ホーム > 研究の推進 > 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針に基づく研究実施の情報公開 > 倫理・利益相反委員会受付番号No.1616-5
国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部では、下記の人を対象とする生命科学・医学系研究を実施しております。
本研究は、剖検により採取され、東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク、および国立精神・神経医療研究センターブレインバンクにおいて管理されている脳標本を用いて行われるものです。
このような研究は、厚生労働省・文部科学省・経済産業省の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の規定により、対象となる方のお一人ずつから直接ご同意をいただかずに実施することができますが、研究内容の情報を公開することが必要とされています。このお知らせをもって研究内容の情報公開とさせていただきますので、ご理解いただけますようお願いいたします。
本研究に関するお問い合わせなどがございましたら、下記の「本研究に関するお問い合わせ先」までご連絡いただけますようお願いいたします。
2024年5月1日
記
「アルツハイマー病初期における青斑核神経軸索の変性退縮に関与する分子メカニズムの解明」
(倫理・利益相反委員会受付番号No.1616-5)
本研究課題については、国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会による倫理審査を経て、国立長寿医療研究センター理事長の実施許可を受けております。
脳幹に位置する青斑核の神経細胞は、脳の広い領域に軸索を投射し、ノルアドレナリンの分泌を介して情動や睡眠、認知機能の制御に関わっています。アルツハイマー病では、青斑核の神経細胞の大半が脱落し、病理の拡大や臨床症状の顕在化につながると考えられます。従って、青斑核の神経細胞の脱落を防ぐことができれば、アルツハイマー病の発症を抑止、遅延させるための介入法を確立できると期待されます。しかし、なぜアルツハイマー病で青斑核の神経細胞が顕著に脱落するのかは未だ明らかではありません。
そこで本研究では、ヒト脳において、老化、ならびにアミロイド病理の蓄積が、青斑核ノルアドレナリン神経系に及ぼす影響を明らかにし、青斑核神経を保護するための治療標的の同定を目指します。本研究の重要性は、アミロイド病理が惹起する青斑核の神経細胞の軸索変性の開始点を捉えることで、不明な点の多いアルツハイマー病初期の青斑核の神経細胞の脱落の機序を明らかにし、早期介入法を確立するための新たな治療標的を同定しようという点にあります。
本研究において使用する情報は、脳標本所見、症例番号、年齢、性別、病歴に関する情報(診断、発病期間、治療経過、処方歴)になります。
本研究では、東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク、国立精神・神経医療研究センターブレインバンクより脳標本と付随する臨床情報の提供を受け、免疫組織染色法を用いて青斑核の神経細胞の軸索変性とアミロイド病理が惹起する脳病態との関係を調べるとともに、青斑核領域でのシングルセル解析を実施し新規治療標的となる遺伝子産物を同定します。
2022年6月21日 ~ 2026年3月31日
研究対象となる方は、故人で剖検を受けられ、その剖検脳が東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク、および国立精神・神経医療研究センターブレインバンクで管理されている方の中から、臨床病理学的に診断が確定している、アミロイド病理が無い若年~中年層(20~40代)、アミロイド病理が少ない認知機能健常の高齢層(50~70代)、アミロイド病理を呈する認知機能健常~軽度認知障害(MCI)の高齢層(50~70代)、アルツハイマー病の高齢層(50~70代)について可能な限り、性別、年齢を合わせて各7例、合計28例を選定し、脳組織切片(大脳皮質と青斑核の切片)を用いた免疫組織解析を実施します。また、アミロイド病理が無い若年~中年層(20~40代)、アミロイド病理が少ない認知機能健常の高齢層(50~70代)、アミロイド病理を呈する認知機能健常~軽度認知障害(MCI)の高齢層(50~70代)について各6例、合計18例から、青斑核領域を含む凍結脳組織片を切り出し、シングルセル解析を実施します。
既存の脳標本と診療情報の利用のみであり、プライバシーの保護についても十分に配慮されるため、新たに発生する不利益並びに危険性は想定されません。また、対象者個人に対する直接の利益も想定されません。一方、アルツハイマー病発症初期における青斑核の変性機序を明らかにすることができれば、アルツハイマー病の発症を抑止、遅延させる早期介入法を確立することに大きく貢献すると考えられます。
