2026年2月6日
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
~てんかん治療を受けた患者では、認知機能低下が緩やかである可能性が示唆された~
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典。以下 国立長寿医療研究センター)脳神経内科部の横井克典らの研究グループは、アルツハイマー病(注1)に合併する「てんかん」(注2)を抗てんかん薬で治療することで、認知機能の低下が緩やかになる可能性があることを明らかにしました。
アルツハイマー病では、記憶障害などの認知症症状に加えて、脳の神経が過剰に興奮し、「てんかん」を合併することがあります。しかし、てんかんを合併した患者さんに対する治療が、認知機能の経過にどのような影響を与えるのかは、これまで十分に分かっていませんでした。
本研究では、「てんかんを合併したアルツハイマー病患者」と「てんかんを合併していないアルツハイマー病患者」を比較し、認知機能の低下の進み方に違いがあるかを、実際の診療データを用いて検討しました。
国立長寿医療研究センターのもの忘れ外来を受診し、アルツハイマー病と診断された538人を対象に、最大約2年間にわたる認知機能としてMMSE(注3)の変化を解析しました。
てんかんを合併した患者さんの多くは抗てんかん薬のみを内服しており、認知機能低下の進行した一部で抗認知症薬を併用していました。一方、てんかんを合併していない患者さんのほとんどは抗認知症薬による治療を受けていました。
その結果、認知機能の低下が軽度の段階(図b)では、てんかんを合併し抗てんかん薬による治療を受けていた患者さんのほうが、てんかんを合併していない患者さんに比べて、記憶力や判断力の低下が明らかに緩やかであることが分かりました。(図.b、12ヶ月、24ヶ月)
一方で、認知機能低下がかなり進行した段階(図.c)や、ほぼ正常に近いごく早期の段階(図.a)では、両群の間に明確な差は認められませんでした。(図参照)



今回の研究により、アルツハイマー病に合併する「てんかん」を適切に治療することが、認知機能低下の進行を緩やかにする可能性が示されました。
アルツハイマー病の患者さんでは、「ぼんやりする」「急に反応が鈍くなる」といった症状が、単なる認知症の進行ではなく、てんかんが関与している場合があります。
本研究は、こうした症状を見逃さず、脳波検査や脳磁図検査を行う事なども含め適切に評価・治療することの重要性を示しています。
今後、前向き研究などを通じて、どのような患者が最も治療の恩恵を受けるのかをさらに明らかにし、アルツハイマー病の診療の質向上につなげることが期待されます。
30点満点で評価され、一般に点数が高いほど認知機能が保たれていると考えられます。点数の解釈には年齢や教育歴などの影響があるため、一定の目安として用いられます。本研究では、事前に行ったスライディングスケール解析において、MMSE 22–26点の範囲で治療介入による認知機能の差が最も明瞭に認められたため、この範囲を中心に層別解析を行いました。
本研究成果は、専門学術誌「Journal of Alzheimer’s Disease
」に掲載されました。
Katsunori Yokoi, Masashi Tsujimoto, Keisuke Suzuki, Akinori Takeda, Kentaro Horibe, Eriko Imai, Kazunori Imai Nao Hatakeyama, Eriko Okada, Akinori Nakamura, Masahisa Katsuno, Yutaka Arahata
Antiseizure therapy attenuates cognitive decline in Alzheimer’s disease: A retrospective cohort study
Journal of Alzheimer’s Disease
国立長寿医療研究センター病院 脳神経内科
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