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倫理・利益相反委員会受付番号No.1982

「バイオバンクコホートを活用した血液凝固異常症の解析」についてのお知らせ

 国立長寿医療研究センターでは、「国立長寿医療研究センターバイオバンク」への研究参加同意をいただいた方を対象とした生命科学・医学系研究を実施しております。バイオバンクでは、対象者の皆様の様々なデータを老化・老年病予防を目的とした研究に利用しております。尚、対象者の皆様からは、様々な調査・検査結果を老化・老年病予防を目的とした将来の研究に使用することについて、同意を得ております。
 この度、国立長寿医療研究センターにおいて「バイオバンクコホートを活用した血液凝固異常症の解析」を実施することとなりましたので、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針に基づき、研究実施の情報公開をいたします。
 本研究に関するお問い合わせなどがございましたら、下記の「本研究に関するお問い合わせ先」までご連絡いただけますようお願いいたします。

2025年11月10日

1.研究課題名

「バイオバンクコホートを活用した血液凝固異常症の解析」(倫理・利益相反委員会受付番号No.1982)

本研究課題は、国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会による倫理審査を経て、国立長寿医療研究センター理事長の実施許可を受けております。

2.研究機関の名称および研究責任者

  • 国立長寿医療研究センター 血液内科部 部長 勝見章

3.研究分担者

国立長寿医療研究センター

  • 研究所 メディカルゲノムセンター センター長 尾崎浩一
  • 血液内科部 技術補佐員 伊藤美由紀

4.本研究の意義、目的

背景

海外では高齢者の貧血は転倒、認知力低下、うつ状態、フレイル、死亡率等との関連が報告されています。高齢者における貧血の原因は栄養性、慢性炎症、造血器疾患等が挙げられますが、もっとも多い原因は出血です。先天性出血素因のうち10%から44%が血友病、フォンビルブランド病(VWD)以外の稀な出血性疾患です。近年希少血液凝固異常症(rare bleeding, thrombotic, and platelet disorders:rare BTPD)が注目され、今までに約100種類の遺伝子の関与が報告されています。また静脈血栓塞栓症(VTE)の約40%が遺伝的素因によると考えられていますが、既知の遺伝子異常に加えて従来血栓症とは無関係と考えられていた種々の遺伝子の一塩基置換(SNV)93個の関与が報告され、VTE発症に関与する多因子として注目されています。その多くは血栓症との関連が未報告の遺伝子ですが、日本で同様の解析はなされていません。これらの背景をふまえて本研究ではバイオバンクコホートを活用し、全ゲノムシークエンス(WGS)データと、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を用いた血液凝固異常症の解析を計画しました。

目的

  1. WBSを利用した希少血液凝固異常症遺伝子変異、VTE関連SNVの解析
  2. 上記1.と臨床症状との照合と統計解析
  3. 上記1.で血漿による活性・抗原測定可能な場合には活性・抗原値測定
  4. 血小板数、血小板サイズのゲノムワイド関連解析(GWAS)

意義・研究の科学的合理性の根拠

本研究は、当センターの中長期目標のうち「バイオバンクと連携した老化・老年学に関するコホート研究」に合致するものです。SNVを利用した主成分分析では、日本人のゲノム構造は欧米人、アフリカ人のみならず中国人とも異なることが明らかになっており、日本人におけるBTPD遺伝子変異の把握が我が国独自の研究として高い価値を持つものと考えられます。また本研究で日本人における新たな出血・血栓症ハイリスク群を同定することは、入院、周術期などの発症予防的観点から独自性、創造性を持つと考えられます。

5.本研究の研究計画

本研究は、バイオバンク既存試料・情報を用いた観察研究であり、介入、新たな侵襲を伴いません。

  1. BTPD関連遺伝子として、100遺伝子(凝固因子23、抗血栓蛋白11、血小板異常66遺伝子)を調査対象とします。バイオバンクに保存されている全ゲノムシークエンスデータ4,000人について、これらの遺伝子上でのバリアントの有無を調査し、造血器疾患は除外します。バリアントの認められた症例に対し、既知の遺伝子データベースにおける病的変異を有する症例を抽出します。また先行研究からVTE関連SNVを持つ症例を抽出します。
  2. 遺伝子変異を持つ群と、変異を持たない対照群の電子カルテ情報から
    1)出血性疾患病名、深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症病名、カルテ情報からの出血・血栓症歴の有無
    2)量的データ:PT、APTT、FBG、血小板数、平均血小板容積(MPV)、血小板分布幅(PDW)
    を利用します。線形回帰分析およびロジスティック回帰分析を用いて、各バリアントの症状、量的データに対するeffect size(効果量)ならびにオッズ比(OR)を算出します。
  3. GWASによる血小板数、血小板サイズの感受性領域の同定
    アジア特有の低頻度SNP約65万をカバーする、Asian Screening Array(ASA)12,050例を利用します。採血データより抽出したPLT、MPV、PDW値を分位正規化し、線形回帰分析を行い、統計的に有意な頻度差を示す遺伝子多型を、GWASにより網羅的に検索します。抽出された関連候補バリアントの解釈を行い、遺伝子発現に与える量的効果の解析などを行います。それ以外にタンパク質の相互作用、変異の血小板数、血小板サイズに対する累積的リスクスコアを算出します。

