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国立高度専門医療研究センター6機関の連携による 「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」 公開

2021年2月19日

国立研究開発法人国立がん研究センター
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
国立研究開発法人国立国際医療研究センター
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)

発表のポイント

概要

 それぞれに専門性を有する国立高度専門医療研究センターである国立研究開発法人国立がん研究センターと国立研究開発法人国立循環器病研究センター、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター、国立研究開発法人国立国際医療研究センター、国立研究開発法人国立成育医療研究センター、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターは、日本人の健康寿命延伸のために必要な予防行動等について、個人とそれを取り巻く社会的要因に関する目標を「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」としてまとめました。

 健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことで、寿命とは区別されます。健康寿命を延伸するためには、小児、妊婦、成人、高齢者など年齢や状態に応じて、様々な疾患を横断的に予防することが必要です。しかしこれまで、予防について疾患横断的にまとめられたガイドラインや指針はありませんでした。

 そこで、国立高度専門医療研究センターの6機関は共同で、2017年度より公衆衛生・予防医学分野の疾患横断的研究連携事業「電子化医療情報を活用した疾患横断的コホート研究情報基盤整備事業(主任研究者:津金昌一郎)」を開始し、地域医療・保健専門職や政策決定者が、国民への保健指導や街づくりなどを行う際に活用いただくことを目標に、現在までの疫学注1研究などのエビデンスに基づき本提言をまとめました。

 本提言では、疾患横断的に健康を左右する生理学的要因や生活習慣、社会的・物理的環境の10項目「喫煙」「飲酒」「食事」「体格」「身体活動」「心理社会的要因」「感染症」「健診・検診の受診と口腔ケア」「成育歴・育児歴」「健康の社会的決定要因」について、予防行動等に関する国民一人一人の目標と個人を取り巻く社会的要因に関する公衆衛生目標を提示しています。

 このような疾患横断的な予防に関する取り組みは、日本ではじめての試みで、国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)の支援により専門分野の異なる6つの国立高度専門医療研究センターが連携し実現しました。

「健康寿命」と「不健康な期間」について

 日本では、1981年にがん死亡が脳血管疾患死亡を抜いてもっとも多くなり、その後一貫した増加を示しています。2019年には死亡全体の27.4%ががんによる死亡です。続く死因としては心疾患(15.3%)、老衰(8.8%)、脳血管疾患(7.7%)、肺炎(6.9%)となっています。がんによる死亡は、男性の45~94歳、女性の30~89歳で死因の第1位となっていますが、特に男性の60~74歳、女性の35~74歳の働き盛り世代では死因の4割を超えています。一方、高齢になると、がんの割合は低下し、心疾患や肺炎の割合が大きくなります。このように、死因は年齢によって分布が異なり、死因となっている疾患の重要性も年齢によって様々です。

 健康寿命は、2000年に世界保健機関(World Health Organization: WHO)が提唱して以来、単に寿命のみでなく健康寿命をいかに延ばすかについて関心が高まっています。

 近年、日本人の寿命は、平均寿命は男性が78.07歳(2001年)から80.98歳(2016年)へ、女性は84.93歳(2001年)から87.14歳(2016年)へ、健康寿命は男性が69.40歳(2001年)から72.14歳(2016年)へ、女性は72.65歳(2001年)から74.79歳(2016年)へと平均寿命も健康寿命も延びています。平均寿命と健康寿命の差は、日常の制限のある「不健康な期間」を意味しますが、この不健康な期間は男性では8~9年、女性では12~13年と横ばいで推移しており、大きな改善はありません。健康寿命延伸のためには、この不健康な期間をどれだけ減らすことができるかが鍵となります。

 不健康な期間に大きく影響するものとして、「要介護」の状態が挙げられます。国民生活基礎調査の結果から、日本人で介護が必要になった要因は、認知症、高齢による衰弱、関節疾患、骨折・転倒が5割を占め、生活習慣病は全体で3割、死因としてもっとも多いがんは数%程度です。またその原因は年代によって異なり、60歳代までは循環器病の割合がもっとも大きく、70歳代以上では徐々に認知症や骨折・転倒の割合が大きくなります。また、高齢者では様々な疾患を複数合併していることも多くあります。このように、不健康な期間に関連する疾患は、年代により様々で、健康寿命延伸のためには、それらの発症のみならず再発・重症化も含めて広く予防する必要があります。

 このような背景から、健康寿命延伸を疾患予防の側面から考えると、単に、疾患を個別に予防するのではなく、様々な疾患を横断的にいかに予防できるかがとても重要になります。

「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)まとめ」(提言P3)

1. 喫煙

●たばこは吸わない。

●他人のたばこの煙を避ける。

【国民一人一人の目標】

たばこを吸っている人は禁煙する。また、他人のたばこの煙を避ける。

2. 飲酒

●節酒する。飲むなら節度のある飲酒を心がける。

●飲まない人や飲めない人にお酒を強要しない。

【国民一人一人の目標】

飲む場合は、1日あたりの飲酒量は、男性でアルコール量に換算して約23g程度(日本酒なら1合程度)、女性はその半分に抑える。休肝日を作る。寝酒は避ける。飲まない人や飲めない人にお酒を強要しない。

