ホーム > 研究の推進 > 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針に基づく研究実施の情報公開 > 倫理・利益相反委員会受付番号No.1797
国立長寿医療研究センター看護部では、下記の人を対象とする生命科学・医学系研究を実施しております。
本研究は、通常の診療で得られた情報(電子カルテなど)から必要な情報を取り出し、まとめることによって行われるものです。
このような研究は、厚生労働省・文部科学省・経済産業省の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の規定により、対象となる患者さんのお一人ずつから直接ご同意をいただかずに実施することができますが、研究内容の情報を公開することが必要とされています。このお知らせをもって研究内容の情報公開とさせていただきますので、ご理解いただけますようお願いいたします。
本研究に関するお問い合わせなどがございましたら、下記の「本研究に関するお問い合わせ先」までご連絡いただけますようお願いいたします。
2024年5月20日
記
「回復期リハビリテーション病棟における後期高齢者の在宅復帰率に影響を与える要因の検討」
(倫理・利益相反委員会受付番号No.1797)
本研究課題については、国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会による倫理審査を経て、国立長寿医療研究センター理事長の実施許可を受けております。
我が国の 65 歳以上の人口は2021年9月には29.1%で、2060年予測では39.9%と少子高齢化の益々の進行が見込まれています。2013年には65歳以上の高齢者割合が25.1%となり、総人口の4分の1を超えました。これは、既に我が国がどの国もこれまでに経験したことがない超高齢社会に足を踏み入れていることを意味し、高齢者が、いかに在宅で安心・安全に生活できるかを検討し、その対応を考えることは重要な課題です。
我々は、高齢者の望むその人らしい生活を実現させることを目標に、回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ病棟)において、退院支援をしています。具体的には、入院早期から、疾病のみならず臨床背景や環境などについて詳細な評価を行っています。適切な予後予測に基づき、日常生活活動(Activities of Daily Living:以下ADL)の再獲得と早期社会復帰を目標に適切な退院先を選択しています 。しかし、患者さんやご家族が「自宅復帰」を希望し回リハ病棟に入院したにもかかわらず、退院時期には自宅以外の退院先を選択することが多くなっています。またその傾向は身体機能、認知機能などの低下から後期高齢者に顕著です。このような背景から、「後期高齢者は、疾病に罹患後になぜ在宅復帰できないのか」という臨床疑問を持つに至りました。
先行する関連研究においては、65歳以上の脳卒中高齢者に焦点を当て、カルテレビュー(日頃の医療行為の適切性とその記録の適切性を複数カルテにより審査すること)から退院先への影響要因を明らかにすることを目的したものがあります。それらの結果では、年齢や経口摂取の可否、歩行の可否、ADL、認知機能(大島, 2012)、介護の構成人(小嶌, 2015)などの要因が報告されているものの統一した見解は得られておらず、急性期、回復期、維持期の各病院の機能が異なることや、病期や生活背景などの対象者の多様な特性によって影響する要因は異なることが示唆されています(青木,2019)。また、リハビリテーション療法士の視点からADLを客観的数値化した項目や日常生活動作の能力を数値化した項目と在宅復帰の関係についての報告(2011、岡本)は多数みられます。前田らは自宅退院に影響を及ぼす項目について、トイレ動作、トイレ移乗、階段、記憶の4つを挙げています。また三木らは脳血管障害患者が自宅退院に必要な因子の1つとして、歩行が自立していることを報告しています。このような背景から、「自宅復帰」に何が影響しているのかについて、入院中に様々な評価が行われています。回リハ病棟では一般的に身体機能や認知機能、ADLなどが評価されることが多いが、本研究ではこれらの一般的な評価法に加え、24時間体制で勤務する看護の視点から、看護必要度とバランス保持能力評価(Standing test for Imbalance and Disequilibirium[以下SIDE])に着眼しました。前者は退院後の介護者負担に、後者は転倒リスクや見守りのための介護者負担に直結するため、在宅復帰が困難になる要因ではないかとの仮説に基づきました。在宅復帰率や転帰先に、24時間体制で高齢患者を見守る看護の視点から看護必要度とバランス保持能力評価を評価し検討した報告はこれまでになく、本研究の特色として独創的かつ新規的です。そこで、在宅復帰に向け、入院時から多職種が協働し詳細な評価を実施している回リハ病棟の後期高齢者に焦点をあて、在宅復帰率に影響を与える要因を後方視的に検討することを、本研究の目的としました。
