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「グリア細胞の活性化に関わる認知症の血液バイオマーカーの開発」についてのお知らせ
国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部では、下記の人を対象とする生命科学・医学系研究を実施しております。
本研究は、国立長寿医療研究センターバイオバンクより分譲を受けた試料・情報を用いて解析を行うものです。
国立長寿医療研究センターバイオバンクでは、お預かりした試料・情報の利用にかかる包括的同意をいただいているため、このような研究は、厚生労働省・文部科学省・経済産業省の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の規定により、対象となる方のお一人ずつから直接ご同意をいただかずに実施することができますが、研究内容の情報を公開することが必要とされています。このお知らせをもって研究内容の情報公開とさせていただきますので、ご理解いただけますようお願いいたします。
本研究に関するお問い合わせなどがございましたら、下記の「本研究に関するお問い合わせ先」までご連絡いただけますようお願いいたします。
2025年3月4日
記
「グリア細胞の活性化に関わる認知症の血液バイオマーカーの開発」(倫理・利益相反委員会受付番号No.1900)
本研究課題については、国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会による倫理審査を経て、国立長寿医療研究センター理事長の実施許可を受けております。
アルツハイマー病をはじめとする認知症では、脳内のグリア細胞が活性化した神経炎症が認められ、脳内の炎症状態と認知機能の低下がよく相関するという報告があります。グリア細胞の活性化が続くと、神経機能の失調や神経変性を引き起こす可能性があるため、グリア細胞の活性化に関わる血液バイオマーカーの確立は、画期的な診断法や治療法の開発につながると考えられます。私たちは、アルツハイマー病モデルマウス脳内において、アミロイド斑に対して活性化したグリア細胞で、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の消費が増加し、NAD+生成の材料となる血液中のニコチンアミドの濃度が顕著に減少することを報告しました。そこで本研究では、血液中のニコチンアミド濃度の変化と、グリア細胞の活性化の指標となる反応性アストロサイトマーカー(GFAP)、アストロサイトで産生され神経細胞に供給される乳酸の変化、さらに神経変性マーカー(NfL)や認知機能評価等を統合的に解析し、認知症において脳内の慢性炎症を反映する血液バイオマーカーの開発を試みます。
本研究では、国立長寿医療研究センターバイオバンクに保管されている血液試料(血漿)を使用します。血液試料は、国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部が提供を受け、血中物質の測定を行います。本研究において使用する情報は、試料番号、年齢、性別、病歴に関する情報(診断、発病期間、治療経過、処方歴、感染歴)、画像データ、神経心理学的検査データ、血液検査データ、APOE遺伝子型になります。これらの臨床情報は、国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部が提供を受け利用します。
上記の試料・情報については、被験者保護の観点から、倫理・利益相反委員会の承認から1ヶ月以上経過した後に、利用・提供予定です。
本研究では、国立長寿医療研究センターバイオバンクに保管されている血液試料(血漿)を用いて血中物質の測定を行い、その測定データや臨床情報を統合して解析します。
本研究では、血漿中のニコチンアミドの含有量を、高速液体クロマトグラフィー・質量分析法を用いて、乳酸の含有量を市販の測定キットを用いて測定します。併せて、すでに確立されており、グリア細胞の活性化の指標となる反応性アストロサイトマーカー(GFAP)と、神経変性マーカー(NfL)の測定も行います。これらの測定データと、認知機能評価(MMSEスコア)やAPOE遺伝子型などの臨床情報を統合し、血中ニコチンアミド/乳酸の変化が、認知症において脳内のグリア細胞の活性化や認知機能を反映するバイオマーカーとして有用であるか検証します。
2025年3月4日から2028年3月31日
国立長寿医療研究センターバイオバンクに保管されている血液試料(血漿)から、以下のように、研究対象となる方の試料を選定します。
臨床診断が確定している、認知機能健常高齢者の方(50歳以上)、およびアルツハイマー病患者の方(MMSEスコア23以下)について、可能な限り、性別、年齢を合わせて各50例を選定し、血中ニコチンアミドと乳酸、反応性アストロサイトマーカー(GFAP)や神経変性マーカー(NfL)などの測定データや臨床情報を統合して解析します。
