ご挨拶

 心房細動には、脳卒中の発症予防のために抗凝固療法が推奨されています。従来、抗凝固薬にはワルファリンが推奨されてきましたが、近年、新しい抗凝固薬として直接作用型経口抗凝固薬(DOAC、または非ビタミンK阻害経口抗凝固薬:NOAC)が開発されました。抗血栓薬、心房細動や脳卒中の関連については、国立循環器病研究センターを中心に実施されたBAT研究、SAMURAI- NVAF研究などのいくつかの研究から様々な新知見が発見されています。しかし、心房細動と認知症との関連については、まだ詳しいことがわかっていません。最近、心房細動が認知症のリスクであるという報告も出てきているようですが、機序や抗凝固薬との関連については未解明な点も多いのが現状です。

 国立長寿医療研究センターは、平成27年度から日本医療研究開発機構の支援をいただき、「適時適切な医療・ケアを目指した、認知症の人等の全国的な情報登録・追跡を行う研究」を開始しました。この研究を、オレンジレジストリ研究(Organized Registr¬ation for the Assessment of dementia on Nation-wide General consortium toward Effective treatment in Japan: ORANGE study)と呼称しています。オレンジレジストリ研究は、①健常期、②軽度認知障害期、③認知症ケア期、と認知症の病期にわけて研究し、認知症の社会的啓発や、治験・臨床研究の推進など、新オレンジプランを反映した認知症施策を実行するための基盤整備を目指しています(詳細はこちら)。

 このStrawberry研究では、心房細動をもつ患者さんを対象に、経口抗凝固薬、認知機能障害や脳卒中発症との関連をオレンジレジストリ研究の基盤を応用して調査します。認知症と脳卒中の対策は、高齢化社会を迎えつつある本邦にとって吃緊の課題です。私たちの研究を多くの方々に知っていただくため、ホームページを立ち上げました。この研究によって、認知症と脳卒中の医療に少しでも貢献できればと願っております。皆様のご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
研究代表者 佐治 直樹
(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 
 もの忘れセンター 副センター長)