2026年7月17日
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典。以下国立長寿医療研究センター)整形外科部の酒井義人部長らのグループは、高齢者の神経障害性疼痛が筋肉の量と関連していることを、腰部脊柱管狭窄症の手術患者における骨格筋量の解析から明らかにしました。本成果は、疼痛メカニズムの解明や予防・治療への応用につながることが期待されます。
神経障害性疼痛とは、神経の損傷や炎症により起こる疼痛で難治性であることから慢性化しやすく、治療に抵抗することも少なくない疾患です。日本においては有病率が約6.4%と推定され、高齢者に多いことが知られています。加齢に伴う脊椎の変化により、腰の神経が圧迫を受ける腰部脊柱管狭窄症では神経障害性疼痛を引き起こしますが、下肢の神経障害により痛みやしびれで歩行が困難になることで治療薬の効果がみられない場合は手術により治療することも少なくありません。一方、慢性疼痛は加齢による筋肉の減少であるサルコペニアとの関連についての研究結果が近年報告され、治療への応用が期待されています。本研究では腰部脊柱管狭窄症患者の下肢骨格筋量を調べ、手術による神経障害性疼痛の改善の程度が下肢骨格筋の多さと関連していないか解析しました。

図1. 片側症状の腰部脊柱管狭窄症のMRI像
左側の椎間関節の変形により片方の馬尾神経だけが圧迫され、片側性の神経障害性疼痛を呈している。
本研究では、片側のみの下肢神経障害性疼痛を呈する260例の腰部脊柱管狭窄症(図1)の下肢骨格筋量を、二重エネルギー吸収法(DXA)1を用いて評価しました。神経障害性疼痛のある側の下肢筋肉量は、疼痛のない下肢と比べて骨格筋量が有意に少なくなっていました(図2)。また手術後の下肢痛がvisual analogue scale2で3以下になった疼痛改善群では、疼痛が残存した群と比べて下肢骨格筋量が有意に多く、手術後の筋肉量が増加していました(図3)。

図2. 下肢筋量の比較
神経障害性疼痛側では下肢筋肉量が減少している。
図3. 疼痛改善と下肢骨格筋量
神経障害性疼痛側では術後の疼痛改善により下肢筋肉量が増加する。
腰部脊柱管狭窄症による神経障害性疼痛が下肢に起こると、痛みだけでなく骨格筋の減少も起こり、手術より疼痛が改善されると下肢の骨格筋量も増加することが分かりました。神経障害性疼痛が起こると脊髄からミクログリアと呼ばれる細胞が増加し、炎症性サイトカインを分泌します。加齢とともに筋肉が減少するサルコペニアも老化に伴う炎症が要因と考えられており、神経由来の炎症の誘発を抑制することでサルコペニア治療につながる可能性があることが示されました。
この研究成果は2026年7月9日、国際誌Asian Spine Journalに掲載されました。
本研究は長寿医療研究開発費の助成を受けて実施されました。




Neuropathic pain and sarcopenia based on skeletal muscle mass assessment following lumbar spinal stenosis surgery: a prospective observational study in Japan
魚見航平1 酒井義人1 渡邉剛1 松井寛樹1 佐藤良1 足立維1 竹市陽介1 田中達英2
Asian Spine J.
https://asianspinejournal.org/journal/view.php?doi=10.31616/asj.2026.0244
整形外科部 酒井義人
※(at-mark)を「@」に置き換えてください)
国立長寿医療研究センター総務部総務課 総務係長(広報担当)
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