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長寿NSTニュースレターVol.17
2013年10月
嚥下食は、摂食・嚥下障がい者を対象とする、物性や食形態を重視した食事の総称であり、摂食・嚥下機能の評価レベルに対応する“嚥下訓練食”“嚥下食”“介護食”の3つで構成されます。その中で、当センターでは“嚥下訓練食”の考え方に基づき嚥下食の約束食事箋を作成してきました。“嚥下訓練食”とは、脳卒中患者など発症後しばらくの間は絶食であり、症状の安定を確認後、開始食(ゼリー形態)から始め、徐々に嚥下難易度の高い食事へ移行していく食事内容を指します。
近年では超高齢社会に伴い、加齢や認知症が原因による嚥下障害など、嚥下機能が徐々に低下していく又改善が見込めないケースも増加しています。当センターはリハビリテーション科や言語聴覚士、摂食・嚥下障害認定看護師により、嚥下機能評価においてはたいへん充実したスタッフ構成になっています。また患者によっては、開始食や嚥下障害重度の食事として扱ってきたゼリーについても窒息の危険性があり“ゼリー形態禁止”など食形態の個人対応も増えてきました。患者個々の機能に合わせた食事提供を行うには、従来の段階的な“嚥下訓練食”だけでは対応が不十分な状況になってきました。そこでどの評価レベルにおいても個々の必要栄養量を満たすことができる“嚥下食”を作成する必要があると感じます。先月9月20日、嚥下食の基準となる「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013(学会分類2013)」が発表されました。これに基づき、当センターの嚥下食約束食事箋の見直しを行います。
これより、具体的な変更点について述べさせて頂きます。従来の“嚥下訓練食”は継続致します。段階的に食事形態をアップさせる際には“嚥下訓練食”を選択ください。また食事開始をとろみ形態から始めるための嚥下訓練食t(thick:とろみ)を新しく設けることとし、以前の嚥下訓練食Ⅰは嚥下訓練食j(jelly:ゼリー)と名称の変更を致します。さらに、従来の“嚥下訓練食”に加え、ゼリー・とろみそれぞれの形態で必要栄養量を満たすことのできる“嚥下調整食”を新たに追加します。とろみについては、薄い、中間、濃いと3段階の粘度に調整した食事基準を作成します。同じ評価レベルで継続的に管理する際には“嚥下調整食”を選択ください。なお、ゼリー・とろみが混在した食事が適している患者に対しては、従来からある“嚥下訓練食 III(今回より名称を嚥下調整食3へ変更)”を選択ください。
切り替えは12月初旬をめどに進めてまいります。ご不明点などありましたら、栄養管理室までご連絡ください。
食種名称 (仮称) |
学会分類2013 | 食形態 | エネルギー(Kcal) | 使用目的 |
---|---|---|---|---|
嚥下訓練食j | 0j | ゼリー | 100 | 絶食より開始する場合/ ゼリーによる直接訓練をする場合 |
嚥下訓練食t | 0t | とろみ | 100 | 絶食より開始する場合/ とろみによる直接訓練をする場合 |
嚥下調整食1 | 1j | ゼリー | 1000~1600 | ゼリー形態のみで継続的に管理する場合 |
嚥下調整食2a | 2-1 | とろみ(薄い) | 1000~1600 | 薄いとろみ形態のみで継続的に管理する場合 |
嚥下調整色2b | 2-1 | とろみ(中間) | 1000~1600 | 中間的なとろみ形態のみで継続的に管理する場合 |
嚥下調整食2c | 2-1 | とろみ(濃い) | 1000~1600 | 濃いとろみ形態のみで継続的に管理する場合 |
嚥下調整食3 | 1j・2-1 | ゼリー・とろみ | 1000~1600 | ゼリー・とろみ形態で継続的に管理する場合 |
嚥下調整食4 | 3 | きざみとろみ | 1200~1700 | きざみとろみ形態で継続的に管理する場合 |