いずれも認知症の進行を遅らせるという効果の点では変わりありません。薬理学的作用機序や副作用、使い勝手が違います。
わが国において認知症の進行を遅らせるお薬(向知性薬)が処方できるようになったのは、1999年のドネペジルが最初になります。その後しばらく新薬の登場はありませんでしたが、2011年になり、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミンが相次いで使えるようになりました。いずれもアルツハイマー型認知症の進行を遅らせるのが主な作用であることには変わりありません。
細かくみてゆくと、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミンはそれぞれ脳内でのお薬の働き方が異なります。これを薬理学的作用機序と言います。ここではあまりに専門的な部分は割愛し、実際に使用していただく立場での違いを示します。
先ずドネペジルですが、最も早くから使われていたお薬ということもあり、わが国での治療経験(エビデンス)が豊富という大きな利点があります。また、錠剤のみならず散剤・口腔内崩壊錠・ゼリー状剤・貼付剤と剤型に豊富なバリエーションがあります。軽症から重症まで使えるという幅広い適応も魅力的です。本剤はレビー小体型認知症にも使用可能です。
メマンチンは上記薬剤と薬理学的作用機序が大きく異なります。したがって、唯一他の抗認知症薬との併用が認められています。重度の認知症にも適応があります。
続いてガランタミンについてです。これはドネペジルと大きな違いはありませんが、ドネペジルにはない液剤があるのが特徴です。また何らかの理由でドネペジルが飲めない場合の“次の一手”という役割が大きいと考えます。
リバスチグミンは貼り薬であるという大きな特徴があります。何らかの事情でお薬を口から摂ることが難しい場合、大きな利点となるでしょう。また消化管を介さないことから、吐き気や食欲低下といった副作用が出にくいことが考えられます。
さて少々専門的になりますが,ドネペジルおよびガランタミン、リバスチグミンは全て「アセチルコリン・エステラーゼ阻害薬」というものに分類されます。これに対して、メマンチンだけが「NMDA受容体拮抗薬」というものに分類されます。この違いにより、前者には吐き気・下痢・食欲不振といった消化器系の副作用が出やすいとされ、後者にはめまいやふらつきといった神経系の副作用が出やすいとされています。
このように抗認知症薬にもさまざまな特徴があります。抗認知症薬登場の最も大きなメリットは、個々の状況や病状でお薬を選択できるようになったことと考えます。