ただし、臨床的観点から、以下の項目に該当する方については、本研究の測定対象から除外します。
本研究では、国立長寿医療研究センターバイオバンクに収集されている既存の試料・情報を利用するのみであり、プライバシーの保護についても十分に配慮されるため、新たに発生する不利益ならびに危険性は想定されません。また、対象者個人に対する直接の利益も想定されません。一方、グリア細胞の活性化に関わり脳内炎症を反映する血液バイオマーカーを開発できれば、アルツハイマー病など認知症の画期的な診断法や治療法の開発につながると考えられます。
研究対象となる方、またそのご遺族において、研究対象者となる方の血液試料と情報が、本研究に利用されることにご同意いただけない場合には、研究に使用する情報から研究対象者となる方にかかる情報を削除いたしますので、下部に記載されているお問い合わせ先にご連絡いただけますようお願いいたします。研究期間の途中であっても構いません。また、情報の削除依頼をしたことにより、不利益な取扱いを受けることはございません。ただし、ご連絡をいただいた時点で、研究結果が学会や論文等ですでに公開されている場合などには、解析結果を削除できないことがあります。
本掲示をもって、本研究に関する情報公開といたします。研究結果の公開については、ホームページ掲載、学会発表、論文発表などにて行う予定でおります。
他の研究対象者等の個人情報等の保護および本研究の独創性の確保に支障がない範囲内で、研究計画書および研究の方法に関する資料を閲覧することができます。閲覧を希望される場合には、下部に記載されているお問い合わせ先にご連絡いただけますようお願いいたします。
本研究の対象となる方の血液試料と情報には、採取時に患者名等の個人情報とは関係のない試料番号が付され、厳重なセキュリティー下で保管されています。個人情報と試料番号の対応は、国立長寿医療研究センターバイオバンクのスタッフのみがアクセス可能なデータベース(外部から遮断された専用サーバで、アクセスにはスタッフ個別の認証が必要なもの)でのみ確認することができ、それ以外の者に個人情報が漏洩しないよう管理されています。本研究において利用する情報は、試料番号、年齢、性別、病歴に関する情報(診断、発病期間、治療経過、処方歴、感染歴)、画像データ、神経心理学的検査データ、血液検査データ、APOE遺伝子型のみであり、個人を特定できる情報は含まれません。
また、研究成果は学会や論文として発表されますが、その際にも研究の対象となられた方を特定できるような内容を含むことはございません。
試料・情報の提供に関する記録は、国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部にて、コンピュータ、およびバックアップ用記憶媒体に、当該論文等の発表後10年間まで保管します。
匿名化された研究データについては、国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部のコンピュータ、およびバックアップ用記憶媒体に、当該論文等の発表後10年間まで保管します。匿名化されたデータと個人の識別情報との対応表については、国立長寿医療研究センターバイオバンクにてパスワードを設定したファイルとして管理し、外部と接続できないコンピュータで厳重に取り扱います。保管期間満了後は、専門家とも相談しながら、保存媒体ごと安全な形でデータを廃棄します。
試料は、混合や盗難、紛失等が起こらないように、本研究の関係者のみがアクセスできる国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部、バイオマーカー開発研究部、中枢性老化-骨格筋代謝-運動機能制御研究プロジェクトチームの試料保管庫(施錠可能な冷凍庫)にて保管します。解析等に使用した試料は、当該論文等の発表後5年間まで保管し、保管期間満了後は医療廃棄物として廃棄します。
本研究は長寿医療研究開発費によって行われ、研究に係る利益相反は生じません。
国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部 飯島浩一にて対応いたします。
本研究で実施する、高速液体クロマトグラフィー・質量分析法を用いたニコチンアミドの測定は、国立長寿医療研究センターにて血液試料(血漿)を選定、調製した後、業者に試料を送付し、測定業務を委託します。研究責任者(国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部 飯島浩一)が担当者と調整し、業務の進捗を管理します。
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
神経遺伝学研究部 部長 飯島浩一
〒474-8511 愛知県大府市森岡町七丁目430番地
電話:0562-46-2311(代表)