人権や意思決定に関しても多面的に議論するようなグループワークを取り入れる必要が示された。
認知症初期集中支援チームの効果的な活用に向けた調査研究事業
1)初期集中⽀援チーム・チーム員に対する継続⽀援のあり⽅の検討
平成30年度以降、全国に設置されたチームが効果的に運⽤・活⽤されるための継続的な⽀援、具体的にはチームおよびチーム員に対する継続研修・フォローアップ研修のあり⽅等について、事業内に設置した委員会を中⼼に検討し、ともに必要という結論を得た。継続研修に関しては、2)に⽰したテキスト改訂を、新規に⾏うフォローアップ研修に3)に⽰した事例検討素材を作成した。
2)チーム員研修テキストの改訂
チーム員研修スタート時に作成し、これまで実施要綱の改正等に伴い微修正を⾏ってきたチーム員研修テキストについて、新規内容の追加、項⽬の⼊替・統合などを含めてテキストの改訂を⾏った。新しい項⽬として、認知症と認知症以外の精神疾患との鑑別の項、若年性認知症に関する知識の項を加えた。
3)チーム活動の事例収集(フォローアップ研修における事例検討素材の作成)
現に活動しているチームのご協⼒を得て、チーム活動の事例(対応が難しかった事例、対応がうまくいった事例)を収集し、設置直後またこれから設置されるチームの活動に資する情報として整理した。また、収集した事例の⼀部を⽤いて、フォローアップ研修等で⾏う事例検討に活⽤できるように整えたグループワーク⽤の素材も作成した。
4)チーム活動実績のデータ収集および整理
チーム活動実績データを収集するとともに、平成30年度以降も各チーム・市町村において、全国統⼀のチーム活動指標によって、チーム活動実態を把握・評価ができるツールとして、全市町村に対してチーム活動実績をデータ⼊⼒するソフトウェアを配布・提供した。715チーム、1,951⼈のデータを収集した。結果は例年と⼤きな差異はなく、認知症者の受診率、診断率の向上、介護サービス利⽤率の改善、介護負担尺度、⾏動・⼼理症状評価尺度の改善等、初期集中⽀援チームの有⽤性が⽰された。