3. 食事

 

年齢に応じて、多すぎない、少なすぎない、偏りすぎないバランスのよい食事を心がける。具体的には、

●食塩の摂取は最小限*1に。

●野菜、果物の摂取は適切に、食物繊維は多く摂取する。

●大豆製品を多く摂取する。

●魚を多く摂取する。

●赤肉*2・加工肉などの多量摂取を控える。

●甘味飲料*3は控えめに。

●年齢に応じて脂質や乳製品、たんぱく質摂取を工夫する。

●多様な食品の摂取を心がける。

(*1男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満(厚生労働省日本人の食事摂取基準))

(*2赤肉:牛・豚・羊の肉(鶏肉は含まない))

(*3砂糖や人工甘味料が添加された飲料)

【国民一人一人の目標】

年齢に応じて、多すぎない、少なすぎない、偏りすぎないバランスのよい食事を心がける。具体的には、食塩の摂取は最小限に、野菜・果物は適切に、食物繊維は多く摂取する。また、大豆製品や魚を多く摂取し、赤肉・加工肉などの多量摂取を控え、甘味飲料の摂取は控える。年齢に応じて脂質や乳製品、たんぱく質摂取を工夫する。多様な食品の摂取を心がける。

4. 体格

●やせすぎない、太りすぎない。

●ライフステージに応じた適正体重を維持する。

【国民一人一人の目標】

ライフステージに応じて、体格をその時々の適正な範囲で維持する。

5. 身体活動

●日頃から活発な身体活動を心がける。

【国民一人一人の目標】

日頃から活発な身体活動を心がけ、現状より1日10分でも多く体を動かすことから始める。具体的な身体活動量の目安は、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分行い、その中に、息がはずみ汗をかく程度の運動が1週間に60分程度含まれるとなおよい。また、高齢者では、強度を問わず、身体活動を毎日40分行う。

6. 心理社会的要因

●心理社会的ストレスを回避する。

●社会関係を保つ。

●睡眠時間を確保し睡眠の質を向上する。

【国民一人一人の目標】

心理社会的ストレスをできる限り回避する。孤独を避け、社会関係を保つ。質のよい睡眠をしっかりとる。

7. 感染症

●肝炎ウイルスやピロリ菌の感染検査を受ける。

●インフルエンザ、肺炎球菌を予防する。

【国民一人一人の目標】

肝炎ウイルスやピロリ菌の感染検査を受け、感染している場合には適切な医療を受ける。高齢者では、インフルエンザ、肺炎球菌のワクチン接種を受ける。

8. 健診・検診の受診と口腔ケア

●定期的に健診を・適切に検診を受診する。

口腔内を健康に保つ。

【国民一人一人の目標】

定期的に健診を受ける。科学的根拠に基づいたがん検診を、厚生労働省の指針*4で示された方法で受ける。口腔内を健康に保つ。

(*4がん予防重点健康教育およびがん検診実施のための指針)

9. 成育歴・育児歴

出産後初期はなるべく母乳を与える。

妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、巨大児出産の経験のある人は将来の疾病に注意する。

●早産や低出生体重で生まれた人は将来の疾病に注意する。

【国民一人一人の目標】

出産後初期はなるべく母乳を与える。妊娠中に妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群にかかった人や巨大児出産の経験のある人、早産や低出生体重で生まれた人は将来の疾病に注意する。

S. 健康の社会的決定要因

●社会経済的状況、地域の社会的・物理的環境幼少期の成育環境に目を向ける。

【公衆衛生目標】

個人の不健康の根本原因となっている社会的決定要因にも目を向け、社会として解決に取り組む。

各章の要点のまとめ(提言P5)

1章 喫煙・受動喫煙

●たばこは吸わない。(提言P12)

●他人のたばこの煙を避ける。(提言P13)

●加熱式たばこも吸わない、煙も避ける。(提言P14)

2章 飲酒

●節酒する。飲むなら節度のある飲酒を心がける。(提言P19)

●飲まない人や飲めない人にお酒を強要しない。(提言P21)

3章 食事

年齢に応じて、多すぎない、少なすぎない、偏りすぎないバランスのよい食事を心がける。具体的には、

●食塩の摂取は最小限(日本人の男性7.5g/日未満・女性6.5g/日未満)に。(提言P23)

●野菜、果物は適切に、食物繊維は多く摂取する。(提言P23)

●大豆製品を多く摂取する。(提言P25)

●魚を多く摂取する。(提言P26)

●赤肉・加工肉などの多量摂取を控える。(提言P26)

●甘味飲料は控えめに。(提言P27)

●年齢に応じて脂質や乳製品、たんぱく質摂取を工夫する。(提言P28)

●多様な食品の摂取を心がける。(提言P31)

4章 体格

●やせすぎない、太りすぎない。(提言P38)

●ライフステージに応じた適正体重を維持する。(提言P39)

5章 身体活動

●日頃から活発な身体活動を心がける。(提言P42)

6章 心理社会的要因

●心理社会的ストレスを回避する。(提言P46)

●社会関係を保つ。(提言P47)