研究対象となる方のご遺族において、研究対象者となる方の脳標本と診療情報が、本研究に利用されることにご同意いただけない場合には、研究に使用する情報から研究対象者となる方にかかる情報を削除いたしますので、下部に記載されているお問い合わせ先にご連絡いただけますようお願いいたします。研究期間の途中であっても構いません。また、情報の削除依頼をしたことにより、不利益な取扱いを受けることはございません。ただし、ご連絡をいただいた時点で、研究結果が学会や論文等ですでに公開されている場合などには解析結果を削除できないことがあります。
本掲示をもって、本研究に関する情報公開といたします。研究結果の公開については、ホームページ掲載、学会発表、論文発表などにて行う予定でおります。
他の研究対象者等の個人情報等の保護および本研究の独創性の確保に支障がない範囲内で研究計画書および研究の方法に関する資料を閲覧することができます。閲覧を希望される場合には、下部に記載されているお問い合わせ先にご連絡いただけますようお願いいたします。
本研究の対象となる方の脳標本と診療情報には、剖検時に患者名等の個人情報とは関係のない検体番号が付され、厳重なセキュリティー下で保管されています。個人情報と検体番号の対応は、東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク、あるいは国立精神・神経医療研究センターブレインバンクのスタッフのみがアクセス可能なデータベース(外部から遮断された専用サーバーで、アクセスにはスタッフ個別の認証が必要なもの)でのみ確認することができ、それ以外の者に個人情報が漏洩しないよう管理されています。本研究において、国立長寿医療研究センターに提供される情報は、脳組織所見、症例番号、年齢、性別、病歴に関する情報(診断、発病期間、治療経過、処方歴)のみであり、個人を特定できる情報は含まれません。提供された情報は、当センターにおいて厳重に保管されます。
また、研究成果は学会や論文として発表されますが、その際にも研究の対象となられた方を特定できるような内容を含むことはございません。
試料・情報の提供に関する記録は、東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク、国立精神・神経医療研究センターブレインバンク、および国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部にて、当該論文等の発表後10年間まで保管します。
匿名化された研究データについては、国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部のコンピューター、およびバックアップ用記憶媒体に当該論文等の発表後10年間まで保管します。匿名化されたデータと個人の識別情報との対応表については、東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク、および国立精神・神経医療研究センターブレインバンクにてパスワードを設定したファイルとして管理し、外部と接続できないコンピューターで厳重に取り扱います。保管期間満了後は、専門家とも相談しながら、保存媒体ごと安全な形でデータを廃棄します。
試料は、混合や盗難、紛失等が起こらないように本研究の関係者のみがアクセスできる国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部の試料保管庫にて保管します。組織染色等に使用した試料は、当該論文等の発表後5年間まで保管し、保管期間満了後は医療廃棄物として廃棄します。
本研究は日本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業、日本学術振興会科学研究費補助金、および長寿医療研究開発費によって行われ、研究に係る利益相反は生じません。
国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部 飯島浩一、東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク 齊藤祐子、および国立精神・神経医療研究センターブレインバンク 高尾昌樹にて対応いたします。
本研究で実施するシングルセル解析については、東京都健康長寿医療センターにて凍結脳組織片を切り出した後、組織片を株式会社Rhelixaに送付し、解析業務を委託して行います。研究代表者(国立長寿医療研究センター神経遺伝学研究部 飯島浩一)が担当者と調整し、業務の進捗を管理します。
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
神経遺伝学研究部 部長 飯島浩一
〒474-8511 愛知県大府市森岡町七丁目430番地
電話:0562-46-2311(代表)