1.2.3.の研究で、のべ12,050例を対象とします。

6.本研究で使用する試料・情報

本研究はバイオバンク既存試料・情報を用いた観察研究であり、介入、新たな負担を伴いません。臨床情報として病名、出血・血栓性疾患の罹患歴を使用します。既存試料・情報の利用開始予定日は、倫理・利益相反委員会承認後の2025年12月以降です。

7.研究期間

2025年11月10日から2031年3月31日

8.対象となる方・研究対象者として選定された理由

  1. 当センターバイオバンク登録者のうち、明らかな血液疾患、出血性疾患の患者さんを除外した方。
  2. 当センターバイオバンクに保存されている全ゲノムデータとジェノタイピングアレイデータ、臨床情報。

9.研究対象者に生じる負担ならびに予測されるリスクおよび利益

バイオバンク事業に同意を頂いた方の検体・情報を研究に利用するのみであり、プライバシーの保護についても十分に配慮されるため、対象者の方に新たに発生する負担はありません。予測されるリスクは個人情報の流出ですが、個人から得られたデータは、個人が特定できないIDにより管理し、解析の際はID化データを用いるため、個人情報流出の可能性は極めて低いです。また研究成果は、集団として解析した結果のみを示すため、研究成果から個人が特定されることはありません。
対象者個人に対する直接の利益も想定されませんが、本研究から健康に有益な情報が発信された場合、その情報を個人の健康増進に役立てることにより、間接的に利益が得られる場合があります。

10.研究実施について同意しないことおよび同意を撤回することの自由について

対象者の方ご自身の検査結果が、本研究課題に利用されることに同意いただけない場合には、研究に使用する検査結果からあなたにかかる情報を削除いたしますので、下部に記載されているお問い合わせ先にご連絡いただけますようお願いいたします。研究期間の途中であっても構いません。
情報の削除依頼をしたことにより、不利益な取扱いを受けることはございません。ただし、ご連絡をいただいた時点で、研究結果が学会報告や論文等ですでに公開されている場合などには、解析結果を削除できないことがあります。

11.本研究に関する情報公開の方法

この掲示により、本研究に関する情報公開とします。本研究で得られた研究結果は国立長寿医療研究センターが実施する研究として、学会報告・論文投稿にて発表します。また研究成果の内容によってはホームページ掲載や広報紙にて、対象者および一般住民の方に向けた内容で公表します。

12.研究計画書等の閲覧について

他の対象者の個人情報保護および本研究の独創性の確保に支障がない範囲内で、研究計画書および研究の方法に関する資料を閲覧することができます。閲覧を希望される場合には、下部に記載されているお問い合わせ先にご連絡いただけますようお願いいたします。

13.個人情報等の取扱い

生体試料と医療情報を研究に活用させていただく場合、個人を特定できなくするためのID化等の操作を行い、プライバシーの保護に細心の注意を払います。具体的には、いただいた生体試料および医療情報から個人が特定できる情報(氏名や生年月日等)を消去し、新たな符合または番号を付してID化します。この符合や番号が誰の生体試料や医療情報と対応しているのかを示す「対応表」は、法令にのっとって個人情報管理者や個人情報管理補助者によって厳重に管理されます。万一、個人情報の漏えいなどにより損害をこうむられた場合は、関連する法律、および遵守すべき指針に即して適切に対処いたします。また研究成果は集団として集計した結果を学会報告や論文として発表しますので、解析結果から個人が特定されることはありません。

14.試料・情報の保管および廃棄の方法

長寿医療研究センターバイオバンクより分譲された試料・情報については、学会や論文等での発表から10年の間、国立長寿医療研究センター血液内科部にて施錠保管します。保管期間満了後は速やかに試料・情報を廃棄します。バイオバンクが最終的にその使命を果たし、閉鎖される場合は、保管されていた試料および診療情報などは倫理・利益相反委員会の判断を受けて、適切な機関に移譲あるいは廃棄されます。

15.研究の資金源等、研究機関の研究に係る利益相反および個人の収益等、研究者等の研究に係る利益相反に関する状況

メディカルゲノムセンター・バイオバンクのすべての情報・試料は、国立長寿医療研究センターの運営費や公的研究費(競争的研究資金等)を主財源として収集しており、国立長寿医療研究センターが管理・運用を行っています。本研究は、国立長寿医療研究センター所属の研究者による共同研究であり、国立長寿医療研究センターの長寿医療研究開発費と日本学術振興会科学研究費補助金を資金源とします。本研究に参加する研究者間に一切の利害関係は無く、研究費について開示すべきCOI(利益相反)はありません。

16.研究対象者等およびその関係者からの相談等への対応

本研究に関するご不明点などございましたら、下部に記載のお問い合わせ先までご連絡ください。

本研究に関するお問い合わせ先

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター

血液内科部 部長 勝見章

〒474-8511 愛知県大府市森岡町七丁目430番地

電話:0562-46-2311(代表)