●睡眠時間を確保し睡眠の質を向上する。(提言P48)

7章 感染症

●肝炎ウイルスやピロリ菌の感染検査を受ける。(提言P52)

●インフルエンザ、肺炎球菌、帯状疱疹を予防する。(提言P54)

8章 健診・検診の受診と口腔ケア

●定期的に健診を・適切に検診を受診する。(提言P59)

●口腔内を健康に保つ。(提言P59)

9章 成育歴・育児歴

●出産後初期はなるべく母乳を与える。(提言P63)

●妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、巨大児出産の経験のある人は将来の疾病に注意する。(提言P63)

●早産や低出生体重で生まれた人は将来の疾病に注意する。(提言P64)

S章 健康の社会的決定要因

●社会経済的状況、地域の社会的・物理的環境、幼少期の成育環境に目を向ける。(提言P67)

今後の展望 

 このような予防に関する疾患横断的な取り組みは、日本ではじめての試みです。現在はまだ日本人でのエビデンスが不足しているため、今回の第一次提言書では欧米人でのエビデンスを多く採用しています。今後、日本人での研究を戦略的に推進し、本提言の更新を重ねていくことで、国民の健康寿命延伸のために必要な情報をさらに充実させていきたいと考えています。

疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言 執筆関係者一覧

執筆関係者

国立がん研究センター

国立循環器病研究センター

国立精神・神経医療研究センター

国立国際医療研究センター            

国立成育医療研究センター

国立長寿医療研究センター

研究事務局(国立がん研究センター内)編集担当者

査読協力(敬称略) 

6つの国立高度専門医療研究センターについて

国立研究開発法人国立がん研究センター

我が国のがん対策の中核的機関として、がんその他の悪性新生物に関し、研究・開発、医療提供、医療従事者の研修、情報発信、政策提言等を行う。

国立研究開発法人国立循環器病研究センター

我が国における脳卒中、心臓病等の循環器病対策の中核的機関として、循環器病に関し、研究・開発、医療提供、医療従事者の研修、情報発信、政策提言等を行う。

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

我が国の精神・神経疾患対策の中核的機関として、精神、神経、筋疾患および知的障害その他の発達障害に関し、研究・開発、医療提供、医療従事者の研修、情報発信、政策提言等を行う。

国立研究開発法人国立国際医療研究センター

我が国の国際保健医療協力の中核的機関として、感染症等国際的な調査研究が必要な疾病に関し、研究・開発、医療提供、医療従事者の研修、情報発信、政策提言等を行う。

国立研究開発法人国立成育医療研究センター

我が国の成育医療の中核的機関として、小児医療、母性医療、父性医療および関連・境界領域を包括する成育医療に関し、研究・開発、医療提供、医療従事者の研修、情報発信、政策提言等を行う。

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター

我が国の長寿医療の中核的機関として、加齢に伴う疾患に関し、研究・開発、医療提供、医療従事者の研修、情報発信、政策提言等を行う。

国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部について

国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(Japan Health Research Promotion Bureau JH)は、我が国の 6つの国立高度専門医療研究センターの資源・情報を集約し、それぞれの専門性を生かしつつ有機的・機能的連携を行うことによって、世界最高水準の研究開発・医療を目指した新たなイノベーションを創出することを目的とし、2020年4月に発足した横断的組織です。

研究費

 用語解説

注1 疫学

ある集団において健康問題がどのように分布しているか、そして、その健康問題を決定する要因にどのようなものがあるかを明らかにする学問。

注2 コホート研究

コホートとは、共通の性格をもつ集団のこと。コホート研究とは、そうした「ある共通点を持つグループ」と「属性を持たないグループ」を設定し、それぞれのグループにおける、病気の発生率を比較して研究すること。

問い合わせ先

※Eメールは下記アドレス[at]の部分を@に変えてご使用ください。

研究に関する問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター

社会と健康研究センター コホート研究部 連携推進研究室 研究事務局

Eメール:6NCC[at]ncc.go.jp

機関窓口

国立研究開発法人国立がん研究センター

企画戦略局 広報企画室

〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1

電話:03-3542-2511(代表) Eメール:ncc-admin[at]ncc.go.jp

 

国立研究開発法人国立循環器病研究センター

総務課広報係

〒564-8565 大阪府吹田市岸部新町6番1号

電話:06-6170-1070(代表) Eメール:kouhou[at]ml.ncvc.go.jp

 

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

総務課 広報係

〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1

電話:042-341-2711(代表) Eメール:ncnp-kouhou[at]ncnp.go.jp

 

国立研究開発法人国立国際医療研究センター

企画戦略局 広報企画室

〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1

電話:03-3202-7181(代表)内線5097 Eメール:press[at]hosp.ncgm.go.jp

 

国立研究開発法人国立成育医療研究センター

企画戦略局 広報企画室

〒157-8535 東京都世田谷区大蔵2-10-1

電話:03-3416-0181(代表) Eメール:koho[at]ncchd.go.jp

 

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター

総務課 広報係

〒474-8511 愛知県大府市森岡町7-430

電話:0562-46-2311(代表) Eメール:webadmin[at]ncgg.go.jp

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