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高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について

糖尿病療養支援チームレターVol.3
2017年11月

糖尿病を有する高齢者は心身機能も個人差が著しく、重症低血糖を来しやすいといった特徴があります。重症低血糖は転倒、認知機能障害、心血管イベントのリスクになり得るといった観点から、2016年5月に日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会が「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」を作成発表いたしました。今回はこの目標の概要を紹介いたします。血糖コントロール目標の設定は患者の特徴(年齢、認知機能、身体機能、併存症、重症低血糖のリスク)を考慮して個別に行うことが特徴です。

患者の特徴・健康状態注1 カテゴリーⅠ
認知機能正常
かつADL自立
カテゴリーⅡ
軽度認知障害
〜軽度認知症
または
手段的ADL低下、
基本的ADL自立
カテゴリーⅢ
中等度以上の認知症
または
基本的ADL低下
または
多くの併存疾患や機能障害
重症低血糖が危惧される薬剤(インスリン製剤、SU薬、グリニド薬など)の使用 なし注2 7.0%未満 7.0%未満 8.0%未満
あり 65歳以上
74歳未満
7.5%未満
(下限6.5%)

75歳以上
8.0%未満

(下限7.0%)

8.0%未満
(下限7.0%)

8.5%未満
(下限7.5%)
治療目標は、年齢、罹病期間、低血糖の危険性、サポート体制などに加え、高齢者では認知機能や基本的ADL、手段的ADL、併存疾患なども考慮して個別に設定する。ただし、加齢に伴って重症低血糖の危険が高くなることに十分注意する。
  • 注1
    認知機能や基本的ADL(着衣、移動、入浴、トイレの使用など)、手段的ADL(IADL:買い物、食事の準備、服薬管理、金銭管理など)の評価に関しては、日本老年医学会のホームページ(http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/このリンクは別ウィンドウで開きます)を参照する。エンドオブライフの状態では、著しい高血糖を防止し、それに伴う脱水や急性合併症を予防する治療を優先する。
  • 注2
    高齢者糖尿病においても、合併症予防のための目標は7.0%未満である。ただし、適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法の副作用なく達成可能な場合の目標を6.0%未満、治療の強化が難しい場合の目標を8.0%未満とする。下限を設けない。カテゴリーIIIに該当する状態で、多剤併用による有害作用が懸念される場合や、重篤な併存疾患を有し、社会的サポートが乏しい場合などには、8.5%未満を目標とすることも許容される。
  • 注3
    糖尿病罹病期間も考慮し、合併症発症・進展阻止が優先される場合には、重症低血糖を予防する対策を講じつつ、個々の高齢者ごとに個別の目標や下限を設定してもよい。65歳未満からこれらの薬剤を用いて治療中であり、かつ血糖コントロール状態が表の目標や下限を下回る場合には、基本的に現状を維持するが、重症低血糖に十分注意する。グリニド薬は、種類・使用量・血糖値などを勘案し、重症低血糖が危惧されない薬剤に分類される場合もある。

重要な注意事項

糖尿病薬治療薬の使用にあたっては、日本老年医学会編「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」

日本老年医学会・日本糖尿病学会編・著:高齢者糖尿病診療ガイドライン2017, P46,南江堂2017

患者個別の目標を設定して診療にあたることが求められ、多職種連携によるチーム医療が必要です。