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平成28年度

注:本ページでは概要のみテキスト化しております。事業の報告および結果につきましてはPDF文書をご覧ください。

認知症サポーターを国際的に展開するための調査研究事業

1.事業の目的と方法

 認知症の増加はDementiaCrisisと呼ばれ、地球規模のテーマである。本邦初の儘れた普及啓発の仕組みである認知症サポーターは、国民の認知症の理解と支援を促進する制度で、すでに800万人を超えている。アジアなど急速に高齢化が進む地域でこの仕組みを今後国際展開していくために、1)認知症にやさしい町づくりにおける国内・国外の取組の情報収集、2)認知症サポーター養成講座を受講後の意識・行動の変容に関する質問紙調査(調査対象:大分オレンジカンパニー(302社)の従業員各3名:計906名)、3)認知症にやさしい町づくりを推進する自治体(2か所)を対象とした聞き取り調査、4)社会的課題に対する認知症サポーターによる支援・活動に関する意見交換を行った。

2.事業結果の概要

  1. 我が国の取組の状況と世界、とくに認知症サポーター養成講座の要素を取り入れ、「Dementia Friend」プログラムとして展開している英国の状況について情報収集をすべく、G7神戸保健大臣会合における公式サイドイベントに参加し、意見交換を行った。当事者から、支援を受けながら自立した生活を送ることの重要性が報告された。

  2. 質問紙による認知症サポーター養成講座を受講した者たちの意識や行動の変容についての実態調査を、大分県が実施している「大分オレンジカンパニー(認知症にやさしい企業・団体)登録事業」に参加している企業・団体を対象に行った。調査の実施に当たり、国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会による審査、承認を得た。調査客体数(対象事業所数)は302件で、1事業所当たり3通の調査票を送付し、従業員3名に回答を頂くよう依頼したところ、3通は対象者がいないとの理由により返送されたため、送付数の合計は903通であった。回答は518名から返送されたが、半数以上の質問に回答のなかった2件は欠損扱いとしたため、分析対象は516件(回収率57.4%)であった。その結果、認知症サポーター養成講座を受講することで、従業員の認知症に対する意識や行動の変容が生じ、自分自身や身内への配慮、次いで業務上で関わる、もしくは地域で暮らす認知症の人に対する意識・行動の変化に移っていくことが確認された。

  3. 聞き取りによる実態調査として、若い世代を中心に認知症サポーター養成講座を開催している愛知県みよし市と、認知症サポーター養成講座の上級講座をいち早く取り入れ、認知症にやさしい町づくりに取り組んでいる京都府綾部市を対象に闘き取り調査を行った。その結果、若い世代に向けて認知症サポーター養成講座を開催することの意義や効果や、認知症サポーター養成講座の上級講座を設けることで、地域住民が自主的に活動を行っていく姿などが確認された。

  4. 高齢者の運転免許に関するシンポジウムを開催し、意見交換を行った。社会的課題となっている高齢者の運転免許の課題に対し、免許返納後の萬齢者の生活の支援を積極的に行っていくことや自主返納を促すことの重要性が確認された。

3.全体のまとめと考察

 本調査を通じ、認知症サポーター養成講座を通じて年代や職業等を問わず、認知症への理解が深まり、自分自身や周囲への配慮、活動等に結びつくこと、そしてその活動は社会的課題となっている高齢者の自動車運転等を含む、生活の幅広い範囲における支援につながる可能性が示唆された。認知症サポーター養成講座は、すでにその要素が英国に取り入れられ、「Dementia Friendプログラム」として発展、英国から他国にも伝わっているが、ぜひ我が国の取組も積極的に発信し、世界における「認知症にやさしい町づくり」を推進していくことが期待される。 


認知症予防についての調査研究事業

事業名

 認知症予防についての調査研究事業

事業実施目的

 認知症予防対策として身体、知的、社会活動促進の有効性が示唆されており、これらの活動を担保する社会的ネットワークの構築や社会参加できる場を創出していくことが継続した認知症予防活動を実現するために必要とされる。ただし、これらの活動の促進が、軽度認知障害(mild cognitive impairment: MCI)を有する高齢者の認知機能改善に有効であるかどうは、研究間で結果が異なり結論が出されていない。本研究では、認知症予防プログラムを活動内容(身体活動、知的活動、社会活動)と対象者(MCIと健常高齢者)で分類してシステマティックレビューおよびメタアナリシスを実施した。また、レビューの結果から、効果が高いと期待されるプログラムが自治体の事業として実現可能かどうかを介護予防事業担当者にアンケート調査し、プログラムの実施可能性を検討した。

