2026年9月9日
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典。以下国立長寿医療研究センター)整形外科部の酒井義人部長らのグループは、高齢者に多い腰部脊柱管狭窄症のなかで腰椎変性すべり症では筋肉量の減少が発生に関連しているが、手術治療への影響はみられないことを明らかにしました。本成果は、腰椎変性すべり症に対する手術適応の新たな基準に応用されることが期待されます。
高齢者に多い腰部脊柱管狭窄症は腰部神経障害により下肢痛やしびれ、間欠性跛行を呈する疾患で手術治療を必要とすることも少なくありません。腰部脊柱管狭窄症のなかでも、椎体が前方にすべることで狭窄を生じる変性すべり症は椎体間の不安定を伴うことが多く、通常の狭窄症よりも症状が強く、手術となった場合にインプラントによる補強を要する脊椎固定術が選択されることが多く、侵襲の高い術式になります(図1)。変性すべり症の病因は分かっていませんが、閉経後の女性や肥満に多いことから、骨粗鬆症やサルコペニアとの関連も考えられていました。そこで腰部脊柱管狭窄症の手術前と後に骨密度や骨格筋量を測定してすべり症患者で骨や筋肉の量に違いがあるか解析しました。

図1. 腰椎変性すべり症に対する脊椎固定術
腰椎変性すべり症では椎間不安定性を呈するため、
術式は椎体間固定術(PLIF)が選択されることが多い。
文字は左本研究では、373例の腰部脊柱管狭窄症手術患者の四肢骨格筋量を二重エネルギー吸収法(DXA)(注1)で、体幹筋量をMRIによる断面積で評価しました。ロジスティック回帰分析(注2)の結果、全体の43.1%にみられた変性すべり症の患者では女性、四肢骨格筋量が少ないこと、腰部多裂筋(図2)の面積が少ないことなどがリスク要因として考えられました。手術後1年での筋肉の量を計測すると、腰部多裂筋を含む体幹筋は、変性すべり症では有意に減少していました。しかし骨格筋が減少している変性すべり症において手術成績が劣るということはなく、適切な手術をすれば改善は良好でした。

図2. 変性すべり症における腰部多裂筋断面積の比較
右図の赤で示した腰部多裂筋は脊柱の安定性に寄与する重要な体幹筋であり、変性すべり症ではこの面積が有意に減少していた。
加齢に伴い筋肉が減少するサルコペニアが変性すべり症の発生に影響している可能性が高いと考えられ、体幹筋強化により予防できる可能性が示唆されました。またサルコペニアを有する高齢者であっても良好な手術成績が得られることが分かったことは新しい知見で、今後の手術適応の決定の参考になると思われます。
この研究成果は2026年8月5日、国際誌Asian Spine Journalに掲載されました。
本研究は長寿医療研究開発費の助成を受けて実施されました。




Sarcopenia is associated with degenerative lumbar spondylolisthesis but does not compromise surgical outcomes: a retrospective study in Japan
竹市陽介1 酒井義人1 渡邉剛1 松井寛樹1 佐藤良1 足立維1 魚見航平1
Asian Spine J. 2026;20(4):728-741
国立長寿医療研究センター 整形外科部長 酒井義人
※(at-mark)を「@」に置き換えてください)
国立長寿医療研究センター 総務部総務課 総務係長(広報担当)
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