部長挨拶

部長:松下 健二

未来歯科医療の創生に向けたあゆみ

2005年3月から研究活動をスタートした当研究部も、早いもので6年が経過しました。当初3名であった研究員も現在では29名になり、今後益々増員となる見込みです。当研究部では、「健全な栄養状態の保持に不可欠な咀嚼機能を司る口腔とその疾患を生物学的に研究し、口腔・歯科疾患の治療と予防に役立てる」ことをミッションに掲げ、研究活動とともに教育活動、さらには国民への啓蒙活動を行ってきました。教育活動においては、愛知学院大学、九州大学、広島大学、北海道大学、東北大学、北海道医療大学の各大学院と連携し、学部学生と大学院生の教育を担当するとともに、大学院生を積極的に受け入れて研究指導を行っています。2009年3月には、当部で研究指導を受けた大学院生2名が学位を取得する予定です。また、研究シーズの実用化のために東北大学歯学部および北海道医療大学歯学部において連携講座等を開設し、さらに綿密な協力関係を構築しつつあります。

当研究部では、高齢者における歯の喪失の問題を血管生物学的、細菌学的、免疫学的、および再生歯学的なアプローチにより総合的見地に立って解決することを目標に掲げ研究を行ない、多くの成果を挙げてきました(その詳細は、本ホームページの業績欄をご覧下さい)。特に、歯の再生研究においては当研究部の中島美砂子室長が提案した「歯髄幹細胞を用いた象牙質・歯髄再生」が医療技術の実用化を促す先端医療開発特区(スーパー特区)に本年度採択されました。今後は本事業を十分活用し、再生技術を応用した革新的う蝕治療法の実用化に挑んでいきます。

歯科医療の未来は、医療技術の革新にあります。当研究部では、口腔疾患に関する基礎研究と応用研究を通じて歯科医療分野におけるイノベーションを起こし、歯科医学の発展に寄与していきたいと考えています。

2009年1月
口腔疾患研究部
部長 松下 健二

口腔疾患研究部は、平成16年3月に国立長寿医療センター研究所が整備拡充されるのに伴って新設されました。口腔感染制御研究室と口腔機能再生研究室の二室から構成され、平成17年3月から本格的な研究活動を開始いたしました。

当研究部では、“老化の制御、老年病の克服と高齢者の自立の促進”をはかるため、健全な栄養状態の保持に不可欠な咀嚼機能を司る口腔とその疾患を生物学的に研究し、口腔・歯科疾患の治療と予防に役立てます。特に、歯周病とう蝕(虫歯)は歯の喪失をきたす主要な口腔疾患であり、高齢社会において克服されるべき重要課題であります。それらの克服は“自分の歯でおいしく食べる”といった高齢者の QOL を高めます。また、“自分の歯でよく噛んで食べる”ことは、高齢者の認知症予防や栄養維持、疾病回復および疾病予防にも大いに貢献します。さらに、歯周病は心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などの発症とも密接に関係しているため、その克服は種々の生活習慣病の予防と改善に寄与します。したがって、有効な歯周病とう蝕治療法の確立は21 世紀の高齢化社会においては喫緊の要事であります。当研究部では高齢者における歯の喪失の問題を血管生物学的、細菌学的、免疫学的、そして再生歯学的アプローチにより総合的、統合的に解決したいと考えています。老年病と生活習慣病の側面を持つ 歯周病の病因論を根本から見直し、再構築するとともに、その新しい病因論に基づいた新規歯周病治療法の開発を目指します。さらに、安全、効率的で確実な歯の再生法の開発し、8020 運動(80歳になっても20本以上自分の歯を保とうという運動)を強力に推進します。

2005年7月7日
松下 健二