事業実施予定期間

 平成28年5月31日から平成29年3月31日まで

調査方法

 システマティックレビューは、身体、知的、社会活動の各活動が介入方法に用いられ、効果指標として認知機能検査が含まれたランダム化比較試験を系統的に検索した。分析は、全対象者、および軽度認知障害(mild cognitive impairment: MCI)と健常高齢者のサブグループ別に実施した。また、アンケート調査は、レビューの結果から有効かつ実効性の高い認知症予防プログラム案を各活動別に作成し、活動内容、プログラム実施者、頻度、期間について実施可能性と、その理由について介護予防事業担当の自治体職員にアンケート調査した。 


認知症初期集中支援チームの効果的な活用に向けた調査研究事業

1)市町村のチーム設⽴状況および活動状況の把握

 平成29年1⽉時点で、未設置市町村988のうち設置を準備していると回答したのは550市町村であった。設置の予定がないと回答した地域と回答がなかった地域をあわせると438市町村にのぼり、未回答地域がすべて準備なしではないとしても、いまだに約四分の⼀の市町村で準備が進んでいない点は憂慮される。

2)チームの対応困難事例、成功事例の集積、阻害因⼦等の検証

 今年度は島嶼地や⼭間地を中⼼に⼈的資源が不⾜しがちな地域で訪問巡回ヒアリングを⾏った。複数の地域でチームを共有したり、サポート医を共有するといった⼯夫がみられ、⼈的資源が少ないことをカバーしてチームを⽴ち上げており、他地域の参考になると考えられた。アンケート調査から本年度までにチーム未設置となった・なっている理由をみると、「認知症サポート医の確保・調整に時間を要している」が36.7%と最も多く、次いで、「⾏政内部の合意形成に時間を要している」が32.6%、「チーム設置数・場所の検討(委託先の調整を含む)に時間を要している」が26.0%という状況であった。また4番⽬に具体的なチーム活動・運営の⽅法が分からないがあがってきている。サポート医に関しては地域医師会で確保が困難な場合には県医師会に相談し、周辺市町村のサポート医を当⾯共有していく⽅法が考えられる。今回の島嶼部での調査が参考になるかもしれない。また「具体的なチーム活動・運営の⽅法が分からない」に関しては同様の規模ですでに活動を開始しているチームを参考にするとよいと思われる。

3)初期集中⽀援チームサービスの評価指標の検討

 今年度もさらにグレードアップした実績報告⽤プログラムを各都道府県に配布した。主眼は、データの経年的な継続性と都道府県が管理しやすいような、データの集約性である。これまでのデータと変化がみられる点をあげると、把握経路は、これまで「家族」+「本⼈」が50%近くを占めていたが、40%程度に減少し、変わって「ケアマネ」や「医療機関」が増加したこと、「把握」から「初回訪問」の⽇数が短縮したこと、⼀⽅⽀援期間がややのびており、その背景には医療機関や認知症疾患医療センターでの症例が⻑期化しやすいことが明らかになった。医療・介護につながるまでの⽇数は短縮化しているが、医療未利⽤者が医療につながる割合は減少しており、より引継しやすい介護への引継にシフトしていることがうかがえた。認知症に診断に⾄った例は昨年度の62.9%から70.3%と上昇していた。⼀⽅このチームの有⽤性を⽰す指標として重視しているDBD13、Zarit8は今年度もチーム介⼊後に改善しており、在宅継続率も⽋損値を除外すると75%が継続できていた。またモニタリングによる脱落率は9から10%で不変であった。今年度はこれらのデータをチームがどこに置かれているか分けて分析できるようになった。認知症疾患医療センターや病院におかれているチームでは困難例が多く終了までに時間を要する例が多いことが⽰唆された。

4)チーム員研修の内容の評価・改良、⾃治体に対しての提案

 伝達研修への対応:今年度は講師の了解を得て講義をビデオ収録し、⻑寿医療研究センターホームページ上で視聴できるようにした。これによって伝達講習の代替ツールとして⽤いることは薦めていないが、伝達講習の講師となる際に内容確認のツールとなることが期待できる。
 平成30年度以降、全国にチームが⽴ち上がった後の伝達講習のあり⽅を今後も継続して検討していくことが必要である。