基本属性として年齢、性別、疾患、入院期間、退院先(自宅、非自宅)、感染症、アレルギー、家族構成、キーパーソン(今回の入院の責任を伴う第1連絡先となった方)、入退院時の介護度、疾病発症から回リハ病棟入院までの日数、回リハ病棟の入院日数、入退院時の神経症状、入退院時のADL(FIM)、入院時のSIDE、入退院時の疼痛の有無とある場合は場所と程度、経口摂取の可否、嚥下調整食または増粘剤の使用の必要性、入退院時の看護必要度、入退院時の神経心理検査の結果、入院時の精神状態を測定・評価するスケールであるニーチャム混乱/錯乱状態スケール、入院時の向精神薬内服の有無、入退院時の転倒転落危険度、入退院時の日常生活動作の能力を数値化した項目、住宅改修の有無、入院時の本人と家族の退院先希望、入退院時の排泄障害の有無
上記の情報については、利用前に被験者保護の観点から、倫理・利益相反委員会承認後1か月以上経過後から、利用予定です。
後ろ向き観察研究
2024年5月20日 ~ 2026年3月31日
本研究の対象者として選定される方は、国立長寿医療研究センターにおいて、2019年4月から2023年3月にまでの4年間に回リハ病棟に入院かつ退院した75歳以上の高齢者で、疾患は脳卒中、骨関節疾患、廃用症候群の方です。
既存の診療情報の利用のみであり、プライバシーの保護についても十分に配慮されるため、新たに発生する不利益並びに危険性は想定されません。また、対象者個人に対する直接の利益も想定されません。
ご自身の診療情報が、本研究に利用されることにご同意いただけない場合には、研究に利用する情報からあなたにかかる情報を削除いたしますので、下部に記載されているお問い合わせ先にご連絡いただけますようお願いいたします。研究期間の途中であっても構いません。また、情報の削除依頼をしたことにより、不利益な取扱いを受けることはございません。ただし、ご連絡をいただいた時点で、研究結果が学会や論文等ですでに公開されている場合などには解析結果を削除できないことがあります。
この掲示により本研究に関する情報公開といたします。研究結果の公開についてはホームページ掲載・学会発表・論文投稿にて行う予定でおります。
他の研究対象者等の個人情報等の保護および本研究の独創性の確保に支障がない範囲内で研究計画書および研究の方法に関する資料を閲覧することができます。閲覧を希望される場合には、下部に記載されているお問い合わせ先にご連絡いただけますようお願いいたします。
本研究では、診療情報(電子カルテ)より上記5.の情報を抽出して利用いたしますが、患者さんが特定できる情報(氏名・住所など)を削除した状態で抽出しています。
抽出データに残されている患者ID番号についても、患者ID番号とは別の新たな符号・番号に置き換えた上で保管し、研究に利用いたします。患者ID番号と置き換えた符号・番号との対応表は研究に利用する抽出データとは別にされ、当センター内にて厳重に保管されます。
また、研究成果は学会や論文として発表されますが、その際にも患者さんを特定できるような内容を含むことはございません。
抽出したデータ、患者ID番号と置き換えた符号・番号との対応表、匿名化されたデータについては、研究期間終了後10年もしくは学会や論文等での発表から10年の間保管いたします。抽出したデータ、匿名化されたデータについては看護部にて、対応表については研究責任者にて、保存媒体を施錠保管いたします。保管期間満了後は速やかにシュレッダーにかけ、電子データは復元不能な状態にして廃棄します。
本研究は、本研究専門の研究資金として、長寿医療研究開発費にて研究を実施します。その他、開示すべき利益相反はありません。
研究に対するお問い合わせがございましたら下記のお問い合わせ先まで御連絡ください。研究責任者が対応いたします。
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
看護部 看護師 西﨑洋二
〒474-8511 愛知県大府市森岡町七丁目430番地
電話:0562-46-2311(代表)