ホーム > 病院 > 医療関係者の方へ > 長寿NSTニュースレター > 摂食嚥下障害とがん・栄養 ~NST勉強会を開催しました~
長寿NSTニュースレターVol.39
2020年4月
今回のニュースレターでは、令和2年2月7日に開催された「健康長寿と栄養の研修会」の内容をご紹介します。特別講演では、静岡県立静岡がんセンターより、看護師長で摂食・嚥下障害看護認定看護師である妻木浩美先生を講師にお招きし、「摂食・嚥下障害とがん・栄養」とテーマにご講演を頂きました。講演の概要を以下に記載します。
がん治療による、口腔トラブルは口腔粘膜炎、口腔乾燥、歯肉の出血、歯や歯肉への感染など様々な症状が出現します。化学療法の患者には40%、造血幹細胞移植の患者には80%、口腔領域が照射野に入る放射線治療の頭頚部がんの患者には100%出現します。口腔トラブルを回避、口腔内症状の緩和、改善をすることはQOLの維持、治療完遂に繋がります。そのためには
が必要になります。患者自身にも口腔内チェックや歯ブラシ・スポンジブラシでの口腔清掃、保湿、義歯の管理を行えるよう指導が必要です。
口腔粘膜炎は、化学療法や放射線治療を原因として起こります。口腔粘膜炎時の口腔ケアは、可能な範囲でブラッシングを行います。歯磨き粉は刺激の少ないものを使用もしくは使用しなくてもよいです。洗口液を使用する場合はノンアルコールで低刺激のもの、口腔粘膜炎がひどい場合には、局所麻酔入りの含嗽液を使用、しみる場合は生理食塩水での含嗽をします。
刺激物(酸味、辛み)を避け、薄味の物がよく、食事形態もお粥など軟らかい物に変更します。人肌程度に冷ましてから食べると食べやすいです。
不足する必要カロリーは栄養補助食品の付加や、経静脈栄養や経腸栄養の併用も考慮します。
図:味覚障害の対応について、講演スライドより抜粋
味覚障害は、加齢や、亜鉛の不足、がん治療によって起きます。特に、がん治療では、口腔乾燥や味蕾細胞の障害によって味覚障害が起こります。味覚障害の対応としては、
です。
などの対応をします。摂取量によっては経腸栄養や経静脈栄養も考慮します。患者がよく食べているものはカップラーメンやカレーライス、お茶漬けや冷たい麺、アイスやシャーベットです。患者の嗜好に合った細やかな対応が重要です。
がん治療で口腔粘膜炎を発症したり、食事摂取量が低下します。がん治療では症状の発症の時期が予見されるため、前もって対応することが可能です。当院でも、化学療法に伴う、食欲低下や口腔粘膜炎により食事摂取量が低下しNST依頼があります。QOLの低下の予防や、治療の完遂のためにも先回りした対応が必要であることを学びました。