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家族との思いでづくりに旅行と考えていますが、もの忘れが激しいので意味のないことでしょうか?

ご家族で思い出作りの旅行、それはとても素敵なことですね。意味がないということはありません。とても意味のあることです。旅行の行き先を決め、旅行先での観光めぐりやご当地のおいしいものは何かと調べながら話し合われ、一緒に計画することで、認知症のご本人にとっては認知機能の活性化が図れます。
また、実際の旅行中に楽しい時間を過ごす、そのこと自体が、認知機能に良い影響を与えご本人の安定につながると言えます。そして、旅行から帰ってきた後、写真やパンフレットを見ながら振り返ることもあるでしょう。それは過去と今とをつなぐことができ、記憶が薄らいでいることを不安に感じているご本人にとって、過去と今とが確かにつながっていることを感じ、楽しかった時間が蘇るとともに快適な気分になれることもあります。

旅行に出かける、ということは、旅行中だけではなく、旅行の前にも後にも認知機能に影響する良いことがあると言えます。思い出づくりの旅行で時間を共になさって、ご家族のライフヒストリーに刻まれることは、旅行後のケアの側面でも価値のあることになっていくと思います。

アルツハイマー病の発症前には、エピソード記憶(体験した出来事の記憶のこと、その時の時間や場所、感情なども含まれる)、注意分割(複数のことを同時に実行すること)、計画力(思考力)の低下が現れることがあると言われています。そのため、それらの機能の低下を防ぐ活動を、習慣的に行っていくことが認知症予防として大切であると言われています。
そこで地域の高齢者の方々を対象に、運動教室と知的活動教室を合わせたプログラムを実施し、認知機能の変化を見た研究があります。知的活動教室の内容というのは、新しいレシピを考えて料理を作る料理教室や、旅行計画を行い旅行する教室というものでした。そのプラグラムを実施すると、参加者の実施後の認知機能に有意に改善が見られたという報告があります。

参考文献

認知症の人に非薬物的にアプローチし、認知機能の維持改善に働きかけるセラピーの一つとして、回想法があります。回想法は情動機能の回復や意欲の向上、非言語的表現(表情など)の豊かさの増加、他者への関心の増大などの効果があると言われています。認知症となった当事者が、“認知症になると、だんだんと過去の事実や未来のことがおぼろげになり、今を過ごすことに精一杯になる。そばに私のことをよく理解してくれる良きパートナーがいれば、認知症があっても私は私らしくいられるということを知ってほしい”と、自らの病いの経験について語りました。認知症の人とともに、過去の思い出を回想して語らうことは、過去と今をつなぎ、その人とともに未来を創造することにもつながっていくかもしれません。